こんにちは。株式会社ピグマ、代表の太田智文です。
前回は、言いにくいことを言わないと、会議は一向に進まない、という話をさせていただきました。
今回は「一緒に働く人への無関心」について、少し書いてみたいと思います。
こんな格言を聴いたことがあるでしょうか。
「好きの反対は嫌いではない。好きの反対は、無関心である。」
この格言は正鵠を射ています。
なぜなら、会社において、最も危険なのは「対立」ではなく「無関心」だからです。
他のメンバーの仕事になど関心がない、どうなろうと自分の仕事さえ良ければ気にしないなど、いわば、会社でともに働くメンバーに対して「好き」も「嫌い」もない人。そういった人物が増えると、組織は危機に陥ります。
例えば、過去に私が会議をファシリテーションさせていただいた会社に、 100名ほどの営業主体の企業がありました。
「社員の大半が営業」という会社では、他の社員は敵である、という風潮が生まれやすくなる傾向があります。
なぜなら、他の人が好成績を上げれば、自分の成績は相対的に悪く見えるからです。
そのため、こう言った会社では「個人の壁」を打破するべく、より効果的なマネジメントの工夫をします。
例えば「ノウハウの共有」、「社員同士の協力」あるいは「成績の振るわない人への教育」を積極的に奨励するため、予算をグループ単位で持たせる。あるいは予算達成ボーナスを「全社で予算達成したときのみに支給」といったルールを採用する会社もあります。
その会社も、経営チームの共通の想いとして
「皆が共通の目標を持って、協力して成果をあげる」という意図で
「営業部10チームで、全体で月に◯件の契約を達成する!」
を掲げて、月初から活動していました。
そして1ヶ月後の営業会議の日となりました。彼らは掲げた目標件数を達成できたのでしょうか。
結果から言えば10チームのうち、7チームは目標の件数を獲得していました。
何が起こったのか?を聞くと、チームリーダー達は
「アポイントをいつも以上に積極的に入れました」
「チームの目標を紙に書き出して、自分のパソコンの画面に貼りました」
「契約の際にお客様に持ってきてもらうものの一覧を作って、何度もやりとりしないで一度で済むようにしました」
「営業の後、かならず上長と商談の振返りを行いました」
と、成果をあげるための工夫を語りました。
一方で、
「休みすぎました」
「行動量が不足していました」
「遠方が多く、一度の営業活動に時間をかけすぎました」
「現在のお客様からの追加の契約に期待して、新規顧客にあたれませんでした」
といったことを口にする方もいました。
なんだか違和感を感じつつ
会議はそのまま次の話に進んでいくように見えました。
その時、ある1人の参加者が口を開きました。
「……言っていいですか?こう言うことは、月の途中で皆、すでにわかっていたのではないですか?なぜ今になって、わかりきっていることを話しているんですか? 皆どう思っているんですか?」
そうです。
考えてみれば当たり前です。この月次の会議の前に、「目標を達成していないチーム」が存在し、うまくいっていないということは、参加者全員がわかっていたはずです。
それなのに、それが今この場になるまで言われていない。その方はそう言いたかったのです。
目標を達成しているチームリーダーの一人が言いました。
「……いや、言ってましたよ。」
「でも、言っていたなら、なぜこのような状態なのですか?」
「……。」
話を聴くと、たしかにこのチームリーダーは他のチームリーダーに対して
「数字どうするの?」と聞いてはいたようなのです。
しかし、「がんばります」と言われ、それ以上突っ込んだ会話は十分にできていなかったとのこと。
結果、言われた側の行動は変わらなかったのです。
この根底にあるのは、「他チームへの無関心」ではないでしょうか。
「関心」というものは、単に「興味がある」にとどまりません。大事なのは、他チームのことに対しても、「自分も責任を有している」という当事者意識です。
もしかしたら、「無関心」という言葉は言い過ぎかもしれません。
しかし、責任があるという状態は、ただ伝えるだけではなく、仮に相手が「わかってます」「やってます」と言ったとしても
こちらが期待する行動が現れるまで、言い続けることです。
実際、「これ以上追求するのは、相手が嫌がるだろうから、いいや」
から「変わるまで見続け、励まし、言い続ける」にシフトする事こそ、
成果に大きなちがいをもたらすのです。
必ずしも「成果に対する意欲」は、皆が同じ水準ではありません。
「私はこれで一生懸命やってる!(もっと私を認めて欲しい!)」
「もうこれぐらいでいいじゃないか」
と思ってる人がいたとしても、それを責めるのではなく、認め、そして、どうしたら皆が成果をあげられるかを、私たちは議論する必要があるということを、1人の参加者の発言から、気づかされました。
最後に、私は彼らに投げかけをしました。
「これからどのように会議を進めれば、皆さんの期待が手に入るか?話してください。」
結果として、彼らは
「皆の前で成果を追求すると、糾弾しているようなイメージになってしまう」
「細かい各論を、皆の前で支持するのは時間が勿体無い」
という「人に言いづらい」と環境を解消するため、3人一組で「個別の各論について話し合いの場を持つ」ということが決定しました。
会議の最後に「真実」を口にした参加者が言いました。
「今日の会議はいい会議でした。私の期待してたものが手に入りました。」
企業にはこのような「他者への無関心」が溢れています。
しかし、それであれば企業は「フリーランスの集合体」でかまわないはずです。衆智を結集できることが「組織をつくること」の強みである以上、その力をどうやって活かすかを考えることは、マネジメントの重要な役割なのです。
株式会社ピグマ 太田智文(代表取締役)
国際コーチ連盟プロフェッショナルコーチ(CPCC資格保持)。「すごい会議」認定マネージメントコーチ。1974年11月兵庫県神戸市生まれ。 神戸大学経営学部経営学科モチベーション課程卒。
大手出版社(株式会社ベネッセコーポレーション)入社後、社内外の人材管理及びディレクター業務を経て、(株)ピグマを設立。 自身もプロフェッショナルコーチとして、過去1,000人を超える経営者を含む人材のコーチングの経験がある。中小企業を中心とした経営者にとっては「組織」と 「人」に関わる問題を、現実に即して解決していくパートナーとして高い評価を得ている。
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