先日お会いしたある上場企業の部長さんは「部下のやる気をあげる上司なんて、必要ない」といった。いつぞやの経営者と全く同じである。
(参考:「社員のモチベーションなど気にする必要は全くない。管理職研修など不要」と言った経営者の話。)
書店に行けば、「部下の心に火をつけよ」や「チームのビジョンを示し、皆を率いるべし」と言った書籍はうんざりするほど存在しているにも関わらずだ。
「なぜですか?」とお聞きすると、部長さんはこちらに質問してきた。
「安達さん、やる気って、他の人に上げてもらうものだと思う?」
私は無難に答えた。
「どうでしょう。「皆をやる気にさせる人」というのは、確かに存在すると思いますが…」
部長さんは私の心を見透かしたように言った。
「つまんない答えだね。」
私はぎくりとした。
「結局、上に立つ人にやる気を左右させられる人物なんて、大したこと無い人なんだよ。」
私は反論した。
「しかし、人のやる気を削ぐダメな上司がいるのも確かです。」
「ああ、安達さんはブログにそう書いてたね。いや、そりゃダメ上司も多いよ。でもね、オレが見てきた中でほんとうにできる人たちは、上司がクズだろうと、できるやつだろうと、パフォーマンスは関係なく出していたね。」
本当にそうだろうか。
確かにそうかもしれない。私はいわゆる「出来る人たち」を思い出した。たしかに彼らは、上司にかかわらず、一定の成果をきっちり上げてくる。そして言い訳はしない。それは、先日の経営者が言っていた「プロ意識」に通じるものがある。
彼らはダメ上司がいつか自分の上から消えることを知っている。こういった時代はごまかしが効かず、本物しか生き残れない。
だから焦らず自分の成果に集中する。仮に「この会社は変わらない」と思った時には、さっさと見切りをつけて転職する。
「それはそうですが…」
「だろ、そうなんだよ。だから、上司がやる気を出させなきゃいけない奴らは、まあいいとこ「凡人」だな。」
はっきり言う方である。
「今、会社が勝っていくためには、「凡人」は本当に必要ないんだ。だから上司がやる気を高めてくれ、なんて言ってる奴らに耳を貸す必要はない。その代わり、やる気を自分で出せる奴はとことん優遇する。
だから肝心なのは採用だ。今は、会社も採用のやり方をすっかり改めて、テストと面接で「自分でやる気を出せる人」を精度高くより分けられるように変えている。もう、従順でおとなしい人は要らないんだよ。
お陰で、今期の業績はかなり良かった。社員のやる気を気にして社内なんか見てたら、会社の未来はないよ。ひたすら社外を見なきゃ、ダメなんだ。」
私は、部長さんと話をしていくうちに、ひとつの疑問が浮かんだ。
「ちょっとお聞きしていいですか?」
「何?」
「「自分でやる気を出せる人」には、だれでもなれると思いますか?」
部長さんははっきりと言った。
「当たり前だ。こんなもん、心がけ一つだ。人ってのは、みんなそれができる素質はあるんだよ。」
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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【大学探訪記 Vol.12】R社に就職が決まってしまう大学生とは
【大学探訪記 Vol.11】監視カメラの画像から、街における「人の挙動」を人工知能で明らかにする
【大学探訪記 Vol.10】池の水を少し汲めば、その池に住む生物がわかる。そんな魔法のような話、あるんでしょうか?
・ブログが本になりました。
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