すこし前に
「リモートワークのホントのところ」
と題して、弊社の経験に基づく記事を書いた。
(Books&Apps)
私は結局「もうオフィスは作らない」と意思決定し、リモートワークをするようになった。
こうして弊社は、役員同士も滅多なことでは顔を合わせない会社となった。
上の記事をまとめると、次のようになる。
自社でリモートワークを推進して、メリットだと思う点は2点。
・通勤時間を省けるので、生産的な時間は激増する
・社内外の区別をつけなくなり、外部リソースの活用度が上がる
逆に、デメリットだと思う点は、
・テキストのやり取りが多くなるので、読解力・文書力の低い人はダメ
・監視されないので、意思の弱い人、習慣化能力の低い人はダメ
・「頑張り」を評価しにくい
・自律できない人、未熟な人の育成は難しい
要するに、リモートワークのデメリットをまとめると
「管理が必要な人」
「意思が弱い人」
「未熟な人」
には、まだリモートワークは無理だよ、というメッセージだった。
だがあれから1年半ほどが立ち、突如としてコロナウイルスの影響で、世界の働き方は「リモートワーク」に大きく傾いた。
すると、リモートワークの知見も、かなりの数入ってくるようになる。
そんなとき、昔、記事を書いたことのある、株式会社キャスターの方から
「リモートワークについての記事を書いてほしい」との連絡をもらった。
参考:
スタートアップの創業者や個人事業主が「時間の使い方」を極めるために利用するサービスとは。
キャスタービズは、スタートアップの創業者や個人事業主に、最も貴重な資源である「時間」を確保してもらうことに貢献するサービスを行っており、大きな成果をあげている。
実は、キャスターは、会社のミッションが「リモートワークを当たり前にする」であり、コロナウイルス禍のはるか前から、ほぼ全員がリモートワーカーだ。
(画像:株式会社キャスター コーポレートサイト)
最近リモートワークを始めたばかりの付け焼き刃ではない。
リモートワークは、会社のミッションをかけた、大真面目な推進が行われ、「リモートワーク推進」に関するコンサルティングサービスも提供している。
Caster Anywhereのコンサルティングサービス
週に一度のオンラインミーティングとチャットでの相談でリモートワークにおける課題を一緒に解決していきます。
ヒアリングによるお客様の現状把握のうえで、同じ課題を解決してきたキャスター経営陣がハンズオン方式で提供します。コンサルティングだけにとどまらず、各専門領域において、リソース提供も可能です。
しかし、現実的にはどんな企業も、そこに属するメンバーの能力には凸凹がある。
私が前に書いたことが正しければ、「全員がリモートワーク」ということは不可能ではないにしろ、かなり困難なはずだ。
一体、どのようにリモートワークの運用をしているのか、気になった。
数百名のリモートワークにおける評価基準
代表の中川さんに話を聞くと
前提として業態として、リモートワークが合わない会社があるのは事実だという。
それは「人が直接、人に対してサービスをする事が必要な業界」だ。
具体的には
・介護
・飲食
・ホテル
などの産業で、こういった職場にリモートワークは向かない。
だが一方で、「オフィスワーク中心」の会社であれば、100%リモートワーク可能だ。
中川さんは
「リモートワークにまつわるデメリットは、ほとんどは思い込みだと思います。」
という。
「技術的要素は、すでにほぼ解決しています。むしろ、リモートワークの普及を妨げているのは、「新しいことをやらなくても困らない」という価値観です。逆に、価値観に根ざすものだからこそ、日本ではリモートワークは普及してこなかったのかもしれません。」
だがコロナウイルスの影響で、はからずもリモートワークには、労使の双方に確実なメリットがあることが判明した。
社員側にとっては、
・「通勤時間」という無駄がなくなることで、仕事の時間効率が上がる
・満員電車に乗らずとも良い
・柔軟に仕事ができる
そして、経営側にとっては
・条件面で競合他社より「採用」が有利になる
・地域にとらわれず「全国」から良い人材を採用できる
・オフィスの家賃という大きな固定費を削減できる
・社員の通勤の交通費を削減できる
しかし、こうした話に対して、「デメリット」を強調する方もいる。
様々な指摘があるが
「テクノロジーで解決可能」というもの、そして
「リモートワークかどうかと関係なくない?」というものを除くと、究極的には、この2つに話は集約される。
・監視していないとサボる人がいるのではないか
・仕事ぶりを評価できなくなるのではないか
実際、Twitter上では、こんな言及もある。
最近リモートワークがトレンドになってるけど、うちは2年前からリモートワーカーを雇ってる。
その結果を踏まえたメリットデメリット↓
メリット=好きな時間と場所で仕事できるのでストレスが軽減されるデメリット=サボるヤツもいる
対策はクビにする— こまっちゃん@プログラミングは誰でもできる (@komatsufree) March 15, 2020
■リモートワークのデメリット
・行動を管理しにくい
・評価しにくい
・サボるんじゃないか
・チームの一体感がなくなりそう結論、リモートワークじゃなくても難しい🤔
正しく行動管理して
正しく評価して
全員が仕事にコミットして
さらに一体感溢れる会社なんてあるの?笑— 細川 貴裕 / 法人営業×再現性 (@hosokawa_sales) February 23, 2020
これらの指摘は、(対策には賛否があるだろうが)私が数年前に記事で提示したことと、ほぼ同じだ。
そこで、私は中川さんに聞いた。
「リモートワークのこうしたデメリットについては、どうお考えですか。」
「もちろん、成果を測定する基準を作って、成果だけで評価することで解決します。むしろ、「見えない」と言っていることこそ、言い訳ではないかと。」
「具体的には?」
「本当に会社に居るだけで、仕事ぶりが見えるんですか?基準を決めずに、どうやって評価しているんですか?と思います。」
「例えばどのように行うのですか。」
「ウチでは、2種類の考え方で評価します。」
「2種類?」
「一つは、アシスタント業務を行う人たち。彼らは終えた仕事の量で、評価が決まります。同じ時間なら、未熟な人は少ない量しかできない、高技能者はたくさん仕事をこなせる。」
「もう一つは?」
「もう一つは営業やコンサルタント業務のように「売上」「契約の継続」で評価される人たちです。こちらは金額のみで評価します。」
「それ以外は?」
「ありません。」
「「やる気」とか「態度」とか「能力」とか「勤怠」は、評価の対象にならない?」
「なりません。そもそも、リモートワークではそういったことは無意味です。」
「成果だけで評価」は人にとてもやさしい
これを「社員に冷たい」と思う人もいるかもしれない。
しかし、本当にそうだろうか?
