最近次女が「わたしふつうのおんなのこになったから!」と宣言するようになりまして。

ベガでも倒したのかなと思っていたところ、ヒアリングしてみるとどうも「幼稚園を卒園したから、園児ではなくふつうのおんなのこ」ということらしいです。

 

次女の言語感覚は実にユニークでして、以前ピアノの練習をしている時「ちびっこピアニストだねー」と言ってみたところ

「ちがうの!ちょっとピアノがうまいだけのふつうのおんなのこなの!」

とも言っていましたので、「普通の女の子」というワードに何か特殊なこだわりがあるようです。

譲れない何かがあるのは良いことです。

 

ということで、いきなり全然関係ない余談で申し訳ありません。前回に続いて、長男の勉強の話をします。

長男の勉強を見ていると結構色んな再発見がありまして、私自身頭の体操になって助かっているんですが。

なにせ私と長男は親子ですので、感じ方も色々と似ておりまして、「昔自分もこういうこと言ってたわ」と思いだすことも多々あります。

 

今、円周率の問題をやっています。円周の長さとか、円の面積とか、幾つか〇を重ねた時のこの部分の面積はいくらかとか、四角形の中に円を描いてこの部分の角度はとか、ああいうそれです。

皆さん覚えてますか?円周率。

 

なにせ私、自分自身は中学受験をしていない上、正直小学校の頃はそこまで算数得意でもなかったんで、結構真剣に考えないと解けない問題とかもあるんです。

塾のバイトをしている時は、どちらかというと学校の授業についていけない子を救い出す方を専らやっていたので、正直受験算数って手ごわいんですよ。侮れません、小学校算数。

いや、「ゆーても円の面積とかだろ?」と思われるかも知れませんけど、例えば

こういうよくわかんない図形の影の部分の面積を求めよ、とか言われると、ちょっと手が止まりません?

少なくとも私は自信を持って止まります。

実際にはこれ、対角線が10cmなんで円の半径は5cmだな、じゃあ一つのレンズの半分の面積は、半径5cmの四分の一円から高さ5cm底辺5cmの三角形の面積を引いた面積の半分だな、みたいな感じで解いていくんですけど。

 

で、やはりなんだかんだで長男は小学生男子なので、やっぱ勉強やりたがらないタイミングもありますし、面倒くさがることもあるんですよ。

多分小学生男子にしては相当勉強に前向きな方だと思うんですけど、それでもぐでーーっとしてしまうことはありますし、ゲームや漫画に逃避することもあります。そりゃ当然あります。

 

で、最近とみにこの円周率絡みの問題を面倒くさがっておりまして。「面倒だからやりたくないーーねえここ飛ばしていいでしょー」とか言うわけです。

聞いてみると、勿論単純に問題が難しいってこともあるんですけど、特に少数が絡んだ計算がたくさん出てくるのが面倒らしいんですね。

ほら、円周率って3.14じゃないですか。昔一時期3だったらしいんですけど、また3.14らしいんです、最近は。

 

この時、実は私、記憶がすげえフラッシュバックしまして。

あーー、なんか私も、昔小学校の算数すげえ面倒くさかったことあったわ、と。確かちょうどこの頃だったわ、と。

私は比較的口数が多い方で、しかも不平不満も割と遠慮なく言うので、勉強の愚痴的なこともぽんぽん言ってました。で、その度に怒られてた訳です。

 

例えば計算が複雑な問題とか、私が「面倒くさい」って言うと、大抵の場合すげえ怒られてたんですよ。子どもの頃から面倒とか言うな、とか。そういう面倒なものを乗り越えないと力がつかないんだ、とか。

 

ただ、一人、その「面倒くさい」って言葉を全然叱らない、というかむしろ褒めてくれた先生がいたんです。言葉はすごい残ってて、ただ担任とかじゃなかったんで迂闊にもお名前を憶えてないんですけど。

 

その先生、昔の私にこう言ったんです。

「面倒くさいって思うのはすげえ大事だ」

「面倒くさいって感じられるヤツは数学の素質がある」って。

「数学者は皆面倒くさがりだ」

「だから、なるべく楽で楽で、なるべく計算しないで済む、手間がかからないやり方を探すんだ」って。

 

