少し前に、総務省管轄の地域おこし協力隊員が、「共同体から村八分にあった」と述べるニュースがあった。
移住失敗”の村となった別子山、再び「よそ者」を受け入れるのに必要なこと
「やばい」「嫌がらせ」。Google検索窓に「別子山」と打ち込むと、こんなワードがサジェストされる。
愛媛県新居浜市の別子山(べっしやま)地域に移り住んだ地域おこし協力隊員が配信したYouTube動画が話題を呼び、この旧村地帯はいま、世間からそんなイメージを抱かれている。
あるいは最近、別の田舎町が「都会風を吹かさないよう」「品定めされることは自然」などと書かれた、「移住の心得七か条」を掲げたのも、全く同じ構図だ。
「都会風」との表現に滲む移住者への疑念。福井県池田町が広報誌に載せた“移住の心得七か条“に「そりゃ衰退する」と納得の声
福井県池田町の広報誌に掲載された、移住者に向けた提言「池田暮らしの七か条」の内容や表現が酷すぎると、批判の声があがっている。
田舎のこうした人間関係が嫌だったので東京に出てきた、という人は、私の身の回りにも結構いる。
彼らはこういったニュースを見て、「あるあるだよね」言っていた。
だが、都会がこうした論理を持っていないかと言うと、全くそんなことはない。
都会は地域コミュニティは貧弱だが、「企業コミュニティ」は非常に強力であり、「経営方針」や「採用・評価基準」に基づく排除を行う。
企業は、方針にそぐわなかったり、成果、働きぶり、人間性、コミュニケーション能力、年齢(定年など)などが基準を満たさなかった人を「排除」するのだ。
「できなくても教えを乞う態度があればまだいい。しかし「教えてもらって当然」という態度の人間には我慢ならないので、放置してました。」というのだ。
もちろん、日系企業だけではなく、外資系企業も例外ではない。
極めて優秀な人材を採用しようとする企業ほど、じつは「排除の論理」は厳格に運用されている。
例えばそういう会社では、知能や能力、スキルによって選別・排除が行われる。
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では、「誰でも無制限に受け入れます。絶対に排除しません。」という組織やコミュニティはあるのだろうか。
政治結社はどうか。
これも、全くそんなことはない。
例えば、共産党が党員を除名した、というニュースを少し前に見た。
創立101年目を迎えた共産党が大揺れとなっている。
年明けに元幹部で現役の共産党員が公然と党首公選制の導入を求め、同党執行部が除名処分としたことが、他政党だけでなく、多くのメディアも含め、国民レベルでの厳しい批判を招いたからだ。
内部でどのようなやり取りがあり、除名に至ったのかはわからない。
党の指導者は「政治的な警告もしたが、反省をしないので除名以外ないという判断をした」と述べたそうだ。
では宗教組織はどうか。
もちろん、そんなことはない。
例えば寺院では「檀家」という制度があるが、お金を払えなければ当然、お墓は撤去されてしまう。
キリスト教では、内部の権力闘争で、11世紀に「カノッサの屈辱」という、教皇が皇帝に対して破門をちらつかせ、脅して言うことを聞かせる事件があった。
現代でも、宗教組織は「破門」をちらつかせて脅すのは常とう手段だ。
人工妊娠中絶支持を続けるなら「聖体の秘跡」に参加禁止と警告
では「国」というレベルではどうか。
例えば日本では、国籍法に定義された「日本人」に当てはまらなければ、日本人として扱われない。
誰でも日本人として受け入れるわけではない。
では、「他のルールはないのか」と言われたら、そうではない。
日本人は、憲法で定められた3大義務(教育、勤労、納税)を果たさなければならないし、重大な法律違反があれば、社会から隔離される。
つまりいかなる組織、コミュニティにおいても、「寛容さ」は「無制限」ではない。
大っぴらにはあまり語られないかもしれないが、ルールを守り、共同体の規範に従い、コミュニティの発展に寄与して初めて、一員だと認められる。
コンビニで「私は消費税を支払いたくない」とゴネても、警察を呼ばれて排除されるのがオチなのだ。
それがイヤなら、一人で生きるか、自分がルールを決定できるコミュニティを立ち上げるしかない。
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少し前に、イェール大学の成田悠輔が、「高齢者は集団自決すれば良いと語った」という報道があった。
これについて、「高齢者に自決を迫るなんて、とんでもない」と、多くの批判が集まっている。
私はもちろん、「70歳になったら自決してください」と言われたくない。
だからこの意見には、倫理観うんぬんの前に、「自分がされたらイヤだ」と言う理由で、賛成できない。
だから、保険として多少のコストは我慢する。
が、自分は「排除」に力を貸していないと、本当に言えるだろうか。
職場で「この人のせいで仕事が遅れる、皆が迷惑する」とされる人を、歓迎できる人は殆どいない。
