ひろゆきさんの『1%の努力』(ダイヤモンド社)という本を読みました。
ひろゆきさんがこれまでの人生で得てきた「最低限の努力で、効率よく結果を残し、楽しく生きるための知見」を7つのエピソードをもとにまとめたものです。
僕のひろゆきさんに対するイメージは、「頭はものすごく良いのだけれど、身も蓋もない人(何事も理屈で解決しようとする、情に欠ける人)」だったのです。
ひろゆきさんが間違っている、とは思わないのだけれど、僕にとっては付き合いづらい人なんだろうなあ、と。
まあ、実際に会う機会もないでしょうけど。
そう思いつつも、ひろゆきさんの言葉には、魅かれるところがあって、ときどき、ひろゆきさんの書いた本を読んでいます。
この「1%の努力」なのですが、これまでのひろゆきさんの著書のなかでは、人を煙に巻くような部分が少ないというか、これまでの自分自身について、そのまま語っているという印象を受けました。
僕はおすすめの本を聞かれると、『銃・病原菌・鉄』(草思社)を迷わずあげる。
その本は、「ヨーロッパやアメリカの白人が世界を席巻したのはなぜなのか?」という問いに証拠を交えながら答えを出していく。結論を書くと、「ヨーロッパからアジアに続くユーラシア大陸が東西に長かったからヨーロッパの人が覇権を取った」となる。
エジソンやアインシュタインのような天才が出てきたからではなく、大陸が横に長いと、小麦や米や芋やトウモロコシなど多くの穀物ができ、牛や羊や馬などの家畜も多品種が育つ。それによる差が大きくなっていき、南米やアフリカ大陸が太刀打ち出来ない技術や文化に発展した。
そこから僕が導き出した答えは、「人類の努力は、ほぼ無意味だ」ということだ。
いくら人間が頑張っても、大陸の形を変えることはできない。
僕の生き方は、そういう結論から逆算するようにしている。
ひろゆきさんは、人生に「生きる意味」は存在しないという結論に達して、「じゃあ死ぬまでにできるだけ楽しく暮らすほうがいいな」と思うようになったそうです。
もちろん、これは人類全体での話であって、いまの日本で生きている個人にとっては、人生の要所で、どううまく立ち回るか、が大事であり、それが「1%の努力」ということになるのです。
「結局は運」だからと投げやりになるのではなくて、「だからこそ、なるべく効率的な努力をして、楽しく生きよう」ということなのだと思います。
みんな、底辺から這い上がった話が好きだ。ツラくても歯を食いしばって我慢してきて、そして成功をつかみとる。そんなハッピーエンドを好む。
でも、現実はそうじゃない。
高い財布を買うと金持ちになるのではない。逆だ。金持ちが高い財布を持っているだけだ。
そうやって因果関係の理解を間違えると、人は不幸になってしまう。
ただ、能力があるのに努力しない人がたまにいる。
あるいは、「環境」と「遺伝子」の現実を知った上で、自分のできないことを受け入れながら、ちょっとだけ考え方を変えるだけで幸せになれる人もいる。
彼らに向かって、キレイゴト抜きのアドバイスができればいいなと思う。それは、大きな船の舵を切って、1度ずつ徐々に進行方向を変えるような作業だ。
ひろゆきさんは、この本のなかで、7つのエピソードを通じて、「この条件にあてはまる、幸せになれる可能性のある人」へのノウハウを開示しています。
逆に言えば、こういう考え方は受け入れがたい、自分は努力すれば絶対に成功すると信じている(あるいは、すべての努力は無駄だ、と思っている)、という人には、縁がない本でもあるのです。
この本には、これから自分の人生を切り開いていこうとする若い人たちにとって参考になる知見がちりばめられています。
ひろゆきさんは、学生時代にさまざまなアルバイト(コンビニやスーパーの総菜売り場、ラーメン屋の店員や裏ビデオのチラシのポスティング、携帯電話会社の電話応対、塾講師、ピザの宅配など)をしてきて、その経験がのちに役立ったと仰っています。
ツラい経験はムダか、ムダじゃないか、という議論がある。
ここまで語ってきたように、アルバイトの経験はいまとなってはムダにはなっていない。
「修復可能か?」という判断軸に照らし合わせるなら、学生時代のバイトは学生時代にしかできないから、二度と取り戻せない。
その点においてムダではなかったと言える。
それに、肉体労働や精神労働などを一通りおこなっておくことは、「自分にとってのストレスのポイント」を知ることになる。
ストレスを減らすことは、幸せな人生を送る上でなくてはならない発想だ。
たとえば、無心になって体を動かすことは案外ツラくなくて、コンビニでヒマな時間をボーッと過ごしているほうが、僕にとってはストレスが大きかった。
おそらく、それとは別の人もいるだろう。
じっとしていることがストレスかどうかは、幼少の頃を思い出せばわかるかもしれない。机にじっと座っていられたタイプか、すぐに立ち上がったり周囲に話しかけたりするタイプだったか。
これは別に、どちらが優秀ということではなく、自分のタイプと仕事のタイプが完全に一致することが大事だ。
それが合っていないまま、ツラい仕事を続けていると、人生はどんどん不幸になっていってしまう。
人生において、なるべく早いうちに、「自分にとってのストレスのポイント」を知ることって大事だと僕も思います。
