経営会議の場で「普段は言えない、会社の問題は何ですか?」と聞かれたらなんと答えますか?
経験的には、
「やってることが認められてない」
「私の考えを提案する機会がない」
「会社や事業部の未来が見えない」
と言った回答が多いと思います。
言えない問題を聞いた経営者はおそらく「ムッ」とするでしょう。中には「あの野郎」と感じたりする方もいるでしょう。
そんなの当たり前です。
だからこそ会社にとって「言いにくい真実」とは多くの場合、扱われないまま放置されたり、最悪の場合は、幹部が率先して、経営者不在の飲み会の場で語られたりします。
でも考えてみてください。ムーミンに出てくるリトルミイの名言にこんなものがあります
時々、誰かに言われた言葉がチクッて刺さってイラッてするときあるじゃない。
それね、本当のこと言われてるからよ
実際のところ、その「言いにくい真実」には、会社が次のステージに向けて進化する機会に欠かせない何かが含まれている可能性があります。
私は株式会社ピグマ、代表の太田智文です。
弊社は「本音をぶつけ合う経営会議」をサポートする会社です。
現在まで、150を超える会社の様々な会議に同席し、経営会議の生産性を変えてきました。
ただ、「本音をぶつけ合う」と言われても、「本当に?」と疑う方も多いでしょう。「当社は既に本音で話している」と言う方もいるでしょう。
そこで1つ、自社の会議を振り返ってみてください。会議で本音が話されているかどうかの判断基準は簡単です。
「会議で、経営陣同士が真剣にケンカしているか」です。
「随分と物騒だな」と感じる方もいるかもしれません。しかし、喧嘩がない組織は、愚痴があります。
愚痴を言うくらいなら、いっその事本音を話して「幹部が互いに感じてること」や「社長に率直な意見を言う」方がよほどマシです。それが私の考える「ケンカ」です。
しかしこのように言うと、大抵は次の質問をいただきます。
「会議にプロの司会がいるだけで、本音が出るのですか?」
そうです……と言いたいところですが、残念ながら結論は「No」です。そんなことくらいで本音は出ません。
私たちの提供することの70%は、仕組みです。ですが、仕組みを運用するのは結局のところ「人」です。人が変わらないのに、成果が変わるわけはありません。
ですから、このように申し上げます。
「私たちが行うのは、真実に向き合うことをサポートし、問題解決を楽しむ組織にすること、その源に、幹部のあなたが”なる”ための勇気を得るためのご支援です。」
言いにくいことを言うのは、経営者、管理職、役員ともに相当のガッツがいる行為です。真実は時には痛みが生じます。その痛みに向き合わない限り、進化や発展はないでしょう。
アウトプット改善の鍵は、我々の支援のもとで、幹部の方が「事実と向き合えるか」となります。そうすれば、大事な事実を覆い隠したまま「会議は適当に済ませましょう」は圧倒的に減ります。
1つの事例として、お手伝いさせていただいた会社でこんなことがありました。
期首に経営者が見込んだリーダーにある新規事業を任せたところ、リーダーは喜んでそれを引き受けました。社長は安心し、時折もらう報告もポジティブなものであったので、半期ほど一歩引いて見守っていました。
ところが。
半期経っても、期待する成果が出てないことを目の当たりにしました。
経営者は愕然としました。特に愕然としたのは、やることをやってる状態なのに、成果が思ったほど出てない事でした。 状況を聞くと、リーダーは「アポイントの数を増やせば成約につながると思い、アポイントを増やしました」と言っています。
経営者が「何が問題か?」と聞くと、「成約率が当初の想定どおりではありませんでした」とリーダーは答えました。
ですが、もちろん経営者はそれでは収まりません。そんな答えに、会社で1番成果にコミットしてるからこそ、平気な顔をしている幹部にイラッします。
経営者はそこで精一杯ガマンし「で、どうするの?」と幹部に聞き返します。
この場合、経営者がリーダーに期待しているのは
「もちろん、今日の会議で、ゴール設定では終わらずに、どうやって、その目標を成遂げるか?まで話し合うよね」
