子供によく、本を読んであげることがある。

 

そこで感じるのは、子どもたちは本当に本が好きだ、ということだ。童話、昔話、時間、数、健康、人間関係、科学、そして生と死……様々なテーマで子供向けの本があるが、どのような分野でも子どもたちは「面白い本」が大好きだ。

そこでふと思う、こうして毎日本をよむと、結構な読書量になるのではないかと。

 

例えば、毎日昼に2,3冊、夜に2、3冊読むとすれば、1日に4冊から5冊程度は本を読むことになる。

子供にとっては休日か平日かなどは一切関係がないから、1年間に1400冊〜1800冊は読んでいる計算になるだろう。考えようによってはこれは膨大な情報量だ。

 

だが、子供にとってはそれが全く苦になってない。いや、苦にならないどころか「大きな楽しみ」と言っても良い。毎日毎日続けることは、知らない間にはるか遠くの高みまで、人を連れて行ってくれる。

 

 

私の好きな言葉の1つに「毎日主義」がある。

毎日主義とは花村太郎が今から30年ほど前に著した「知的トレーニングの技術」*1の中で紹介されている技術だ。

そして毎日主義は唯一、殆どの人に通用する「結果を出す方法」であり、先賢たちを見るにつけ、時として巨大な結果を生み出す方法とされる。

 

例えば毎日主義の1つとして、「若きウェルテルの悩み」や「ファウスト」で知られるゲーテは、最初から大作を作ろうとする大作主義を戒め、「今、この一瞬に全力を尽くせ」という主張をした。

目標に通じる歩みを一歩一歩運んでいくのでは足りない。その一歩一歩が目標なのだし、一歩そのものが価値のあるものでなくてはならない

目の前の仕事を完璧にすることが最優先であり、それを毎日続けることが「何かを成し遂げる」ということの本質であると、ゲーテは主張する。

 

また、ゲーテの影響を強く受けた森鴎外も「毎日持続する」ことに強いこだわりを持っていた。

彼は役所づとめであったが、役所から戻って来てからの数時間を執筆活動に充て、彼の生涯で全執筆量を割ると1日平均、原稿用紙3枚(1200字)書いた勘定になると言う。

軍医だった森鴎外にとって執筆活動は「副業」であったが、あれだけの作品を残し「文豪」と呼ばれているのは驚異的である。

 

また、夏目漱石は、若い芥川龍之介に送った手紙の中で、次のように言っている。

あせってはいけません、頭を悪くしてはいけません。根気づくでおいでなささい。世の中は今期の前に頭を下げることを知っていますが、火花の前には一瞬の記憶しか与えてくれません。うんうん死ぬまで押すのです。それだけです。

 

では、どうしたら「毎日やる」ことができるのだろうか。

確信を持って言えるのは、「続けられるかどうか」は意志力と言うよりは、環境をどのように作るか、ということに依存するということだ。

 

例えば子供に本を読ませたいなら、まず身の回りに本が大量に存在しなくてはならない。買ってもいいし、図書館から借りて置いておいても良い。

とにかく「身の回りに本がある」という環境を作ることから、続ける、という選択肢が生まれる。

 

先日、オンライン家計簿アプリ「Zaim」の社長の閑歳孝子氏がラジオのインタビュー番組に出演なさっていた。

Zaimは個人で開発したアプリがヒットし商業化されたと述べていたが、閑歳氏は「プログラミングは社会人になってから本格的に憶えた」と言っていた。

webに興味があったので転職したと、言っていたが、自ら環境を変えたことが、その後の人生までを大きく変えたのだ。

 

 

結局、人間はどこまで行っても意思の弱い動物である。

意志に頼るな、決意したら環境を変えよ、とは、誠に真実だ。

 

*1

知的トレーニングの技術〔完全独習版〕 (ちくま学芸文庫 ハ 44-1)

知的トレーニングの技術〔完全独習版〕 (ちくま学芸文庫 ハ 44-1)

  • 花村 太郎
  • 筑摩書房
  • 価格¥1,430(2025/06/05 11:57時点)
  • 発売日2015/09/09
  • 商品ランキング168,946位

 

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


ウェビナーバナー

▶ お申し込みはこちら(東京都サイト)


こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい

<2025年7月14日実施予定>

投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは

借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。

【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである

2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる

3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

Books&Appsの広告・広報サービスについて

学生インターン募集中

 

安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)

・編集部がつぶやくBooks&AppsTwitterアカウント

・すべての最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ

・ブログが本になりました。

「仕事ができるやつ」になる最短の道

「仕事ができるやつ」になる最短の道

  • 安達 裕哉
  • 日本実業出版社
  • 価格¥500(2025/06/05 13:48時点)
  • 発売日2015/07/30
  • 商品ランキング110,823位

meredith_nutting