以前にもご紹介した、ノーベル経済学賞受賞者のフリードリヒ・ハイエクは著作の中で色々と面白い事を主張している。
今回はサラリーマンにありがちな、「給料を下げるな」という要求に対して、フリードリヒ・ハイエクがどのように言っているかを取り上げようと思う。
例えば企業の業績の低迷などに対して、「社員の給料に手を付けるのは一番最後」というような主張がある。もちろん主観的には正しい。給料が下がることは従業員のモチベーションに対しての影響が大きいからだ。
例えば、「ルールを変更しよう」「制度を変えよう」という提案に対して、それまで「絶対に必要だ」と賛成していた人が、「自分の給料に影響が出る」と知った途端、態度が一変するということは非常に多かった。
しかし、ハイエクはこれに対して「業績が悪ければ、給料を下げるべきだ。そうしなければ、従業員の「職業選択の自由」が制限されてしまう」と述べる。
どういうことか。彼の著書、「隷属への道」にこのようなことが書かれている。少し長いが引用する。
”所得の減少は、避けられるにこしたことはないが、競争社会では日常的に発生するものであり、(中略)
こういう事態に対して、所得の減少が発生しないように保障せよと言う要求は、「正当な」報酬への要求、つまり個人の努力の客観的な成果ではなく、その人が主観的に考える功罪と見合うような報酬を支払えという要求の、別の表現なのである。
だが、このような保障や正義は、個人の職業選択の自由とは相入れないものだとしか思えない。
どのような体制であれ、様々な商売や職業に誰が携わるかということについて、個々の人間の自由意志が尊重されなければならないとするなら、
そこで支払われる報酬は、それぞれの働きが社会の他の人間に対してどれだけ有用か―例えばそれが自分の働きに対する個人の主観的な功罪の評価とはまったく相反するものだったとしても―ということに対応して決められなければならない。
そのようにして決定された報酬は、一般には当人の努力や意欲と釣り合うことが多いだろうが、どんな体制であれ、いつでも必ずそうとは限らない。
たとえば、ある商売ないしは特殊技術が、予期し得ない諸般の条件の変動によって有用性を失ってしまうという、しばしば見られるケースでは、個人の努力と結果の不釣合いは明らかであろう。
(中略)
ある人が、当人の失敗でもないのに、また、熱心な努力と卓越した技術にもかかわらず、所得の大幅な減少に苦しんだり、無残に希望をくじかれたりすることは、もちろん我々の正義感からすれば耐え難いものがある。
だから、そういった被害者たちが、不当な仕打ちから救ってくれるよう国家に介入を求めた時、広汎な同情や支持が集まるのは無理の無いことである。
(中略)
しかし、仮にも個人の職業選択の自由が保証されるべきであるならば、一定所得の確保を全員に保証することはできない。また、ある人々に所得の保障をすれば、それは他の人々の犠牲によってのみ可能な特権となり、したがって他の人々の保障は必然的に減少することになる。
逆に言えば、一定不変の所得を全員に保障できる唯一の方法は、職業選択の自由を完全に廃止することのみである。ということは、容易に理解しうることである。もっとも、正当な所得を全員に保障することは、目標とすべき理想とみなされているものの、真剣に試みられることはないものである。
今なされているのは、そういった保障を断片的にこのグループへ、あのグループへと与えることでしかなく、その結果、蚊帳の外の人々はますます不安定な状態に置かれていくようになるのである。
だからこそ、特権としての保障はますます垂涎の的となっていき、人々は争ってこれを求めるようになるのであり、ついにはそれを獲得するためにはどんな代償も―自由という代償でさえも―惜しまない、というほどになったとしても、何ら不思議なことではない。”
企業は本質的に不安定なものである。10年も経たずに商品は陳腐化し、移り気な消費者や取引先は去っていく。
ところが、人生はそれよりもはるかに長い。その人の人生を、「企業が保障する」と言うのは、もはやありえないことのように思える。
「給料が安い」と嘆く前に、その業界や企業から去るべきだ。落ち目の会社、業界にいても何も良いことはない。さっさと転職しよう。
自分で技術を身に付け、努力し、自由に職業を選択できなければ、結局は「国家に隷従」するだけとなる。
「職業選択の自由」とは努力と引き換えに、手に入るものということだ。
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(2025/6/10更新)