久々に、少し考えさせられる記事を読んだな、と思った。
米IT大手グーグルの役員ら約40人が東京大学の本郷キャンパスを訪ね、人工知能(AI)を研究する大学院生らのリクルートを始めたのは数年前のことだ。学生たちに提示した条件は年収約15万ドル(約1800万円)で、日本のサラリーマンの平均年収の4倍以上。
(毎日新聞)
なるほど、と思った。
この記事の真偽や実態について、私は確かめるすべもないので、推測でしかわからないが、しかし、私は日本企業がこれを見て、「危機感」を感じているかどうかというと、いささか疑問が残る。
多分、多くの企業経営者が感じているのは、「良い学生が海外に持っていかれるのは、ちょっと腹立たしいけど、自社ではやらないし、まあ影響もあまりないだろう」という感想ではないだろうか。
推測できる理由は以下のとおりだ。
1.年収1800万円で雇った学生の知識を活用できるビジネスを持っていない。
グーグルは彼等の知識に対する投資を回収できるような見込みを持った事業をすでにいくつも持っているが、日本企業はそうではない。
2.雇用規制が強く、給与を下げにくい日本では、高給人材を雇うことに大きなリスクがある。
グーグルは有り余るキャッシュを持っているし、本国の採用であればすぐに解雇も可能だ。所詮、能力など働かせてみなければわからないのだから、解雇規制が緩いほうが、ハイエンド人材獲得には有利だ。
3.社内の嫉妬が困る。
最も大きいのはこれかもしれない。新卒を1800万円で雇った、などと言ったら、社内のオジサン連中がこぞって嫉妬するだろう。
社内の給与バランスが崩れるのは困るのだ。
4.数十人のハイエンド学生が採られたところで、大した影響はない。
ビジネスは一人の天才だけで完結するわけではなく、大勢の働き手を動かすこともまた、必要だ。テレビや小説のように、「天才が世の中を変える」など。そうそう起こることではない。
「会社員になってから開花する」人が採れればそれで良いのだ。「学生の時にデキた人が、会社に入って大した事なかった」はいくらでも事例がある。
まあ、こういった企業経営者の論理も理解できるので、私は特にいうこともない。
だが、上の新聞記事で私が唯一強く思ったことは、
日本には、「ミドルリスク・ミドルリターン」の職場が極端に少ないのかもしれないということだ。
起業まではできない、でも、多少リスクをとっても大きく稼げる企業で働きたい、という学生の受け口がかなり米国に比べて少ないのではないだろうか。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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