結果が出なかったとき、「努力しました」と報告を受けることがある。
結果が出るかどうかは時の運もあるので、「結果が出なかったから」といって必ずしもその人が努力を怠ったとは言えない。
また、新規事業の立ち上げなどはむしろ成功のほうがはるかに少ないので、「結果が伴わなかった」「失敗した」というだけのことで叱責したり、責任をとらせていたら人材はすぐにいなくなってしまう。
真に叱責すべきは「手を抜いた」「怠った」「考えなかった」などであることも多い。
したがって、「結果は伴わなかったが、努力はしていた」ことに対しては次のチャンスを与えるべきである。
塩野七生著「ローマ人の物語」において、古代ローマ軍は戦争において「敗軍の将」は敗北そのもので責任を取らされることは少なく、むしろ「名誉を汚した」「勇気を見せなかった」ということにより罰せられていたことが書かれている。
逆にローマに敗れた国々、たとえばカルタゴは敗戦した将を処刑してしまったため常に将の人材に不足していた。
現代の企業などの組織においても、それは全く同様のことが言える。
だが、本人が「努力した」と思っていても、「それが努力したと言えるかどうか」は、注意深く吟味しなければならない。
実際、本人は努力と思っているが、それは必ずしも「努力」とはいえないことがよくある。
特に「一つのことを地道に長い間一生懸命やってきた」ことを努力と言う方がいるが、これは努力の必要条件であり、イコール努力では無いことに注意が必要だ。一つのことを続けるだけではダメなのだ。
では、努力に必要な条件とは何だろうか。
私の観察では、「努力」は次のことをすべて実行していて初めて努力といえる。逆にこれらの条件を満たしていなければ「単に頑張っているだけ」で、正しい努力とはいえない。
1.「一番重要なこと」の発見
努力は常に「一番重要なこと」に対しての取り組みでなければいけない。さもなくば無駄に時間と労力を費やしている事になる。
例えばマーケティングの担当者がいて、新規商品の販促活動を任せたとする。彼が努力しているかどうかは簡単に判別できる。
単純に「成果をあげるために最も今重要なやるべき事はなにか?」と聞けばよいのだ。具体的に、たとえば
・まず◯◯という地域で◯人以上の顧客を作ることです
・チラシの質を。反応率が◯%になるまで高めることです
・既存顧客からのリピートを◯%もらうことです。
こう言った形で答えられなければ「努力」は口だけである。
もちろん一番重要なことを外していることもある。重要な事は途中で変化することもある。
しかし、常にこれを念頭に置いて動いているのと、そうでないのとでは雲泥の差である。
2.施策の実行
考えたことは確実に実行に移されなければならない。
これも外部からの判別は簡単である。どれだけのことを「やるべきこと」として考え、どれだけを「実際にやりきった」のかを見せてもらい、あるいは聞くだけで、判別できる。
やられていないことが多いとき、あるいはやるべきことが少なすぎる場合、努力しているとは言えない。施策や作戦のリストを見せてもらおう。
そこに書かれているタスクの一覧を見れば、ひと目で努力しているかどうかがわかる。
3.成果が出ているかの監視
成果が出ているかどうか、自分自身で常に監視する必要がある。外部からそれを判別するには、3つのことを聞く。
- 成果の定義は?
- 成果が出ているか?
- 成果が出ていない時は、何に原因があるか、分析しているか?
非常にシンプルであるが、これを怠っている人は少なからずいる。
上の3つ全てに対しきちんと対応していれば、その人は「努力している」だろう。ここまでやり、結果が出なければ単に「能力不足」、もしくは「そもそも出発点が間違っている」というだけである。
この場合、その人物を罰することなく、異動によって適切な別の仕事をあてがうべきである。
しかし、上の3つをきちんと行っていない場合は能力以前に「努力していない」とみなすべきだ。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします)
・【大学探訪記】を始めました。
「研究が楽しい」「研究成果を知ってほしい」「スタートアップを立ち上げた」
という学部生、大学院生、研究者、スタートアップの方は、ぜひ blogあっとtinect.jp までご連絡下さい。卒論、修論も歓迎です。ご希望があれば、当ブログでも紹介したいと思います。
【大学探訪記Vol.5】銀幕スターを通じて「戦後の日本人」を解き明かす
【大学探訪記 Vol.4】ベトナムの人材育成を支援したい!と、ベトナムに単身渡る女子大生
【大学探訪記 Vol.3】プロ野球に統計学を適用するとどうなるか?
・ブログが本になりました。
「仕事ができるやつ」になる最短の道
- 安達 裕哉
- 日本実業出版社
- 価格¥500(2025/06/08 13:50時点)
- 発売日2015/07/30
- 商品ランキング133,096位
(Photo:Garry Knight)