「やる気」に関する研究は数多い。その中で最も難しいテーマの一つが、「目標の難易度」だ。
高すぎる目標をセットすれば、皆最初から諦めてしまい、やる気は出ない。
逆に、低すぎる目標をセットすれば、皆退屈してしまい、これもやる気は出ない。
したがって、目標の難易度は、高すぎず、低すぎず、と言われる。しかし、これは何も言っていないのと一緒だ。結局何が高すぎる目標で、何が低すぎる目標なのか?全くわからない。
実は、目標は高いほうが良い。
ピーター・ドラッカーは、「高い基準を持たないマネジャーは有害だ」と述べている。さらに、スタンフォード大学の心理学教授である、キャロル・S・ドゥエック博士は、その著作の中で「到達基準を下げても自尊心は育たない」と明言している。
人は「手に入りにくいもの」にしか価値を感じない、低い基準を達成したからといって、真の自尊心は生まれない。
では、基準を下げずにやる気を保たせるにはどうしたら良いのか?先に触れたドゥエック博士はこう述べる。
1.一流の人が取り組むべき、難しい課題を与える
(低い基準をクリアしたとしても、それは時間の無駄である)
2.結果ではなく、努力を褒める。
(極端な話、大した努力もせずに、結果が出てしまえばそれは有害である)
3.どうすれば高い目標を達成できるのか、やり方、方法を細かく、きちんと教える
(教師や親が出来ないことを、生徒や子供に要求することはしない)
4.時間をかける
これらの方法は、実際の教育現場で既に成果を上げている方法である。
多くの企業においてなぜ、人材が育たないのか。これを見るとよく分かる。2.と3.を疎かにしているからだ。
多くの会社では、努力ではなく、「結果」を褒める。高い目標を与え、結果を出した人のみが褒められる世界だ。なおかつ、上司もやり方が分からないような業務を「自分で考えろ」と突き放す。
これでは、「人材の育成」はおぼつかない。
「企業は人材育成をすることが目的ではない」という人もいよう。そのとおりである。
しかし、常に一流の人材は不足している。よほどブランドのある会社か、もしくは仕事が魅力的な会社でなければ、入社前から一流である人材は、採用できないだろう。
よって、もし「人材育成」を企業で行いたいのであれば2.と3.の条件について注意を払う必要がある。
(事業サービス責任者-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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