5245435499_790831dc4a_z私はコンサルタントをやっていた12年間の間、「経営者が絶対的な権力を握っている会社」をいくつも見てきた。

 

そのような権力を一手に握る経営者はほとんどの場合、スーパースター社員を嫌う。スーパースター社員には、命令も管理もできないからだ。

そして、そのスーパースターを辞めさせる、あるいは冷遇することで経営者はスーパースターの排除に成功するが、あとに残るのは平凡な社員ばかり。既にその会社に成長の見込みはなかった。

 

私はそういった状況を飽きるほど見てきた。だが、20世紀はそれでうまくマネジメントできた。目的・目標がほぼ自明だったからだ。「安く作って、高く売る」が正義だった。

だが、そう言った会社の殆どは、21世紀の現在、世の中に対して何も成し得ていない、せいぜい経営者・株主を金持ちにするくらいである。

 

 

既に会社の業績の源泉は、ブルーカラーではなく、ホワイトカラーでもない。専門家としての知識を持つ、ピーター・ドラッカーの言う所の「知識労働者」である。

ブルーカラーやホワイトカラーと知識労働者の本質的なちがいは、「目標の決定権」である。極めて洗練された知識の領域においては、もはや経営者は適切な目標を設定することができない。せいぜい、売上と利益の目標を叫ぶくらいだろう。

 

そして、経営者にその認識がなければ、知識を持つ人々を使いこなすことはできない。経営者が売上と利益の目標だけを叫んでいる会社では、知識を持つ人々は経営者を嗤っている。

「また金の話か。」と。

 

もちろん会社の方向性、存在の意義、理念などは経営者の専売特許である。だが、目標という具体的な達成すべきものの領域においては、すでに経営者は無力である。

 

我々のメディアはどの程度のアクセス数まで伸ばせるか。

美しいプロダクトの判断の基準はどこか。

何が教育において重要な価値を生み出すのか。

顧客にとっての価値は何か。

何がブランドを創りだすのか。

 

それらを導き、設定することは専門家の仕事であり、それこそが彼らの責任領域なのである。

 

上のような理由から、現在は有能な人間は会社に対して遥かに優位な立場にある。彼がなし得ること、知っていることについて、経営者は任せるしかない。

優秀な社員に対しては、命令も管理もできない。だがむしろ、命令も管理も出来ないことを経営者は喜ぶべきである。会社はそのような人々に「協力」してもらうことで、大きな力を得るのだ。

 

 

かつて私は「有能だが、会社の方針にそぐわない人間を排除する」という組織に所属していたことがある。今だから言えるが、これは全くの間違いだった。

本来やるべきだったのは排除ではなく、「知識労働者をどのようにしたら惹きつけられるのか」を真剣に議論することであった。

 

これからの会社は、2種類のマーケティングを必要とする。

1つは顧客へのマーケティング。もう1つは、知識を持つ人々へのマーケティング、会社のために働く人々へのマーケティングである。そして実は、経営者の仕事はこの2つだけなのだ。

 

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登壇者紹介:

松原 亮 氏(株式会社TOKIUM 取締役)
東京大学経済学部卒業後、ドイツ証券に入社し投資銀行業務に従事。
2020年に株式会社TOKIUMに参画し、当時新規事業だった請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」の立ち上げを担当。
2021年にはビジネス本部長、2022年より取締役に就任し、経費精算・請求書処理といったバックオフィスDX領域を牽引。
業務効率化・ペーパーレス化の分野で多くの企業の課題解決に携わってきた実績を持つ。

安達 裕哉 氏(ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO)
Deloitteで大手企業向けの業務改善コンサルティングに従事した後、監査法人トーマツにて中小企業向け支援部門を立ち上げ、
大阪・東京両支社で支社長を歴任。2013年にティネクト株式会社を設立し、ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年には生成AIに特化した新会社「ワークワンダース株式会社」を設立。生成AI導入支援・生成AI活用研修・AIメディア制作などを展開。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計71万部を突破し、2023年・2024年と2年連続でビジネス書年間1位(トーハン/日販調べ)を記録。


日時:
2025/5/16(金) 15:00-16:00

参加費:無料  定員:50名
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
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(2025/5/8更新)

 

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