部下と上司の関係を建設的なものにすることは、企業にとって最も重要なことの一つだ。
こう言うと大抵の方は
そんな事はわかっている。あたりまえだ、というだろう。
だが、実践は意外と難しい。
特に成果がかかっている場では、その難しさがあらわになる。
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たとえば営業会議、というのはどの会社でも厳しい雰囲気になる。
技術者や、他の職種ならば「進捗報告」と同じようなものと考えて良いかもしれない。
「今月の売上目標に対しての達成率はどの程度なのか」
という質問に対して、「8割です」とか、成績の悪い人だと「6割です」なんてことが日常茶飯事だ。
結果として、あまり楽しい雰囲気にならないことは、多くの方の同意するところだろう。
なぜこんなことになるのか。
簡単に言えば、企業は構造的に、目標が高くなりがちだからだ。
株主は経営陣へ短期的に株価が上昇することを求め、経営陣は高い業績をあげれば大きな報酬を得ることができる。
双方ともに「無理なく達成できる水準で」と思うメリットはあまりない。
だが、もちろんそこには歪みもある。
「高めの目標」を命令された現場の疲弊だ。
中でも、経営陣と現場の板挟みになる執行役員、部長、マネジャーたちには、状況は厳しい。
経営陣から与えられた目標をクリアしなければ自分の立場が危ういので、目標が高かろうがなんだろうが、現場にはとにかく、あの手この手で目標を達成させるようにせざるを得ない。
「数字をクリアしなければ、自分の立場が危ういのだから、とにかく目標に邁進させる」
と、ある部長は言う。
彼には受験を控えた子供がおり、車や家のローンもある。
会社員の中では「勝ち組」と言える人生なのかもしれないが、残念ながら手を緩めることは許されない。
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そういう事情であるから、営業会議において、上司の部下へ対する口調は、成果への焦りからか、きつくなる。
特に目標未達の部下には、
「行動量が足りない」
「成約率が低い」
「やる気が足りない」
と、部下を責め立てることも多く、吊し上げも少なくない。
彼らも、自分が経営陣に吊し上げをうけるかもしれないのだ。
必死である。
しかも、多くの部下たちは管理職のその必死さに対して、基本的には無関心である。
上司がせっかく売上向上につながるような施策を授けても、
「忙しくてできませんでした」
「うまくいきませんでした」
「まだやってません」
こんな返答が返ってくる。
もちろん、自部門の目標すら知らない部下も多い。
上司はそんな報告を受けるたびに疑心暗鬼になり、ついに
「部下は仕事をサボっているのではないか」
「部下が無能なのではないか」
「部下は仕事が嫌いなのではないか」
と部下を疑いだし、ついには成果の上がらない部下に対して
「なんで行動しないんだ!とにかくやるんだよ!この無能が!」
と思うようになる。
こうなると、もう会議の場で建設的な議論がされることはない。
上司は、「部下がサボらないように見張る人」
部下は、「成果が出なくても、なんとか上司に怒られないように、取り繕う人」
という関係が固定されてしまう。
世の中の八割がたの会社の営業会議は、こんな不毛な状況が延々とつづく。
会議嫌いが多くなるのも、無理はない。
*
しかし、私はいくつかの会社で、これとは全く異なる関係を上司と部下が築いている場面を見た。
つまり、
上司は、「部下が成果を出せるようにサポートする人」
部下は、「成果が出るように、努力する人」
という建設的な関係ができているのである。
私はこのような会社に当たるたびに、非常に興味をそそられた。
なぜこれらの会社は、上述した会社のように、上司と部下の関係が壊れてしまわないのだろうか?
なぜ、いたって普通の社員たちが、成果のために努力を継続できているのだろうか?
実はそこには、ある一つの、共通する特長が見受けられる。
それは部下の
「忙しくてできませんでした」
「うまくいきませんでした」
「まだやってません」
という発言に対する上司の反応だ。
上司と部下の関係が壊れている会社では、部下が上のような発言をすると、
「言い訳するな!」
「やる気が無いからだ!」
「勉強していないからだ!」
と、部下のモチベーションや、スキル、能力のせいにしてしまい、とにかく「精神論」「能力論」に話を持っていこうとする上司が多い。
ところが、建設的な関係が上司と部下にある会社では、上司は「方法論」を話す。
例えば、
「忙しくてできませんでした」という発言に対して、「では、どうすれば時間を作れるか考えよう」と返す。
「うまくいきませんでした」という発言に対して、「どのようにやったのか、ここでもう一度やって見せてくれるかな。改善ポイントを探そう」と返す。
「まだやってません」という発言に対して、「やりたくないのか、時間がかなかったのか、どちらですか? やりたくないなら、やりたくなる方法を考えよう」と返す。
そうして、彼らは部下との関係を建設的になるように、時間を使っているのである。
これは、上司のマネジメント力や、会社の生産性の度合いを示す、良いバロメーターなのだ。
*
上の話をすると、「それはいい会社だ」と感心する方も多い。
そうかもしれない。
しかし、実行している本人たちは、必ずしも「いい会社」を作ろうと思ってやっているわけではなさそうだ。
例えば、一人の部長は、こんな話をしてくれた。
「ずいぶん部下にたくさん時間を使うんですね。」
「ある部下に施策を与える。それが実行されなかったら、もう一度いう。もう一度言ってもできなかったら、多分三回言ってもできない。だから、やれる方法をこちらが考えて与えなければ、それ以上前に進めないだろう。」
「優しいですね。」
「優しい?別に優しいわけではない。」
「何故ですか?」
「要するに、部下の能力に期待しない、ということだ。仕事を前に進めるのが上司の役割では?」
「……」
だが、結果としてその会社の社員は、能力が決して高いとは言えない人物であってもそれなりに働き、成果が出ていた。
私が
「仕事は確かに進んでいますね。」
というと、部長は
「企業というのは、普通の才能もなく、特にやる気もない人を上手く使えるかどうかで、世の中への貢献度が決まるんだよ。優秀な人だけを雇って、成果を上げるのは単なるエリート主義だ。」
と言った。
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(Photo:Kevin Jarrett)