なぜ社長や上司の命令に従うのか?
「あまりにも当たり前のことで、今更問うまでもない」という方も多いと思うが、当たり前のことほど改めて考える価値があるので、少し考えてみる。
まず最初に出てくる意見は、「それが会社のルールだから」というものである。しかしルールだから従う、という回答は答えになっていない。
肝心なのは、「なぜルールになっているのか」ということだ。
つぶさに考えてみれば会社員は上司の言うことに常に従っているわけではない。上司の依頼を黙殺し、上司が依頼をしたことを忘れていてくれるよう願う人もいれば、あえて上司に反抗する人もいる。
基本的には上司には従わなくてはならない、ただし、そうしない場合もある。これが正確なところだろう。
では、「従う」についてもう少し掘り下げてみる。人が他者に従う条件は、幾つかあある。
- 恐怖、脅迫によるとき
- 心酔しているとき
- 権威に従う時
- メリットがあるとき
- 協力したいとき
1.は最もわかりやすい。時に身体的、経済的苦痛や脅迫によって人は人を従わせようとする。
だが恐怖による従属は長続きしない。ストレスにより、従う人間は遅かれ早かれ離反するか、反抗する。歴史的に見ても、恐怖政治の政権が長く続くのは、まれな例であり、遅かれ早かれその集団のパフォーマンスは落ちていく。
短期的なパフォーマンスは上がるかもしれないが、長期的には問題を引き起こしかねない選択である。
2.について、憧れ、思慕なんと読んでもいいが、ある人物に対して個人的に好意を抱いている場合は、盲目的に従属することがある。カリスマ的指導者は、この力によって人を従属させる。
一種の「洗脳」とも言えるが、企業がこれを用いることについては賛否両論あろう。
3.で有名なのは「ミルグラム実験」だろう。ミルグラム実験は、「他者に電気ショックを与えることを命じた場合、人はそれに従うか?」を調べた実験であった。
恐るべきことに、被験者の60%以上は、「権威」があれば人を死に至らしめる可能性のある電気ショックを与えることも辞さないということがわかったのである。
人は権威に弱い。「命令だから」と言いつつ、その実は「考えないことが楽」という根源的な人間の性質がある。ただし、これを用いると「盲従する従業員」を生み出すことになる。
上司の「考えるな、動け」という命令はこの一種である。
4.金銭、地位など何らかのメリットがあるときには、人は損得勘定から動く。
ただし、これの根本的な問題は「報酬に慣れてしまうと、効果がなくなる」という点だろう。「報酬で人を釣ろうとする」という行為が持続的手段とみなされていないのは、このためである。
なお、1.と組み合わさると「アメとムチ」という伝統的管理手段となる。
5.について、正確には「命令」と呼ぶことはできないのかもしれないが命令する側と命令される側に協力関係がある時、命令された側は進んでそれに協力する。
ただし、この方法は極めて高度な方法である。「上司たる自分」のメリットと、「部下たる他者」のメリットを真に一致させなければならない。
したがって、この方法を使うには「部下の欲することを知る」「会社、自分の欲することと調整をする」という部下に対するマーケティングが必要であり、高い力量が必要となる。
さて、どのマネジメントを選択するべきだろうか。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします))
・筆者Twitterアカウントhttps://twitter.com/Books_Apps
・大学・研究の楽しさを伝える、【大学探訪記】をはじめました。
【大学探訪記 Vol.18】これからどのように働くべきか?を真剣に考える型破りなゼミがあった。
【大学探訪記 Vol.17】「石がどのようにできたのか」という究極の疑問に解を出す。
【大学探訪記 Vol.16】慶応大学で最も特徴のあるゼミの一つ「牛島ゼミ」の秘密を聞いた
・仕事の楽しさを伝える、【仕事のチカラ】をはじめました。
【仕事のチカラ Vol.5】データサイエンティストって、どんな人?どうやったらなれるの? という疑問に答えてもらいました。
【仕事のチカラ Vol.4】何をやるかを決めずに、気の合う仲間と起業する。そんな人生もいいじゃない。
【仕事のチカラ Vol.3】プログラミングを独習し、その勢いで独立した、28歳の凄腕プログラマーの話。
・ブログが本になりました。
「仕事ができるやつ」になる最短の道
- 安達 裕哉
- 日本実業出版社
- 価格¥500(2025/06/07 13:49時点)
- 発売日2015/07/30
- 商品ランキング74,561位
(Photo:Andy)