最近驚いたことがある。
ある企画書を見たときのことだ。その企画書は、お世辞にも素晴らしい内容とは言えないものだった。
もっと率直に言うと、「学生が初めて作った資料」のようだった。企画書をあまり見慣れていない私でもわかる素人感。失礼ながら、誰にでも書ける抽象的なワードを並べただけの薄っぺらい内容だった。
だが、驚いたのはその企画書に対してではない。その企画書を採用した人に対してである。
この内容でなぜ採用したのか。不思議に思ったが、疑問は一瞬にして解決された。企画書を書いた人の経歴が立派だから採用したのだ。
彼の経歴を見ると、たしかにわかりやすく立派な肩書きや実績が並べ立てられ、いかにも仕事ができる人間であるかのようなアピールがされていた。肩書きや実績に嘘はないだろうから、実際に仕事ができる方なのかもしれない。その点はすごいと思う。
でも、経歴が立派な人が書いた企画書だから内容も素晴らしいかというと必ずしもそうではない。
その企画に私自身は直接関与していないので、何か不利益を被ったわけではない。何を採用しようが関係ないと言えば関係ない。
ただ、明らかに薄っぺらい内容の企画書を経歴だけで採用してしまって本当にいいのか、部外者ながら心配になってしまった。
経歴や肩書きで判断してしまうことは私もある。
特に、経歴や肩書き以外の情報がない場合は、その限られた情報で相手のことを推測するしかない。
経歴や肩書きは過去の実績そのものでもあるから、時に非常に有益な情報ともなりうる。だがそれ以外の情報が入ってきた場合、それはそれとして受け止めるのが筋だろう。できるだけフラットにその情報を見て判断したいものである。
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そういえば以前、「女性の名前で仕事のメールを送ってみたら……見えない差別に気づいたある男性の話」という記事が話題になった。
ご存知の方も多いだろうが、簡単にまとめると、
・男性が誤って女性の名前でクライアントにメールしてしまった。
・クライアントは軽蔑した態度をとり、メールに書いた質問を無視した。
・男性が誤りに気づき、自分の名前(男性の名前)でメールをしたところ、クライアントはアドバイスを受け入れた。
・指導の仕方やアドバイスは何一つ変えていない。変わったのは、名前が男性になったことだけだった。
という、性別によってクライアントの態度が変わった話である。
ここまで露骨な性差別は今時珍しいような気もするが、たしかに性別によって相手に与える印象が変わってくるという現実があることは否定できない。私も仕事をしていて性別を意識せざるを得ない状況になったことがあるので、経験からもある程度納得できる。
性別と肩書きを同じだというつもりはないが、表面的な情報で相手を判断し、本質を見極めることができていないという点で、この話は企画書と通じる部分がある。
クライアントはアドバイスよりも性別を大事にする人間であり、企画書を採用した人は内容より経歴を大事にする人間だったということだ。
そうではなかったとしても、少なくとも周囲の人にはそう見られてしまう。
いずれにしても、肩書きだけで判断してしまう人は「肩書きでしか判断できない」、すなわち「本質を見極める能力がない」人間であると自らを位置づけてしまっていることに気づいたほうがいいだろう。
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ではまた!
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ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。

<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは【ご視聴方法】
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【今回のトーク概要】
- 0. オープニング(5分)
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保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例 - 2. 地方創生と事業再生(10分)
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む - 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説 - 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論 - 5. 経営企画の三原則(5分)
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する - 6. まとめ(5分)
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)
【著者プロフィール】
名前: きゅうり(矢野 友理)
2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。
【著書】
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(Photo:Fabio Hofnik)