経営理念を持つ会社は多い。それを重視して経営をしている会社もそれなりにある。

 

しかし、私の経験から言って「経営理念」をきちんと言えて、意味を語れる社員は全体の10%もいれば良い方ではないかとおもう。

社員は経営理念を知らず、それを重視しているのは経営者だけ、という会社のほうが圧倒的に多い。

 

試しに会社であなたの隣の席に座っている人に経営理念を聞いてみると良い。多分覚えていない上、多くの人は存在すら知らないだろう。無論、例外もあるが、多くの従業員にとっては「経営理念」は形だけの存在である。

 

だが、経営者は経営理念を好む傾向にある。理念を推進し社員の向かう方向を示せば、業績も上がると思っている。

しかしこれはとんでもない勘違いで、実際は逆である。

 

業績が良く、利益が出ており、社員がある程度現状の仕事と給与に満足していて、そこで初めて経営理念が意味を持ってくる。

次のステージに会社を押し上げるために、経営理念が必要となり、意味を持ってくる。

 

業績が平凡であったり、社員の待遇が良くない会社は、「経営理念」を議論する前に、商品やマーケティングなどの事業を議論することに時間を使ったほうがはるかに有意義だ。所詮、理念で飯は食えない。

もちろん例外もある。給与が低くても(あるいはなくても)スタートアップなどで莫大な見返りを皆が信じているならば、待遇によらず経営理念だけで会社を推進できる。

あるいは、カリスマ的指導者が理念を精神的支柱として用いているケースも有る。皆、夢を食べて生きている状態だ。これはこれでひとつのやり方だが、宗教でもない限り、そう長くは持たない。

 

 

企業における経営理念の本質は、今、業績の良い会社が、皆が満足しきってしまわないように、金銭的なものだけで満足し、組織が停滞しないように、次の目標を与えるため使われることにある。

業績が悪いのに、給与が安いのに、理念で会社がまとまることはない。歴史が証明するように「貧すれば鈍する」は、正しい。良い事業を持たずに、「理念」を語る経営者は、単なる冷笑の対象でしかない。

 

 

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(Photo:Parg