こんにちは。「オフィスを創る」会社、翔栄クリエイトの河口です。

 

前回は我々の事業「業績に貢献するオフィスを創ること」、そしてオフィス創りは、社員の行動と企業風土を形作ることであるとお伝えしました。

 

ところで、「行動経済学」のエピソードにこんなものがあります。

ナイキのベトナム支社の最高責任者であるタッカーは、地方の工場を訪れることが多かったため、オフィスを空けているあいだに仕事がたまり、会社に戻って手に負えなくなることがよくあった。(中略)

彼女はチームとの交流を重視していた。そのため会社にいるときはいつでも部下と面会できるように、オープンドア制度を設けていた。

就任から9ヶ月後、彼女はチーム・メンバーに上司としての仕事ぶりについてアンケートを取った。驚いたことに、従業員たちは話し合いの時間がないことに不満を抱いていた。

「私の部屋に来ても、私が話をしながらコンピュータ画面を見て何かを入力し続けていることに起こっている人もいました。(中略)」

彼女は非を認めた。たしかに悪い習慣だ。彼女は部屋のレイアウトにその原因があると考えた。会いにやってきた従業員は、彼女との机とは離れた椅子に座る。すると従業員と目を合わせていても、コンピュータ画面がつい目に入ってしまう。そのため、あまりにも頻繁に従業員の顔から画面に視線を向けてしまっていたのだ。

そこでタッカーは部屋の模様替えをした。来客者の壁にならない位置に机を移動し、ふたつの小さなソファとテーブルを置いてミーティング・スペースを設けた。(中略)

「家具の位置を変えるだけで、会いにやってきた人々と遥かに親密な交流が持てるようになったのです」と彼女は言った。半年後、次のアンケートの結果が返ってきた。嬉しいことに、彼女のコミュニケーション・スコアは大幅に上昇していた。*1

ちょっとしたレイアウトの変更だけでも、人の心理には大きな影響があることがわかるエピソードです。

これが「オフィス」のレベルでの変更であれば、どれほどの影響が従業員にあるか、想像するに難くはありません。

 

事例:ミキフーズ株式会社

今回ご紹介するミキフーズ様は主に「中食」と呼ばれるスーパーマーケット、デパ地下、駅ビルなどの惣菜店に業務用の冷凍食品を中心とした卸売業を営んでいる会社です。

 

現在の社長は2代目で、先代社長がしっかり基盤を築き上げたという事もあり、極めて安定した状態で、経営が引き継がれました。

(ミキフーズ株式会社 代表取締役 井沢幹昌様)

一般的に、卸売業にてお客様から求められるのは、基本は「安く」「早く」「正確に」だと思います。しかし、Amazonのような企業も進出している中、「安く」「早く」は、自社の努力だけでは難しくなってくる可能性もあります。

井沢社長は、そのような経営環境が激しく変わっていく中、二代目として何かをしたい!また、食を通じて社会貢献をしたい!と、強い想いをお持ちでした。

 

そのような状況下、新たに入社した一人の営業が、会社の飛躍に向けての大きなヒントとなりました。

その方は、18歳の時から料理の修行をし、一流レストランで働いた経験を持つ「腕の立つ」料理人の経歴を有しておりました。

そして、お客様先へ食材提案に行く際、その場で実際に料理を作って見せ、「当社の食材を使うと、こんなに美味しくなりますよ!」と、自分の経験をフルに活かした営業を行っていたのです。

 

それは、いわゆる卸売業では一般的なルートセールスとは明らかにスタイルが異なる、ソリューション営業でした。

井沢社長は、この営業スタイルの変化が、会社のネクストビジョンにつながると強く感じ、

「社内にテストキッチンを造ろう。営業の皆が料理ができようになり、お客様の為の料理メニュー開発をテストキッチンで行う。そして、こちらからお客様へどんどん提案していくようなアクティブな営業スタイルへ変えよう。」

とお考えになったのです。

 

弊社はここで、ご相談を受け、ここから約半年に渡るテストキッチン新設プロジェクトが始まりました。

 

井沢社長と何度も打ち合わせを重ね、営業の皆が料理ができ、お客様へメニュー提案等をするだけでなく、外部講師やお客様をお呼びして一緒に勉強をしたり、お客様と共にメニュー開発をする。

また、メーカー新商材のプレゼンの場となる等、様々な人が集まる場所となり、お客様と共に発展していける会社になっていくような、テストキッチンを中心とした厚みのある事業戦略イメージができあがって行きました。

ただ、ここで難しいのは、社長が想い浮かべる革新した会社のイメージが、言葉でいくら説明しても社員に伝わり難いという事です。

 

ミキフーズ様に限らず、社長が「今、会社はこう変わるべき」という革新イメージを、社員に対して熱く語っても、言葉を聞くだけでは、頭で理解できても心が動かない為に、社員の行動も変わらないという事がとても多く見られます。

(リノベーション前のミキフーズ様のオフィス)

オフィス空間を創る場合、空間の与える力はプラスにもマイナスに働く為、その空間効果をしっかり考えなくてはなりません。

 

例えば、機能よりも見た目を重視した、今風でかっこいいだけのテストキッチンを創った場合、お客様から「卸業なのだから、そこに費用をかけずに、卸価格を下げる努力をして欲しいです。」等と思われてしまう可能性があります。これでは、業績にマイナスに働いてしまいます。

また、理科の実験室のようなテストキッチンにした場合は、実作業的には問題無いのですが、ワクワク感が無く、「また来たい!」と思えず人が集まる空間としては魅力不足です。

本質的には、ここは「戦略的に意味のある空間」であり、且つ「人が集まりたくなる空間」にする必要があるわけです。

 

そして、半年間お客様と共に考えた末、完成したのが以下のオフィス空間です。

(リノベーション後のミキフーズ様のオフィス)

あくまでここは「情報発信」の中心であり、議論の場です。

そこで、中心には議論ができる場をつくり、必要な資料をスクリーンに投影したり、後ろのホワイトボードに議論の結果を記録したりすることができるようにしました。

 

そして、議論の題材となっている食材をその場でキッチンで料理して出すことが出来、カウンターに座れば調理をするところが見える等、 研究・研修・プレゼン等を行うのに使い勝手の良い機能重視の環境にしました。

また、一面にブラウンのカラーガラスが貼られた壁面では、ご来社された方々の写真を貼っていく等、

様々な方がここに集まっている事を感じられる場としました。

ミキフーズ様では現在、社員・メーカー・お客様が集まり定期的にワークショップが開催される等、テストキッチン完成から一年も経たないのに既に来社数が100社を超え、本当に”人が集まる場所”に変わりつつあります。

また、お客様から、「ミキフーズさんって、ちょっと変わった事している会社だよね!」と言われる等、ブランディングにも影響が現れ始め、はじめての新卒採用も成功に至りました。

 

そして何より、お客様と一緒にメニューを作ったり、お客様の新入社員をお預かりして研修をする等、お客様との関係が大きく変わり始める等、ミキフーズ様は大きく変わりはじめています。

ポイントは、社風が”自然に”変わり始めているという事です。

社長が革新イメージを、社員に対して熱く語っても、言葉を聞くだけでは、心が動かない為に、行動も変わらないというケースが本当に多いのです。

 

逆に、「心が動く空間」を創れば、自然と人は行動が変わっていきます。社員の行動がかわると社風が変わっていきます。

このように、オフィスは使い方によっては「経営者の描く戦略実現の武器」ともなり得るのです。

 

 

 

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