僕もそれなりに頑張ろうと思って医学部を出て医者になったのですが、仕事をはじめていちばんつらかったのは、緊急の呼び出しや電話での連絡が、いつ来るかわからない状態に24時間置かれていて、気が休まる時間がないことだったんですよ。
病気の患者さん、とくに入院が必要になるような人には、本当にいろんなことが起こるのです。
実際にやってみるまで、僕は、その「常に何かに拘束されていること」がこんなに自分にとってストレスになるとは、思ってもみませんでした。
そういうのって、実際に働いてみるまで、わからないんですよね。
「勉強ができるし、安定した職業だから」ということで、医学部に入ってくる人は多いです。
けれど、臨床で仕事を続けていくのに必要なのは、頭の良さよりも、いつ呼び出されても応じられ、睡眠不足でも不機嫌にならない体力。
そして、理解不能のクレームをつけられたり、上司にボロクソに言われたりしてもめげないメンタルの強さや気分転換の上手さなのです。
最近、テレビで豊田真由子さんを観たんですよ。「このハゲ〜!」で一世を風靡した豊田さん。
あの罵声を聞いて、キツい性格の人なんだろうなあ、と思っていました。
でも、このあいだお昼のワイドショーに出ていた豊田さんからは、あの暴言の雰囲気は感じられず、しごく真っ当な受け答えをされていました。
そりゃまあ、ワイドショーでいきなり暴れ出す、なんてことはないのでしょうけど、僕はそれをみて、「ああ、国会議員というのは、豊田さんにとってストレスがかかる仕事だったんだろうな」と感じたのです。
個人差はあるにせよ、ストレスを強く感じる環境にいる人は、イライラして強い言葉を吐いたり、周囲にあたったりしがちです。
僕自身も、精神的にも肉体的にも厳しい病院で働いていたときには、ずっとピリピリしていたのを思い出します。
プロとして、それじゃダメなのですが、それを自分でコントロールするのは、ものすごく難しいのです。
学生時代に、いろんなアルバイトをしてみて、向き・不向きというか、「この仕事に自分がストレスを感じる部分はどのくらいあるのか」を探ってみるのは、すごく有益だと思います。
どんなに高い理想や夢があっても、向いていない、自分にとってストレスが大きすぎる仕事は、避けることをお薦めします。
「やりがい」がありそうな仕事ほど、向いていない人が就いてしまうと、周囲への悪影響も大きくなりますし。
努力か、遺伝子か、環境か、どれが1つが100%ということはあり得ない。
ただ、一代で成功したスポーツ選手や起業家には、「努力100%」のバイアスが染み付いてしまっている。
これが実にやっかいだ。
自分が成功できたことを、100%、自分の実力と思ってしまう人は、他人にもそれを押し付ける。
熱い言葉を本やブログに書いたり、ドキュメンタリー番組で話したりする。
メディアもそれを求める。
「成功した秘訣はなんですか?」
「死ぬほど努力したからです」
そんなやりとりは、これまで何百、何千とされてきたことだろう。
僕のように、「たまたまです」と答えてしまっては、メディア受けしないし、本にもならない。
本書では、「たまたまうまくいった」という正論を出した上で、それでも「何かちょっとでも考え方によって変えられた部分」として、1%の努力という落とし所を探ってきている。
そのへんは、ちゃんと読者が判断できるだろうと思うので、それに委ねたい。
いずれにしても、「100%の努力」を言い出す人を認めてしまうと、人にそれを押し付けることも容認することになってしまうので、僕は徹底的になくしたいと思っている。その押し付けによって、パワハラや過労死が起こるからだ。
あるいは、アルコール依存症や薬物依存症は、意志の力ではどうにもならない。
手に入りやすい経路を絶ったり、医療を受けられるようにしたり、治療後に復帰できるような環境を整えたりすることが必要になる。
努力が絶対に成功を約束するわけではないし、パワハラや過労死につながることもある。
「人に押し付けてはいけないけれど、自分自身に対しては『1%の努力』を意識して生きていく」くらいが、ちょうど良いのかもしれませんね。
これから自分の仕事を選んでいく、中学生や高校生に、読んでみてもらいたい一冊です。
参考リンク:「医学部に進んでしまったけれど、医者にはなりたくない」という増田さんへ(いつか電池がきれるまで)
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システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、 メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。
岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
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(2026/01/19更新)
【著者プロフィール】
著者:fujipon
読書感想ブログ『琥珀色の戯言』、瞑想・迷走しつづけている雑記『いつか電池がきれるまで』を書きつづけている、「人生の折り返し点を過ぎたことにようやく気づいてしまった」ネット中毒の40代内科医です。
ブログ:琥珀色の戯言 / いつか電池がきれるまで
Twitter:@fujipon2
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