こんにちは。株式会社ピグマ、代表の太田智文です。

殆どの方は子供の頃、両親や学校の先生から「勉強しなさい」と言われて、

「あ、そうだ。もう勉強しなきゃいけない時間だ。あ、なるほど!」

となったことはないと思います。

 

やらなければならない、とわかっていても、それ実際にやるかどうかは別の問題だからです。

では一体、どんな時に人は一生懸命行動するのでしょうか。

 

それは「自分で選択し、実行すると決意した場合」です。

 

******

 

以前、不動産会社の会議に対するファシリテーションの依頼を受け、月に一回の部課長会議に参加した時のことです。

この会社は営業一部、二部があり、その中に課長の率いる幾つかのチームがあります。

 

成果を見ると、その月は一部と二部の成果に大きな差がありました。

そこで、その差がどこにあるのか、成果をあげているチームがどのような取組みをしているのかを皆で共有しようということになりました。

 

そこで私は参加者の方々に、

「どの課長が率いるチームがうまくいったと判断していますか?」 と参加者の皆さんに質問をしました。

経営者や私が「このチームは良い」「このチームは悪い」と決めてしまえば、それだけで会議の参加者の中に序列ができ、立場の弱い成果を出せていない人物は発言できなくなってしまう可能性があります。

うまくいっているかどうかといった判断と、数値などの起こった結果を区別し、時には、数値の結果だけではないところで、参加者自らに判断してもらうことも大切です。

 

話を元に戻します。

投票の結果、一部から4チームが選ばれました。

さらにその4チームに「成果をあげるために、意図的に取り組んだこと」を発表してもらったところ、下のような意見がでました。

◯メンバー1人1人のレベルにあわせてプロセス数字を設定している

◯行動目標に対する成果を明確にしている

◯困ったときは、すぐにうまく行っている人に聞いた

◯LINEを活用して、自分含めたメンバー全員の営業活動のレポートを行った

◯誰がやるか明確になってないチーム運営上の雑務はリーダー自身が率先して行った

など。

 

一般的な会議では、このあと議長が

「では、他のチームでうまくいったことを参考に、今日以降ご自身のチーム運営に活かして成果をあげてください。宜しくお願いします。」

と言って、閉会するでしょう。

ところが、社長はこう仰ったのです。

「今の発表はとても良かったと思う。もちろんこの発表を聞いて成果のあがる人はいるだろう。でも本当に問題なのは、この発表を聞いても、持ち帰って実践できない人がいることはないだろうか?

 

社長の仰る通りです。

良い事例を発表しあい、それを会議の参加者全員が素直に持ち帰って行動ができているのならば、本来、チームの間で差はつかないはずです。でも実際には差がついています。

その原因は、頭の中でわかったというレベルと、実際に持ち帰って実践できるレベルには大きなギャップがあるからです。

「実際に持ち帰って行動に変化が起きる」やり方までを手に入れることができてこそ、会議の意味があります。

 

では、どのようにすれば「実際に持ち帰って行動に変化が起きる」のでしょうか。

社長はこう考えました。

「リーダーがメンバーから慕われ、ファンになっている状態であれば、伝えたことがもっと現場で実行されるのではないだろうか。」

そこでこの場で、

「もし自分がメンバーだったらどんなリーダーについていきたいか」

を話し合ってみようということになりました。

 

すると、次のような意見が発表されました。

◯一緒に戦ってくれる人

◯数字を自分であげられる人

◯数字を部下にあげさせられる人

◯面倒見が良い人

◯裏表がない

◯自分が一番動く……

 

しかし、これらを発表し合うだけではもちろん、前述の発表と同様、持ち帰る人と持ち帰らない人が出てしまうかもしれません。

そこで私は、

「一人一つ、ご自身にとって最も伸ばしたい項目を選んでください。そして、皆の前で「自分が選択した成長ポイント」を発表してください」とお願いをしました。

 

すると、そのうちの一人で最も年配のDさんは

「面倒見が良い上司になりたい」と発表しました。

そこで、私はDさんに問いかけました。

「面倒見が良い上司になるためにはどうすれば良いか方策は見えていますか?」

Dさんは謙虚にも、

「見えていません」

と答えました。

 

そこで私は

「周りの人からのアドバイスを期待しますか?」

とお聞きしました。

Dさんは

「はい、お願いします。」

と言いました。

 

この一言は、とても重要だと思います。

Dさんご自身がアドバイスを求めたことにより、今までDさんに遠慮をしていた課長たちが、アドバイスができる状態になったのです。

またDさんも、もらったアドバイスを実行する可能性が上がります。

 

結果的にDさんは、「面倒見が良い上司になるための、部下の目標管理の仕方」

を持ち帰ることができました。

 

 

******

 

「自分で決めること」を徹底的に本音でやれば、だれもが「やる気」になることができます。

アドバイスも会議での決定も、一方的に受けてもけっして身にはなりませんし、実行もされません。なぜならば、それはアドバイスを受け入れる側が「自分で決めたこと」ではないからです。

 

そのような状態のとき、自ら決めるようにうながすのが、ファシリテーターである私の役割です。

人は、強制されたことや指図されたことは決してやりません。「自分で選択して」「実行すると決意したこと」を、責任をもってやるのです。

 

 

 

株式会社ピグマ 太田智文(代表取締役)

国際コーチ連盟プロフェッショナルコーチ(CPCC資格保持)。「すごい会議」認定マネージメントコーチ。1974年11月兵庫県神戸市生まれ。 神戸大学経営学部経営学科モチベーション課程卒。

大手出版社(株式会社ベネッセコーポレーション)入社後、社内外の人材管理及びディレクター業務を経て、(株)ピグマを設立。 自身もプロフェッショナルコーチとして、過去1,000人を超える経営者を含む人材のコーチングの経験がある。中小企業を中心とした経営者にとっては「組織」と 「人」に関わる問題を、現実に即して解決していくパートナーとして高い評価を得ている。

 

 


【お知らせ】Books&Appsでは、企業の広報活動を支援するサービスを行っています。ご興味のある方はこちらからご連絡ください