表題の様な話はいくらでもある。すなわち、「どの程度の数の意見は、参考となるか?」という問だ。

 

他にも、ある商品やサービスへの満足度を測定する、あるいは市場調査を行うために、「アンケート」や「モニター」という手法がよく使われる。

よくやりがちなのが、「今のお客さん」に新しく作ったサービスを持って行き、「こういうサービスが有りますが、どうですか?」と聞く方法だ。既存のお客さんは話をしやすい上、もしかしたら買ってくれるかもしれない。

しかし、そうやって既存のお客さんに買ってもらったが、結果としてそのサービスは「既存のお客さんにしか買ってもらえなかった」ということはよくある。マーケティング担当や商品開発担当からよく聴く話が、「お客さんにアンケートを取ってもらったら、「良い」と言ってもらった。購入もしてもらったのに、なんで他に売れないのだろう・・・?」ということになる。

 

 

そんな時に役に立つのが、統計だ。

例えばあなたがターゲットを40万社とするサービスを開発したとする。このサービスにリソースを投入してよいかどうか判断をするために、このサービスを買いたいと思うか?というYes/No式の調査をしたい。

どの程度の数の会社に話を聞けば、正確なデータが手に入るだろうか?

 

世論調査や、製品検査などに使われている手法である、「標本調査法」と呼ばれる方法を採用すると、簡易的に統計局の表を用いてしまうのがカンタンだ。説明も載っているので、詳しく知りたい人はリンク先を参考にすると良いと思う。

出典:統計局 「統計学習の指導のために」)

 

標本の大きさ 調査結果が50%だった場合(注2)に 真の値が95%の確率で存在する範囲
100 50.0%±10.0、すなわち40.0%~60.0%
200 50.0%±7.1、すなわち42.9%~57.1%
500 50.0%±4.5、すなわち45.5%~54.5%
1000 50.0%±3.2、すなわち46.8%~53.2%
2000 50.0%±2.2、すなわち47.8%~52.2%
3000 50.0%±1.8、すなわち48.2%~51.8%

 

※1この表は、母集団の数が40万社などと大きい時には、母集団の数がいくつかということは関係なく使える。

※2調査結果が50%だった場合とは、YesとNoの比率が五分五分ということ。五分五分以外の場合では、もっと精度は上がるので(すなわち、もっと小さい標本でもよいので)標本の大きさは、調査結果が50%だった場合のことを考えておけば問題ない。

上の表を見ると、100社に聞いて50%の会社が「買う」といった場合、40万社に聞いても95%の確率で40%~60%の会社が「買う」と回答するということを示す。インタビューの会社を増やして、3000社にしても誤差が±1.8%になるだけで、大して変わらない。インタビュー先の会社が100社程度でも、十分信頼できるデータが手に入る。

ただし、この100社は、できるだけランダムに、無作為に、「全体をあらわしていると考えられる100社」を選定することが重要である。

 

ちなみに、表題にあるような「母集団の数が40程度」と小さい時には、上の表は使えない。例えば、

40人の会社で、ランダムに10人の社員に「会社に対して大きな不満があるか?」と聞いたら、半数の人が「不満」と応えた。全員に聞いた時、何人の人が「不満」と答えるか?

という問だが、統計局の表を引用すれば、

母集団の大きさ 標本の大きさ 調査結果が50%だった場合(注2)に 真の値が95%の確率で存在する範囲
200 100 50.0%±7.1、すなわち42.9%~57.1%
200 50 50.0%±12.3、すなわち37.7%~62.3%
100 50 50.0%±10.1、すなわち39.9%~60.1%
100 25 50.0%±17.4、すなわち32.6%~67.4%
40 20 50.0%±16.0、すなわち34.0%~66.0%
40 10 50.0%±27.7、すなわち22.3%~77.7%

ということで、40人のうち10人に聞いたところで、真の値は22%から78%の間にある。不満を持っている人の割合は40人に拡大したときは2割から7割の間と、全く参考にならないデータだ。

なお、表を見ると、40人の会社では20人に聞いて、50%の人が「不満」と言ったとしても、全体では35%~66%となり、そこまで信頼できるデータが取れるわけではない。

小さい会社では10人程度に聞いたところで、全体のことはわからないということだ。まあ、誰かの言う「みんな言ってますよ」なんて、そんなものである。

 

因みに、このような計算をズバッとやってくれるスクリプトを載せたページがあるので、細かく数値を設定したい方は、こちらを利用すると良いだろう。

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第4回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第4回テーマ 地方創生×教育

2025年ティネクトでは地方創生に関する話題提供を目的として、トークイベントを定期的に開催しています。

地方創生に関心のある企業や個人を対象に、実際の成功事例を深掘りし、地方創生の可能性や具体的なプロセスを語る番組。リスナーが自身の事業や取り組みに活かせるヒントを提供します。

【日時】 2025年6月25日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【ゲスト】
森山正明(もりやま まさあき)
東京都府中市出身、中央大学文学部国史学科卒業。大学生の娘と息子をもつ二児の父。大学卒業後バックパッカーとして世界各地を巡り、その後、北京・香港・シンガポールにて20年間にわたり教育事業に携わる。シンガポールでは約3,000人規模の教育コミュニティを運営。
帰国後は東京、京都を経て、現在は北海道の小規模自治体に在住。2024年7月より同自治体の教育委員会で地域プロジェクトマネージャーを務め、2025年4月からは主幹兼指導主事として教育行政のマネジメントを担当。小規模自治体ならではの特性を活かし、日本の未来教育を見据えた挑戦を続けている。
教育活動家として日本各地の地域コミュニティとも幅広く連携。写真家、動画クリエイター、ライター、ドローンパイロット、ラジオパーソナリティなど多彩な顔を持つ。X(旧Twitter)のフォロワーは約24,000人、Google Mapsローカルガイドレベル10(投稿写真の総ビュー数は7億回以上)。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/6/16更新)