つい20年前までは、真の意味で「サラリーマンは我慢」の時代だった。すし詰めの通勤電車にガマン。1週間前に突然言い渡される転勤にもガマン。毎日の残業にもガマン。

ガマンガマン、そう皆が思っていた時代だった。

 

なぜ酷い環境に皆が我慢できたのか。簡単だ。我慢することにそれなりの見返りがあったからだ。

 

普通の企業に入っただけで、定年までそれなりの生活を約束され、「サラリーマンは気楽な家業」と、生活の心配をせずに生きていける。

さらに、それなりの大手に入れば社会的な地位と信用まで手に入り、配偶者、家、クルマなどが一通りに手に入った。

 

たとえ「通勤、転勤、残業」などにおいて、非人間的な扱いを受けたとしても、「我慢すること」は勝ち確定の目に自分の人生をかけることができた。

それゆえ団塊の世代は「転職や副業など、考えたこともなかった」という人は多いだろう。「石の上にも三年」という言葉は彼らの時代には合理的だった。

 

だが、結果として出来上がった社会は、

「成果を厳しくは問われず」

「長時間労働を普通と思い」

「会社/仕事が大嫌いなのに、身内をかばい合う」

という、サラリーマンたちの世界であった。

結果、かつて「ものづくり」日本を代表した企業群は軒並み、平凡な会社となってしまった。シャープは青息吐息、東芝は破綻寸前、世界を制したソニーの復活は遠く、パナソニック、NEC、富士通もパッとしない。

よく言って、「過去の栄光」で食っている状態である。

 

畢竟、今の若手サラリーマンを見れば、おそらく「大手に就職すれば安定」など、本気で信じている人はわずかだろう。

それでも大手に人が集まるのは、他に選択肢がないからである。

しかし彼らも本音は、

「業績が悪くなれば会社に切られる」

「成果を出せ、と言う割には、会社は何もしてくれない」

「えらい人が働かない」

そういうのが「普通」の声である。

 

それであれば、上に挙げた「ガマン」など、本当にアホくさい。

なぜ、大した見返りもなく、「通勤、転勤、残業」などに貴重な人生の時間を使わなければならないのか。皆、そう思い始めた。

だから、webには連日「会社が嫌い」「残業したくない」「ラクに稼ぐ」「副業」という文字が踊るのだ。

 

そう言う人に向かって「嫌なら会社なんてやめればいいじゃん」という方もいる。

それは正しい。

が、残念ながらそこに代案はない。勝ち目のありそうな選択肢が見えない中、サラリーマンは不安に苛まれている。

「自分の能力に賭けることができる人」は、それだけで勝ち組だが、そう言う人は極めて少数だ。

 

一方で、シリコンバレー企業が世界を制し、中国の経済力は日本を抜いた。

他国だけではなく、日本においても「新興」のITを駆使した会社の経営者が一山当てて大金持ちになっている。そこでは学歴や会社の肩書などは意味をなさず、「才覚と勇気」でのし上がった連中が大きな顔をしている。

 

一昔前、そうして成り上がったホリエモンは妬まれ、故に刑務所にブチこまれた。溜飲を下げたサラリーマンも多かっただろう。

だが、すでにサラリーマンは、自分の身すら危うい。それゆえ、成功者に嫉妬するのではなく、見習って、自分も成功者となりたい、と考える若手が増えているのは間違いない。

だから「意識高い系」などと嘲笑されている、若干イタい学生を嗤うことはとてもできない。彼らは、彼らなりに真剣に人生を考えた結果、「勝ち目がありそうな選択肢」に乗っているだけだ。

 

だが、彼らの試みはほとんどうまく行かず、多くの人物は貧困へ転落するだろう。

そしてしばらくすると、日本もトランプのような

「インテリへの嫌悪感」

「実力社会への疲れ」

「無能の保護」

などを訴える政治家が力を持ってくるだろう。「金持ちばかりがトクをしているが、皆で貧乏になる方がまだマシだ」という発想のもとに。

アメリカはそれでもまだいいだろう。資源もカネも暫くは枯渇しない。

 

だが日本はマズい。資源もなく、カネも尽きようとしている今、ほんとうの意味での日本の没落が、現実になろうとしている。

私のかつての上司は「知恵で石油を買っている国が日本」と言った。今こそ、我々は「知恵」を必要としている。しかも早急に。

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

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