毎日文章を書いていると

「表現者の最も重要な条件は、「誤解」を受け手の責任にしないこと」

と、ある芸術家に教わったことを思い出す。

 

ここで言う表現者とは、自分の考えていることを何らかの作品を通じて、発信をする人物のことだ。

文章であれ、絵画であれ、音楽であれ、学術研究であれ、コピーライターであれ、優れた作品は全て、「表現者」によって作られる。

 

そして「表現者」のもっとも重要な条件の1つは、頭の良さでも、技術力でもない。

「表現が必ず誤解を与えてしまうこと」への真摯な態度、すなわち「誤解を与えてしまった」ことを読み手のリテラシーの責任としないことである。

 

例えば、ウェブの上には、よく「煽り」タイトルを見かける。

記事をよく読めば、タイトルをつけた著者の意図も読み取れるのだが、恐らくこのタイトルを見た瞬間に「カッときて」、著者を攻撃したくなる読者もたくさんいるだろう。

もちろん、中には見当はずれな反論も数多く存在する。

 

 

これを見た時、2種類のタイプの著者が存在する。

一つは、「誤解」を読み手側の責任にする人

そしてもう一つが、「誤解」を表現側の責任とする人だ。

 

前者は少なくとも「表現者」ではない。彼らは表現が伝わることよりも、「耳目を集めること」を優先している。

彼らは客引きを行っているだけであって、作品を発表することが目的になっているわけではない。そして中には営業行為、政治活動のために「あえて誤解を招いてもかまわない表現を使う」という方もいる。

「耳目を集めなければ表現などゴミで、自己満足にすぎない」と彼らは言う。

 

 

だが「表現者」は、それとは別の信念で動いている。

後者が「表現者」だ。表現者は「表現者であるための最も重要な条件は、「誤解」を読み手の責任にしないこと」と考えている。

 

多くの優れた研究者、コピーライター、作家、画家はすべて、言いたいことができうる限り正確に伝わるように、時間を使い、心を砕いている。

学術論文が誤解を与えては「二流以下の論文」であるし、コピーライターもぎりぎりまで表現を練る。作家は文字に依る表現を極限まで突き詰めて人生を語り、画家は自分の見えている世界を正確に人に伝えるため、様々な技法を生み出した。

彼らは皆、神経を使いギリギリまで表現を突き詰め、「どうやって伝えるか」「どうやったら伝わるか」を真剣に吟味する。

そして、そのことが彼らの表現に対する力量を高みに押し上げる。それが表現者としての条件であり、彼らがプロであることの証なのだ。

 

もちろん彼らは「誤解が絶対にあってはならない」と言っているわけではない。誤解は避けられない。だが「誤解がなくせないことを知りつつ、それをなくそうとする」姿勢が重要だと表現者は考えている。

 

 

ここで前者と後者、どちらが良いかという議論はしない。あまり意味が無いからだ。それぞれの目的が違うのだから、比較のしようがない。

 

だが、表現者は自分が発表する作品についての批判を、それが喜ばしいことではなかったとしても「自分の責任」として受け取る。

それを捨てた時、彼は「表現者」ではなくなってしまうことを、彼はよく知っているからだ。

 

 

 

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ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

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