5939464769_0c3d9c0ced_z私は常々「離職率」の公表を企業に義務付けても良いと思っている。

その代わり企業に「解雇規制」をもう少し緩めてもよいだろう。企業が人の解雇をできないことはどう考えても時代にあっているとは思えないからだ。

もちろん解雇を企業に自由にやらせれば、労働者の企業に対する不信感は募るだろう。また、採用で良い人物を見極めようとする努力も怠るに違いない。それは双方に取って不利益である。

 

そこで「離職率」を公表させることで、企業の自由な解雇に一定の歯止めをかける。

「離職率の高すぎる会社」を労働者は避けるだろうし、企業の評判も落ちるだろう。良い人が集まらなくなれば、それは企業にとって致命的である。

それは企業に「離職率を高めないための努力」をさせることに繋がる。

 

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多くの方が知るように、その会社が良い会社であるかどうかの指標として「離職率」はかなり有用である。

 

なぜなら、離職率はいわばその会社の「人に対する態度」や「人がどのような存在であるのか」を強く反映するからだ。安定した事業と有能な経営者、そして人を大切にする態度を持つ会社であれば、離職率は必ず低い。

逆に、離職率の高い会社は、下のいずれかに致命的な部分がある、ということだ。

 

1.人に尊厳のある仕事をさせているかどうか

人から常に尊厳を傷つけられるような仕事は、長続きしない。不当な要求をする取引先やモンスターカスタマーには妥協せず、社員を守らなくてはならない。

 

2.給与水準が不当に低くないか

給与水準が不当に低い会社においては、社員は常に不安を抱えながら仕事をしている。

 

3.社長・経営陣の能力に問題はないか

Googleが統計をとって調査したところ「マネジャーの質は社員が辞めるか残るかを予測する唯一にして最高の指標だった。社員は会社をやめるのではなく、ダメなマネジャーと働くのをやめるのである」との格言が証明されたという。※1

Googleを始めとする大企業は人が多いのでマネジャーの影響が大きいが、特に中小企業の場合「ダメな社長・経営陣と働くのをヤメる」と言える。

もちろん、どの会社にも無能な社員の一人や二人はいるだろう。しかし離職率が高止まりしている場合、原因はほとんどすべて、社長とその側近にある。

 

4.事業は順調で、展望のあるものか

生産性の低い仕事をやらさせることほど、士気をくじくものはない。殆どの人物は良い仕事をしたいと願うものだ。

 

確信を持って言えるが、良い企業は離職率が高止まりすることを放置することはない。これは感情的な理由ではなく本質だ。人が次々に入れ替わることは、企業にとっては効率が悪く、儲からないのだ。

そんなことも解決できない会社の事業がうまくいくはずがない。

 

「そんなことはない、離職率が高くても良い会社はある。コンサルティング会社や起業家を育成するような会社はどうなのだ」という反論もあろう。

もちろんその意見は正しい。だが、そんな会社は例外であり、例外かどうかは見ればすぐに分かる。離職率の高さに妥当性があり、OBが活躍しているからだ。だが殆どの離職率が高い会社は概ね、ダメな会社である。

 

 

だから、労働者は「離職率の変化」と「離職率の多寡」を見れば、その会社の職場がどのような状況にあるのか、手に取るように把握できる。

企業の短期的な業績の数字はいくらでもごまかせるし、応募者から隠すこともできる。

だが離職率は別だ。例えば「この会社をやめました」という報告を労働者から役所に申請してもらえれば、その数値をごまかすことはできない。「離職率」は非常に客観性のあるデータとして利用できる。

 

 

企業が長期にわたって反映することためのカギは間違いなく「人材の質」である。そして、人材の質を高い水準に保って置けるかどうかは、「離職率」が非常に重要な意味を持つ。

例えば自分自身の在籍している会社と、下の業界別の離職率を比較してみて欲しい。あなたの会社は人を大事に扱っているだろうか?それとも、「取り換えの効く部品」と思っているだろうか?

スクリーンショット 2015-11-29 14.10.13

(出典:総務省統計局 http://www.stat.go.jp/data/nihon/16.htm)

 

離職率を低くすることは、簡単なことではない。だが、経済的な観点からも、社会的な観点からも離職率が高止まりすることを放置することは許されない。

そう考えれば、

・離職率の高い会社に改善指導、ペナルティを促すことで、社会的に悪影響のある会社・経営者を退場させる

・解雇規制を緩めることで、労働者と経営者の間に健全な緊張関係を作る

上のふたつが合理的だといえるのではないかと思う。

 

 

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(2024/3/26更新)

 

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※1 ワーク・ルールズ(東洋経済新報社)

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