話を聞いて、私は
「成果でしか評価しない」は、実はとても人に優しいのでは?
と思ったのだ。
「成果でしか評価しない会社」って、実はとても社員に優しいのかも、と取材をしていて思った。
だって、「何をすれば評価されるのか」が、めちゃくちゃわかりやすいから。
昔、客先で
「何をすれば給料上がるんですか」
って上司に噛み付いていた社員を見たけど、
その答えがもらえるってことだよね— 安達裕哉(Books&Apps) (@Books_Apps) March 18, 2020
私が以前人事コンサルタントをやっていたときに、現場でよく揉めていたのが「成果」の不明瞭さに対するものだった。
「一体、どうすれば私は評価されるんですか」
「どうしたら給料が上がるんですか」
「こんなに成果を出したのに、なぜ彼が昇進して、私がそのままなんですか。」
こういった不満が、人事評価のときの定番だ。
それに対して、経営側は
「成果だけが評価の対象ではない」とか
「勤務態度が悪い」とか
「和を乱す」とか
「今回はごめん、年功なんだ」とか
そんな上司の胸三寸で決まる、「勤務態度」などの曖昧な指標を「説明して説得する」という、不毛な人事評価を行ってきた。
これが「人に優しい」わけがない。
自分がなんのために働いているのか、どうしたらパフォーマンスが改善されたとみなされるのか、そうした重要な事実を知らされず、上司の主観や、気分一つに左右される働きかたが、「人に優しい」とは、とても思えない。
むしろ、それこそが、パワハラの温床だ。
「どうにもならない人」なんて、一人もいない
だが、私も最後の解消できない疑問があった。
「できない人」にはめちゃくちゃ辛いシステムなのでは、という疑問だ。
「中川さん、どうなんですか。」と聞いた。
すると、中川さんは言う。「「できない人」って、いるんですか?」と。
「多くの人を見ましたが、「どうにもならない人」なんて、一人もいませんでした。」
「というと?」
「たまたま、今やっている仕事があっていない、お客さんとの相性が悪くて成果が出ない、そういったことはあれど、「真に何もできない人」っていうのは、見たことがないです。」
「なるほど」
「成果が出ない状況になったら、上司が仕事の配置や種類を変える、サポートを入れる、その人がなんとか成果を出せるように、全力を尽くす。それって会社と上司の役割じゃないでしょうか。別にリモートワークに限らないかもしれないですけど。」
なるほど。
私は「成果が曖昧」な会社をいくつか、思い出した。
成果が曖昧な会社であっても、もちろん成果が出ていない人に対しては「なんとなく、あいつはダメだよね」皆、思っている。
だが、それは明確にされず、議論の対象にもならないので、逆に手が差し伸べられるとは限らない。
それこそ、「腫れ物に触るように」皆がその人物に接している。
それが、「優しい会社か」と言われると、かなりの疑問が残る。
逆に、成果が明確になれば、「支援が必要」と、誰の目にも明らかになる。
会社も、明確に「サポートが必要」とみなす。
それは、必ずしも悪いことではないのだろう。
さらに言えば、そもそも会社は
「できない人を傷つけないようにする」ではなく、「できない人を、できる人に変える」ことを中心に据えなければならない。
そのためには、正確に現状を把握することは、絶対に必要だ。
「リモートワーク」は比較的新しい働き方であることは事実だ。
だが、本質は「リモートワークするかどうか」ではない。
「和を重んじて働く」から、「成果を中心にして働く」へ、態度の変容を、企業と経営陣は迫られているのである。
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リモートワークが急に始まり、困っている会社。
リモートワークへうまく適応できていない社員が多い会社。
自社のリモートワークが適切なやり方かどうか困っている会社。
一度、キャスターさんの、リモートワーク診断を受けてみてはいかがだろうか。
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【著者プロフィール】
◯Twitterアカウント▶安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者( tinect.jp)/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
◯有料noteでメディア運営・ライティングノウハウ発信中( note.mu/yuyadachi)
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◯ブログが本になりました。