年の瀬にあいさつでご訪問した会社で出た、一つの話題が気になった。
そこでは部長とメンバーが数名で、今年の振り返りと来年の目標の話をしている。皆の歳は30代後半から20代と若い。会社の期末は3月なので、会社の目標の話というよりは「個人として何を頑張るか」という話が中心だ。
部長は「来年はサービスが大きくなりそうだ。個人の能力を高めておかないと、ついてこれなくなるぞ」と言う。
メンバーは苦笑いしていたが、一人の若手が部長に質問した。
「スキルアップって、何をすればいいでしょうか?」
部長は「何をすればいいと思う?」と聞き返す。
「会社が求めていることはわかっています。コーディング、ソフトウェア設計、コミュニケーション、そんなとこですよね。」
「あと、文書作成能力な」部長は言う。
「それはわかっているんです。いずれも仕事をやる上で重要な能力ですから。去年も同じように言われました。」
「ほう」
「そうじゃないんです。結局今年も具体的なスキルアップの施策は「目の前の仕事を一生懸命やる」になりそうなので、それでいいのかどうか考えていたんです。」
話を聞くと会社では「このような能力を身につけて欲しい」というものは決まっているものの、結局それを身につけるために何かが与えられているわけではないという。
「研修や、勉強会か何かをやったりしないのですか?」と彼は部長に聞いた。
部長は「やらないよ」と答えた。
それが彼には不満だったらしい。「スキルアップなんて、自分だけでできるのでしょうか?」
「どう思う?」
「やれなくはないですが……難しいと思います」
「なぜ?」
「0から新しいことを勉強するのは効率が悪すぎます。やはり教えてもらったほうが良いと思います。社員のスキルアップは会社の責任においてやるべきなのでは?」
部長はしばらく考えていたが、口を開いた。
「なるほど。そう思うなら、何をどのように教えてほしいか逆に提案してくれ。」
「どういうことでしょう?」
「会社は方向は示すが、具体的なやり方は本人に任せることにしている。なぜかといえば、いろいろな会社を見てきて思うんだが、会社が与えた教育プログラムを喜んで受ける人は殆どいないからだ。
研修を用意したり、プログラムを用意しても、自発的に受ける人は全体の2割、3割。まあ無駄だね。それとも強制されたほうが良いかな?」
「……」
「だから君に、「皆が参加したくなる研修・勉強会」の企画を任せようと言うのだよ。どうかね?」
「……そんな時間はありません。」
「そうか。」
その会話を聞いていた別の若手が言った。
「部長、私にやらせていただけないでしょうか。」
「ほう。やってみるか。」
「はい。私はスキルアップは自己責任だと思っています。会社のリソースを使って良いなら、逆にありがたいくらいです。」
「そうか、じゃ任せるわ。その代わり条件を出していいかな?」
「なんでしょう?」
「一つ、強制参加は無し。二つ、対象社員の参加率50%以上を目指す。三つ、費用対効果の測定をする。」
「わかりました」
部長は後で私にこっそり言った。
「あの勉強会を推進する奴が、一番スキルアップするのにな。」
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。

<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは【ご視聴方法】
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当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【今回のトーク概要】
- 0. オープニング(5分)
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」 - 1. 事業再生の現場から(20分)
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例 - 2. 地方創生と事業再生(10分)
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む - 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説 - 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論 - 5. 経営企画の三原則(5分)
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する - 6. まとめ(5分)
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)
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