長いこと学生に対する面接を行っているので、かなりの数の面接を見てきた。

 

そして、殆どの会社で問題になるのが「面接でどのように質問するか」だ。

「口だけがうまい人」を採用してしまうリスクを回避することは至上命題である。

また通常、面接のスキルは面接官の個人差が非常に大きい。したがってどの会社でも「個人の嗜好によって採用されてしまう」という事は、非常に重要な課題である。

 

 

そのため、面接における質問は、「欲しい人材を選抜する」以外に、一般的に次の要件を満たす必要がある。

・汎用性がある

比較可能性や統計のため、様々な学生に対して同じ質問が有効でなければならない。

・「一般的な正解」が存在しない

学生の間で「こんな質問をされた」という話が広まっても、対策ができないような質問が望ましい。

・虚偽を見抜ける

学生が「経歴を盛る」話はよく聞くが、面接中にその裏を取る事はできない。裏を取らずに嘘を見抜く質問が望ましい。

 

 

そして、これらの条件を満たす質問技法の1つが「構造化面接」だ。

実際にこれを導入した所、面接官による採用の質のばらつきが押さえられただけではなく、応募者の比較検討が簡単になり、採用全体の質も向上した。

 

だがGoogleにおいても採用されている※1この面接技法は、特に目新しいものではない。「理想とする人材」の定義に従い、「我々の想定する人材であれば、このような回答があるはずだ」という仮定を作り、それを標準化された質問に従ってチェックをしてゆく。

そして、そのために必要な準備が「採用対象の人物像の設定」と「行動と実績に基づく面接」だ。

 

 

1.採用対象の人物像の設定

採用対象の人物像はできるだけ詳細に定義すると、質問の精度が上がる。注意すべきは「こう思っている」ではなく「このような行動を取る人」で定義することだ。

定義は以下のようなアンケートを「社内の有能な人物」にヒアリングして行う。

  • この職業に対する適性がある(適性が発揮されている具体的な行動例: )
  • チームプレイができる(チームプレイが発揮されている具体的な行動例:)
  • 物事を継続して粘り強くできる(継続性に優れているとみられる具体的な行動例: )
  • 自ら率先して行動を起こせる(率先して行動を起こせるとみられる具体的な行動例: )
  • 性格に大きな問題がない(性格を疑う行動例: )

 

 

例えばエンジニアの採用であれば「職業への適性」にこんな意見が出てくる。

  • 学生時代に自分で授業科目以外にゼロからそれなりの規模のソフトウェアを作ったことがある。
  • 中学生、高校生からPCでソフトウェアを作っている。
  • 「プログラミングの何が面白いか」を自分の言葉で具体的に語ることができる。
  • 勉強に用いた主要な技術書を挙げることができる。 など

 

他にも「自ら率先して行動を起こせる」にはこのような意見が出てくる。

  • 自分が言い出しっぺのイベントが複数ある
  • 困ったときにすぐに相談に行っている
  • 成果設定をしている
  • 調べ物を効率よく行っている
  • リーダーに立候補している経験がある(指名ではない)
  • チームメンバーとしてリーダーの意図を汲もうとした行動をとっている

 

 

2.面接で「行動と実績」を判定する

質問は以下のように行う。これは全面接官の間で標準化する。

 

面接官 「あなたがこの仕事を志望するきっかけとなった出来事をできるだけ詳しく、できるだけ多く教えて下さい」

学生 「大学時代に勉強したプログラミングが面白かったので、それを活かしたいと思い、志望しました。」

面接官 「どんな勉強をしましたか?」

学生 「C言語の授業で、ソートアルゴリズムと簡単な計算機を作りました。」

面接官 「それ以外に志望するきっかけとなった出来事はありますか?中学生や高校生の時にプログラミングに触れた経験はないですか?」

学生 「あとは…ゲームが好きだったというくらいですかね…」

面接官 「ゲームのプログラミングに興味があったのですか?具体的にどのような部分に興味があったかを教えて下さい。」

学生 「…」

 

この学生の「適性」は判断できない。高いかもしれないし、低いかもしれない。だが、同じ質問に対して他に適性の高そうな学生がいればそちらを採用するべきだということがわかる。

 

 

面接官 「あなたが、自ら率先して行動したと考えるエピソードを挙げて下さい」

学生 「はい、私はサークルで副リーダーをやっておりました。10名位のチームを纏めて、学園祭でイベントをこなしました」

面接官 「副リーダーはどのように決まったのですか?」

学生 「はい、先輩から指名を受けましたので、それを引き受けました。」

面接官 「チームの学園祭における成果目標を教えてもらえますか」

学生 「楽しくやろう、ということでした。」

面接官 「学園祭に向けて、何かしらのトラブルは発生しましたか?」

学生 「はい、なかなか練習に集まらないメンバーがいて、苦労しました」

面接官 「そのトラブルをどのように解決しましたか?」

学生 「電話したり、膝を突き合わせて話したりしました。」

面接官 「どのように話をしたのですか?」

学生 「学園祭で下手なパフォーマンスを見せるのはマズい、と言いました。」

面接官 「もっと詳細に教えていただけますか?私をメンバーだと思って話して下さい。」

 

このような質問と、具体的行動を聞くことにより、彼のリーダーとしての力量や、人を慮る能力を判定することがよりやりやすくなる。

 

 

例えば上の学生は副リーダーに「指名」されているので、率先して行動したとはいえない。また、成果目標の設定も甘い。

トラブルの解決については質問だけでは判断できないので、その場で再現してもらうようにする。具体的に目の前でやってもらうことが、応募者の能力の証明になることもあるだろう。「実技」は盛ることができないからだ。

 

上の例では、この質問への受け答えを見るかぎり、よほどのことがない限りこの学生は採用の対象とはならない。

 

 

このように面接のやり方を少し工夫するだけで「面接と採用後のギャップが大きい人」を排除することがある程度可能となる。

なお、面接だけでは全ての能力を判定できない。また、面接は万能ではなく、必ずミスや誤認が存在する。性格や数理的能力は統計情報のある筆記テストを併せて必ずすべきである。

また、上に紹介した技術は完全なものではなく、実験的な要素を含んだ1つの例であることを強調しておく。

 

 

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※1ワークルールズ!(東洋経済新報社)

 

 

Wei Ming Lin