こんにちは。株式会社ピグマ、代表の太田智文です。

 

皆さんは「トップガン」という言葉をご存知でしょうか。

トム・クルーズ主演の映画のタイトルにもなりましたが、これは米国のエリートパイロット養成機関の名です。

「トップガン (Top Gun)」とは、アメリカ海軍戦闘機兵器学校のことで、エリート戦闘機パイロットの上位1パーセントのパイロット達の空中戦技を指導するために造られた養成機関である。(Wikipedia

そして、トップガンにおける練習プログラムは、以下の理念に基づいているそうです。

敵機を撃ち落とす、マンモグラムを解釈するなどの目的にかかわらず、トップガン流練習法に共通する暗黙のテーマの1つに、行動重視の姿勢がある。

もちろん任務を遂行するにはそれなりの知識も必要だが、最終的に物を言うのは「何を知っているか」ではなく「何ができるか」だ。*1

知識と技能は異なるもの、という考え方こそ、一流の人材を創る秘訣だ、というコンセプトは、非常に多くの優れたパイロットを生み出してきました。

 

そしてこれは、ビジネスパーソンにもほぼ同じことが言えます。

いくら「良い話」を聞いても、「アイデアの出る会議」を開催しても、それらは単なる知識であって、それを実践するためには、訓練が必要なのです。

だから、会議ではたくさんの素晴らしいアイデアが集まり、それを皆がメモしたり、議事録が送られてきたりするけれど、それが実行された気配はないし、成果もいつものまま

よくある話です。

 

*******

 

ある会社でのお話です。

この会社では、半年前から業務改善に取り組み、現場でのオペレーションは目に見えて改善していきました。

 

ただこの会社には一つ大きな課題がありました。 若手の離職率が高止まりしていたのです。

原因を究明するため、従業員満足に関する全社アンケートを実施したのですが、残念ながら期待したほどの結果は得られませんでした。

 

そこで、社長と各部門長6名での話し合いが持たれ、この改善策について話し合われました。

その場ではいくつかのアイデアが出てきましたが、その経営陣から採択されたアイデアは 「もっと従業員の承認欲求を満たさなければならない」というもの。

すなわち、上の方が従業員をもっと褒めよう、というアイデアでした。

 

ただ、これを確実に実践することは、言うほど易しいことではありません。

思うに、様々な会議の現場を見て確信しているのですが、「褒める」ということが業務改善策として選ばれる場合というのは、その多くの場合、その改善策を選ぶ人たち自身もあまり褒められていないことも多く、「自然な褒め方」を知らない方も少なくないからです。

 

また、「自然に褒める」ことの重要な側面の一つに「他人を承認する」という行為があります。褒めることは、相手を認めお互いに理解し合うということがとても大事なのです。

メンバーを「褒める」とは、つまりメンバーを「承認」することに他なりません。

 

そこで、次に私からこうリクエストしました。 「◯◯さん、では実際にスタッフの方を褒めるトレーニングと思って、この場にいる△△さんを試しに褒めてみてください。」 実際に現場で行うことを、今この場で行う練習を、リクエストしたのです。

 

ところが……

実際に書き出した言葉を口にするのは結構難しいのです。

これは誰でもそうだと思いますが、いざAさんをそこで褒めようとすると、的確な言葉が出て来なかったりして、思うように相手にその思いを届かせることができません。

夫婦が改まって、あいてのことを褒めようとしても、照れくさくてなかなか言葉が出てこないのと、全く同じです。

 

他人を承認しようにも、相手にその意思が届かなければ意味がありません。

それは、エンロールメント(巻き込み)とも呼ばれていて、相手を褒めるというのは、自分の意思を的確に伝え、それによって相手を巻き込むことで、初めて承認は達成できるのです。

つまり、そのエンロールメントこそ、相手を褒める時に最も意識されなくてはいけないことなのです。ただ問題は、それが理解できたとしても、実際に行動できるかどうかは別問題なのだ、ということです。

 

ではどうするか。

それは「反復練習」あるのみです。

 

この会議では、早速ランチタイムから実践が始まりました。

私は「休憩中に、この会議に参加しているメンバー意外の方の承認をしてください」と伝えました。

何を置いても、とにかくすぐ行動に移してやってみることが大事なのです。会議室と仕事の現実を結びつける行動をどれだけ取れるかが、この「練習」のポイントです。

 

休憩後、

ある人はコンビニで「あなたの笑顔は素晴らしい。とても気持ちいい対応ですね。」と言ったそうです。

ある人は部下に電話をかけて「いつもありがとう」と言いました。普段から部下にそれを言いたかったけれども、なかなか言えなかったそうです。

 

こうした「実践的な練習」は最も大事です。

あるアイデアは試さなければそのうちに忘れ去られていきます。多くの会議では、素晴らしいと思われたアイデアが、ただの「空想」になってしまう原因はここにあります。

 

結局、この会議では、彼ら自身が「つぎの会議までに1人が50人褒める」という目標を決めました。それを実践する方法として、1人50枚の褒めカードを持ち、それを次回までにすべて渡しきるというアクションプランが皆で決定されました。

1週間後、社長にこう教えていただきました。

「今日も皆、承認しまくってますよ。」

仕事をやっていて、こういう瞬間が自分にとって一番、うれしいとしみじみ感じます。

 

 

*1

 

 

株式会社ピグマ 太田智文(代表取締役)

国際コーチ連盟プロフェッショナルコーチ(CPCC資格保持)。「すごい会議」認定マネージメントコーチ。1974年11月兵庫県神戸市生まれ。 神戸大学経営学部経営学科モチベーション課程卒。

大手出版社(株式会社ベネッセコーポレーション)入社後、社内外の人材管理及びディレクター業務を経て、(株)ピグマを設立。 自身もプロフェッショナルコーチとして、過去1,000人を超える経営者を含む人材のコーチングの経験がある。中小企業を中心とした経営者にとっては「組織」と 「人」に関わる問題を、現実に即して解決していくパートナーとして高い評価を得ている。

 


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