前回は幸福についての記事を書いた。
予想を遥かに越えて好評だったみたいで、筆者としては正直なところ非常に驚いた。
あの記事を読んでいない人も多いとは思うので内容を簡単に総括すると、幸福とは心身が健康である事をベースに、モテと収入と人間的尊厳が一定値以上に保たれている状態である、というのがその内容だ。
他人の活動を読み解く時、これらの視点から分析を行うと、結構面白い。
みんな口ではいろいろ言いつつも、大体これら三要素のどれかを獲得するのを目的に行動しているというのがよくわかる。
さて幸福というものがどういうモノを前提として成立するかは上記の通りだとして、次に問題となるとは幸福になったらその後は一体どうすればいいのかだろう。
当たり前だけど、幸せというのは人間の精神状態でしかない。それは1つの追い求めるべき目標ではあるけども、ゴールではない。幸福な状態にある上で、何をするべきかが人生の醍醐味である。
このことをよくわかっていない人は人生の幸福度をとにかく上げようとして、いつまでたってもモテや年収、社会的地位を限界まで高めつづけようと努力していたりするけども、実際のところモテ×年収×社会的地位で得られる幸福は、一定値以上から先は飽和する。
人間、足るを知る事が大切だ。自分がどの段階で満足できるかを把握することは、その後の人生設計にも非常に重要である。
じゃあ幸福な状態に至った後には、人は何を気にするべきなのだろうか?僕はそれは人生の時間配分だと思う。今回は、人生の時間配分について書いていこうかと思う。
緩急の大切さ
僕のライフワークの1つにグルメがある。社会人になり銀行に結構な金額が振り込まれた後、少し勇気をだして高いフレンチを自腹で食べたときの感動は今でも忘れられない。
その後、見事に外食にハマった僕は毎晩のように高いレストランにでかけてみたのだけど、ある時ふと気がついたのである。
「なんか始めの頃と違って、全然楽しくない・・・」と。
残念ながら、僕の身体は贅沢尽くしに耐えられるほど強くはなかったのである。
その後、いろいろな調整を加えてみていったところ、平日は自炊でサッパリしたものを食べ、週末にガツッと旨いものを食べるのが一番自分の心が幸せを感じるという事がわかった。
人間、緩急が大切だ。贅沢というものは、それにむけて身体のテンションを調節する事で初めて享受できるものなのである。
昔の人はそれをハレとケと表現していたが、まったくもって実にそのとおりだ。少年ジャンプは週1だからこそ面白いのである。毎日あれを与えられても、そのうち辛くなってくるのは目に見えて明らかである。
このようにして食事以外の活動を含めて自分のなかでハレとケの時間配分を調節していってみると、実際のところ自分が幸福な状態にありつづけるのにそこまで多くのお金は必要ないという事がよくわかってきた。
もちろんお金を使おうと思えばいくらでも使えるのだけど、自分が心地よいと思える状態を演出するのに最も大切なのは自分の身の置き所であり、多額の金を使うかなんかより、どこに自分をどんな状態でどれだけのあいだ配置するかの方がよっぽど人生において大切だという事に気がついたのである。
時間は万人に平等で、最も高貴な資源である
ある論文によると、お金の使い先として体験に投資した人が最も幸福値が高かったという。
高い服や時計を手に入れる喜びは一瞬だけど、旅行の記憶はその後もずっと残り続ける。10年、20年後によい思い出として思い出せる体験を作り出すことに自分の資源を投資できる人は、その後の人生に厚みが出てくる。
これはなにもレジャー関連に限った話ではない。例えばだけど、家庭を持つというのも人生に厚みを作り出す強い行為である。
信頼できるパートナーと同じ屋根の下で長い間暮らすという事は、一人ではとても演出できない何かをあなたの人生に刻み込む。
多くの人は自分の親ですら20年前後ぐらいしか一緒に住まないだろうが、こと配偶者ともなると、下手すると20代~死ぬまで付き合い続ける存在である。年数換算すれば、最大で80年近くは一緒に過ごす事になるのである。
冷静に考えてみると、これは凄い事だ。80年も一緒に過ごすってのは尋常ではない。
こうして最大80年もの歳月を一緒に過ごす配偶者だけど、当然と言うか1年目と10年目と80年目で何を思うのかは、その時次第で全然異なるだろう。
仮にあなたが1000億円もっていたとしても、結婚して1年目に80年連れそった夫婦の感情が理解できるかというと、それはまず間違いなく不可能だ。
こうしてみればわかるけど、歳月の重みは実に強い。時間は、実は誰にでも平等だけど、実は最も高貴な資源なのである。
どこのどんな大富豪でも、時間だけは人よりも多く投資する事はできない。80年たった夫婦の感情を理解したいのなら、80年もの歳月を投資しないと、それは絶対に理解できないのである。
これは仕事においても真理である。
かつてマルコム・グラッドウェルが10万時間の法則というものを提唱した。ある種のプロフェッショナルになるためには、最低でも10万時間の練習時間が必要であるというのがその理論の骨子なのだけど、私たちは何の世界でも、本当に理解するためには真摯に、それなりの期間を集中しなくてはいけない。
どこのどんな人間でも、一晩で営業のプロにはなれないし、一晩で一流のプログラマーにはなれない。時間のみがそれを私たちに実現させる事ができる。
そうしてプロフェッショナルになったあなたの心に残る感情こそが、人生の至福なのである。これこそがどんなお金持ちでも絶対に買えない、かけがえのない唯一無二のものなのだ。
あなたの人生を何に使いますか?
僕もそうだったからわかるのだけど、若い頃はモテだとか年収だとか地位といったわかりやすいモノに固執してしまうかもしれない。そこに幸せの全てがあるようにみえてしまうかもしれない。
けどそれは到達すべき1つの通過点でしか無い。人間の本当の幸せは、モテでも年収でも地位でもない。情熱と時間のみがそれを私たちにもたらしてくれるのである。
情熱と時間によって作られた、厚みのある人生こそが私達が生涯をかけて獲得すべき、唯一無二ものなのだ。
くれぐれも、この2つを馬鹿にしないで欲しい。この2つにこそ、人生の全てがつまっている。そしてこの2つの資源は、万人に平等な資源である。
つまるところ、人間はみな平等なのである。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【プロフィール】
都内で勤務医としてまったり生活中。
趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。
twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように
noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki
(Photo:stefanos papachristou)