なのです。
ところがリーダーは
「今日の会議では、まずは目標の再設定をやります。どうやって達成するかは、次の会議で決めようと思ってます」と回答しました。
それを聞いた経営者は怒り心頭で、「そんなことに時間をかけてるんじゃない!遅すぎる!」と怒鳴りました。
会議は膠着し、経営者も幹部も、困り果てていました。
私は休憩をとり、リーダーに次の事を伝えました。
「今、起きてることは、あなたが創ってます。誰が悪いと言っても何も起きません。まずは、あなたが言いにくいことを言って、真実を語ってください。そうでなければ会議の分だけ時間の無駄です。」
リーダーは深く思案していました。
そして休憩後。
意を決して、リーダーは口を開きました。
「私が数字に対するコミットがない状態で、このプロジェクトのリーダーを引き受けました。現時点での今の結果を作ったのは私です。本当に申し訳ない」
すると、もう1人の幹部が言いました。
「私はあるタイミングで、このプロジェクトの成果を人任せにしました。本当は言うべき事や、私が担うべきことに関してやってないことを告白します」
そして最後に社長も
「意思決定を任せると言っていたにも関わらず、結局は任せることができず、途中で口出しをしてしまった」と言いました。
そこで話された内容は、実はみんな見えていましたし、感じてもいたことです。
しかし、言葉にはされませんでした。
それらの「言いにくい真実」を腹の中に収め、恐る恐る互いを牽制しながら話をしていては会議の生産性はゼロです。
私はそれを口に出す事で扱えるようにし、「そうだよね」という安心感の中もっともっと言っていいんだ、みんな完全ではないんだ、というムードを作ることを少し後押ししました。
経営者と幹部には力の差や見えてる世界に違いがあるのは当たり前です。その事実を覆い隠したまま、ただ怒っても何も手に入れることはできません。
経営者は期待する幹部ほど「ヘボい仕事してんじゃないよ」と言いたいかもしれませんが、これが目の前に起きてる現状です。
一方で、リーダーは、自分のことを守ったり、評価を気にしても何もないことを認めそして足りない自分の力は、それはそれで認めなければ、成長はありません。
そしてここから、ようやくほんとうの意味での「事業の中身」の話ができるようになりました。
このように、真実が語られない会議は、ほぼ時間の無駄です。ですが、真実を語るには勇気がいります。私たちの仕事は、”これ”が当たり前のように起きてる会議の場を創ることです。
社内に
「給料が少ない」
「上司が嫌い」
「仕事がつまらない」
「やりがいを搾取されていると思っている」
などと、もし言う人がいたとすると、その問題の真相に横たわる問題は何か?興味を持つ事で、何か新たな発見があるかもしれません。
言いにくい真実を言うことで、立場の違いで見えている世界の違いが、「見える化」されるのです。
見えないものが見えるようになるだけで経営は変わります。
言えないものが言えるだけで扱う問題の質が変わります。
扱う問題の質が変われば、必ず未来は変わります。
扱いやすい問題ではなく、扱いづらいが本質を含む問題を討議することを助ける「安全な喧嘩の場」をつくることが当社の仕事なのです。
株式会社ピグマ 太田智文(代表取締役)
国際コーチ連盟プロフェッショナルコーチ(CPCC資格保持)。「すごい会議」認定マネージメントコーチ。1974年11月兵庫県神戸市生まれ。 神戸大学経営学部経営学科モチベーション課程卒。
大手出版社(株式会社ベネッセコーポレーション)入社後、社内外の人材管理及びディレクター業務を経て、(株)ピグマを設立。 自身もプロフェッショナルコーチとして、過去1,000人を超える経営者を含む人材のコーチングの経験がある。中小企業を中心とした経営者にとっては「組織」と 「人」に関わる問題を、現実に即して解決していくパートナーとして高い評価を得ている。
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