その人のコストを負担するのに限界があるからだ。
仕事が滞ったり、品質が低下したりして、皆がそう思い始めたら、会社は、強権を発動してその人をなんとかする。
配置転換でなんとか「部門からの排除」で済む場合もあるが、中小零細では、職場は一つしかない場合も多く、その時はクビになる。
私は「企業」が組織の健全性を保つために、多くの人を排除してきたのを見てきたし、時には「人事評価」で改善の見込みがない人に、退職を勧めたこともある。
老人の問題も同じだ。
極端な事例ではあるが、例えば
「見知らぬ老人に年金を渡しているせいで、自分の子供にコストがかけられない。年金を減らせ。」
は、許容されるだろうか。
「見知らぬ老人に年金を渡しているせいで、貯金ができない、年金を減らせ。」
は許容されるだろうか。
どちらも意見が分かれるだろう。微妙だ。
つまり、こうだ。
資源が潤沢にあり、構成員が負担するコストが気にならない範囲であれば、自分の保険のために「許容する」と言う選択肢がとられる。
だが、受け入れコストが許容値を超えると、コミュニティの中で「維持コストの高いメンバーを排除する」という選択肢が採用される場合がある。
事実、生物学者のジャレド・ダイアモンドによれば、貧しいがゆえに「嬰児殺し」「老人遺棄」を許容する社会は、人類史上、決して珍しくない。
そのような社会では、奇形や先天性虚弱は生まれてすぐに殺されたし、上の子が生まれて2年しか経たないのに、下の子が生まれてしまった場合は、「連れ歩けない」ので、下の子は殺された。「老人や病人」も同様である。
クチンギという名のアチェ族の少女から得た、つぎのようなコメントを記している。「[生まれた順序で]私のつぎ[兄弟]は殺されました。出産の間隔が短かったからです。私がまだ小さかったので、母がその子を殺しました。
(中略)
みなが準備をするなか、口もきけぬほど病気で衰弱し、ハンモックから動けなくなっている中年の女性がいた。あの女性をどうするつもりか、私は首長に尋ねた。
すると、首長が、その女性の夫を私に紹介してくれた。そして、その男が私にいった。妻は病が重くてひとりで歩けない。いずれにしても助からないんだ。だから、この場に残されるだろう。
そして翌朝、出発のときがきて、私は一部始終を目撃した。集団の人々は瀕死の女性に特段のわかれを告げることもなく去っていった。夫でさえ、さよならも告げずにいってしまった。
女性には、焚き火と、水の入ったひょうたんと、それに、わずかばかりの身の回りの品が残された。彼女はほとんど何もない状態で置き去りにされてしまったわけだが、病は重く、彼女に文句をいう力はなかった
メンバー全員の安全を追求すればするほど、コミュニティが負担するコストは高くなり、全体に負荷がかかる。
それを負担できない社会は、一部のメンバーの「排除」あるいは「無視」を採択する。
*
日本は昔より確実に「貧しく」なってきている。
つまり今後、「コストの許容値」をめぐっての争いが起きる可能性が、非常に高い。
だから、webで賛同の声もある「老人は集団自決」の発言は、コミュニティが使えるリソースの減少とともに力をつけてきた、「排除の論理」の先鋒なのだ。
先述したジャレド・ダイアモンドは以下のように「高齢化社会の懸念」について述べている。
老人に生きる術がなくなってしまうというわれわれの世界は、もしかして伝統的社会へ逆戻りしている世界なのだろうか。伝統的社会の人々同様、われわれにもまた、人生の最期を迎えるにあたり、自殺幇助、自殺の推奨、安楽死などといった選択肢が与えられるのだろうか。私には、そのようにも思えてしまうのである。
もちろん私は、これらの方法を推奨しているわけではない。ただ、このような話が最近、以前にも増して話題になっており、こういった選択肢についての議論が取り上げられる機会が立法府や裁判所において増えていることに気づいたのである。
実際、高齢者の持つ「数の力」は、きれいごとだけで、解決できるものではない。
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システム開発やITコンサルティングを経て、
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現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。
岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
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(2026/01/19更新)
【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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