それで今の数学ってものは発展してきたんだ、って。

小学男子の「面倒くさい」って言葉をトリガーにここまで熱弁出来る人もあまりいないだろうな、と当時は思ったんですが、その人が教えてくれるやり方って、とにかく複雑な部分を全部潰して、楽に楽に解き方を整理するやり方で。

他の先生は、「複雑な計算を頑張って解くことで計算能力をつける」みたいな方針だったんですけど、その人は全然違うんですね。

「複雑なやり方は適切でないやり方だ、楽なやり方が正しい」っていうスタンスであって、最初から複雑な方法には見向きもしないわけです。

 

私の頭なんてファミコン初期レトロゲームのゲームシステム程度にはシンプルなんで、当時確かに「ああ、これならそんなに面倒くさくない」って感銘を受けまして、それから段々算数が苦手じゃなくなっていったんですけど。

例えばの話、円周率の問題ですと、その先生は「最後まで3.14を掛けるな」って言うんですよ。途中で3.14をかけると面倒になる。最後まで式を整理してから1回だけ掛けろ、って。

 

分かりやすい例でいうと、「6 * 6 * 3.14 * 1/4 + 3 * 3 * 3.14」っていう計算があったとして。

これ、単純に前からやっちゃうと、少数が絡む計算を4回しなきゃいけないんですね。つまり、「36 * 3.14」と、「113.04/4」と、「9 * 3.14」と、「28.26 + 28.26」。これはとーっても面倒くさい。

 

けど、「((6 * 6)/4) + 9) * 3.14」っていう風に整理してから計算すると、少数が絡む計算は「18 * 3.14」の一回で済む。とっても楽で、計算ミスも少ない。

いや、勿論実際にはこんな単純な例ばっかりじゃないんで、細かいところは勘弁していただきたいんですけど、考え方自体はそんな感じです。とにかく楽な方法、シンプルな方法を探す。で、一番楽な状態になってから初めて計算する。

 

今から考えると当たり前のことのような気もしますし、塾とかでは普通にそういう風に教えてるのかも知れないですが。

当時こういう言い方をしてくれる先生、少なくとも私の周囲には他にいなかったんですよ。しかもそれを、普通に受け取ると叱りそうになる、小学男子の「面倒くさい」という言葉をトリガーに教えてくれたんです。

 

そんなことが、ざーーっと脳内をフラッシュバックしまして。

だから私は、長男の「面倒くさい」という愚痴に、その先生の言葉をパクりました。

そのまんまパクりました。

「面倒くさいって思うのはすげえ大事だ」

「面倒くさいって感じられるヤツは数学の素質がある」って。

「数学者は皆面倒くさがりだ」

「だから、なるべく楽で楽で、なるべく計算しないで済む、手間がかからないやり方を探すんだ」って。

それで今の数学ってものは発展してきたんだ、って。

まあ、父さんが子どもの頃の先生に聞いた話の受け売りなんだけどな、って。

 

どこまで納得してくれたかわかりませんが、少なくともその場ではそこそこ刺さったらしく。長男は愚痴を止めて宿題に戻りました。程なく円周の問題は終わりました。

で、当時、私もこの長男と同じような挙動をしたのかなー、と。

 

もしかすると、教えられたことが本当に身になるって、こういうことなのかもなーって思ったんです。

勿論、一言で何もかも解決するような魔法の言葉はありませんし、長男はこれからも散々色んな勉強に苦労するでしょうし、それに対して私も頭を悩ませることになるんだと思うんですが。

 

それでも、かつて自分自身も長男と同じ、面倒くさがりで、難しい問題は嫌いで、宿題にはなるべく手をつけたくなくて。それでも、色んな大人や、色んな友人に助けてもらって、なんとかかんとか学生生活をクリアしていって。

そういう記憶を、自分の子どもたちにも受け継いでいってあげることが、もしかするとなにがしかの恩返しになるんじゃないかと。

 

そんな風に考えたわけです。

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

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(2024/3/26更新)

 

 

【プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

 

(Photo:Fredrik Rubensson