ある会社での話だ。サービス残業を恒常的に繰り返している会社があり、社員がそれを指摘したところ、経営者はそれを認め、「給与カットか、リストラをして良いなら、残業代を支払える」と回答した。
コスト削減はやりつくし、新しい採用も抑制した。売上が急に上る見込みもない。残るは人件費のカットだけだったからだ。
その回答に対して、社員たちは話し合いをした。給与カットは本末転倒、ということで、リストラを選択することにした。その結果「希望退職者の募集」が行われることとなった。
まず募集に応じて辞めたのはエース人材と一部の若手たちだった。
ただし、本当に人件費が高いのは中高年だった。目標の人件費までもう少し削らなければならない。
そこでやむなく会社は「肩たたき」を行い、中高年の給与が高い人々を一掃した。「働かない中高年」は晴れていなくなったのだ。
残されたのは若手と中堅社員たちだった、残業代も普通に支払われるようになった。めでたしめでたし…ではなかった。会社の業績はそれから徐々に下がる。
彼らは必死に頑張ったが、人手不足によるサービスの質の低下と、エースが持たせていた取引先の離反が続く。慌てて新規事業に手を出しても、エース不在では立ち上げるものも立ち上がらない。
若手や中堅は給与は低いのだが、スキルも低く、クオリティの高い仕事ができない。それを埋めるように労働時間でカバーをするようにすると、今度は残業代が高騰する。
結局3年持たず、その会社は消滅した。
潰れた結果、多くの若手と中堅社員は、再就職に非常に苦労している。
残業代をもらいすぎていたからだ。一旦あがった給与を下げることができないのだ。
しぶしぶ収入を下げ、再就職するものもいたが、うまく働けていない人もいた。
「サービス残業は許せない、と思って会社に要求しました」
「新しく事業を作る力は、経営者にも、自分たちにもありませんでした。」
彼らはそう言った。
結局割りを食ったのは、若手の技能の低い人であり、30前後の中堅社員だった。
一方、その経営者は、その後全く新しい会社を立ち上げ、再起している。
「今度も、もちろん残業代は払っています。でも採用は非常に慎重にやっています。あと、定期昇給は廃止しました。」と、彼は言う。
前の会社のことを聞くと、
「結局誰が得したんでしょうかね。」
と、彼は苦笑いした。
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。

<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは【ご視聴方法】
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当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【今回のトーク概要】
- 0. オープニング(5分)
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」 - 1. 事業再生の現場から(20分)
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例 - 2. 地方創生と事業再生(10分)
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む - 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説 - 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論 - 5. 経営企画の三原則(5分)
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する - 6. まとめ(5分)
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)
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