ジョージ・オーウェルという作家が著した「1984年」という小説をご存知だろうか。全体主義、独裁による統制がなされたある国家の物語である。
1984年(Wikipedia)
トマス・モア『ユートピア』、スウィフト『ガリヴァー旅行記』、ザミャーチン『われら』、ハクスリー『すばらしい新世界』などのディストピア(反ユートピア)小説の系譜を引く作品で、スターリン体制下のソ連を連想させる全体主義国家によって分割統治された近未来世界の恐怖を描いている。(中略)
出版当初から冷戦下の英米で爆発的に売れ、同じ著者の『動物農場』やケストラーの『真昼の闇黒』などとともに反全体主義、反集産主義のバイブルとなった。冷戦時の共産主義体制を批判した反共主義者も、また政府による監視や検閲や権威主義を批判する西側諸国の反体制派も、好んでこの小説を引用する。
1998年にランダム・ハウス、モダン・ライブラリーが選んだ「英語で書かれた20世紀の小説ベスト100[1]」、2002年にノルウェー・ブック・クラブ発表の「史上最高の文学100」[2]に選出されるなど、欧米での評価は高く、思想・文学・音楽など様々な分野に今なお多大な影響を与え続けている。
全体主義の恐ろしさをここまで鋭く描写した本はあまりない。全国民は生活の隅々まで監視され、思想統制を受ける。不審な行動をとったり、国家にとって有害であるとみなされる思想をもったりした人間は、知らないうちに「蒸発」してしまう。
しかし、この本の真の面白さは「全体主義国家」が思想を統制する手口があまりにクリエイティブであり、かつ、「国家」にかぎらず「企業」その他の組織においてもそのやり方が適用可能であるところだ。
例えば、思想を統制するためにこの国家が取る方法を幾つか紹介する。
1.常に国を「戦争状態」に置く
”戦争とは、大衆に過度な快適を与え、それによって、ゆくゆくは彼らに過度な知性を与えてしまいかねない物質を、粉々に破壊する。
(中略)結果、生活必需品の半分は慢性的な不足に陥っている。しかしこの現状は好結果とみなされる。上位層の人々をも窮乏の瀬戸際あたりに留め置くのが、政策上の企みである。
なぜなら、窮乏が一般的であるという状態では、僅かな特権でも一層の重要性を帯び、かくしてある集団と別の集団との区別は更に明瞭になるからだ。”
2.党幹部を「戦争状態に適した精神状態」に追い込む
”有能で勤勉、ごく限られた範囲であれば知性を働かせることさえ期待されるが、彼はまた同時に、信じやすく、無知で狂信的でなければならず、恐怖、憎悪、追従、勝利の興奮が、彼の支配的感情でなければならない。
別言すれば、彼は戦争状態に適した精神構造を持っていることが必要なのだ”
3.何事にも、「党にとって良い解釈」をさせる
「ダブルスピーク」を用いて、何事も良い方に解釈させる。ダブルスピークとは、「印象を操作する言葉遣い」によって、ポジティブなイメージを作り出すこと。
例えば、日本でも盗聴許可法が「通信傍受法」として通用している、カジノ営業を可能にする地域を「統合型リゾート」と呼んでいる、日本経団連がホワイトカラーエグゼンプションを「家庭団らん法」と呼ぼうとしているなどの例がある。(Wikipedia)
4.反対勢力は分断し、不名誉を着せて、消す。
密告を奨励し、人を集団化させない。また、粛清した人々を「英雄視」させないために、その人に関する一切の記録を改ざんし、不名誉な罪を捏造する。
消した後、その人は「元々存在していなかった」とされるか、あるいは完全に無視される。
いかがだろうか、こういった手法が「企業」でも使われることは十分有り得る。
「他社との競争」という戦争状態に従業員を置き、給料を低く保つことで「余計なことを考えることが出来ない、精一杯の状態」をつくりだす。
従業員を常に「熱狂状態」に置くために表彰をおこない、成果が出ないことへの恐怖を煽る。
会社のサービスへのクレームや世の中からの批判については、「都合のいい解釈」を適用し、「従業員同士の交流」の中身を密告させることにより全員を疑心暗鬼に追い込む。
会社を辞めた人間を悪し様に言い、場合によっては「不正を行った」などの悪いうわさを流す。
もちろんこれは架空の話だ。が、実際のところはどうなのだろうか?
(2025/7/14更新)
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。
<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【今回のトーク概要】
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
ご視聴登録は こちらのリンク からお願いします。