5385192093_ca50483dc4_zつい先日お会いした人事の方が、採用面接に対して面白い考え方を持つ人であった。というのも、転職理由を面接の中でこう聞くからだ。

 

あなたが転職をする理由を、2つの側面から聞かせてください。

1.前向きだ、といえる理由
2.ネガティブな理由。とくに前職に対する不満を具体的に。

 

通常「前職の不満」を聞くことはタブー視されており、それを話す人は殆どいない。また、面接官もそれを敢えて聞く人も居ない。極端になると「前向きでない話」を受け付けない面接官もいる。

 

なぜそんなことを聞いているのか、その方は言った。

「前向きなことしか言わない人は信用できません。」

「なぜですか?」

「反省や失敗の原因追求がどうしても甘くなるからです。しかも本音がわからない。ポジティブなのは悪いことではありませんが、我々が求めているのは、物事を客観的に見ることができる人です。ですから、前向きだ、という理由と不満を両方言ってもらうのです。

とくに、我々は不満の理由と、なぜそうなったと思うか?の分析を聞くことを重要視しています。感情的すぎないか、データや客観的事実にもとづいて判断しているか、特定の個人の責任として簡単に考えすぎていないか。

そういった情報全てが、我々の会社に入ってからの行動を予測することに役立ちます。」

 

なかなか冷静な意見だ。私は聞いた。

「具体的にどんな感じになるのでしょう?」

 

「例えば、「これ以上出世の見込みがなかった」といった人がいます。ネガティブな理由に対して、「なぜそう思ったか?」と質問すると、次の答えが返ってきました。

「部長たちが全く入れ替わっておらず、成果も出しているように見えない。できる人は部長手前で辞めていく。そういう人を少なくとも3人は見ました。」

少なくとも彼は事実にもとづいて判断しているわけですが、私はもう少し聞きました。

「なぜその3人を部長にしなかったか、理由を推測しましたか?」

「さあ、今の部長たちが可愛いからでしょうか」

残念ながら、この応募者を採用することは見送りました。突き詰めて考えることのできない人物だと思ったからです。彼は目の前で起きていることしか見えていない。分析も甘い。残念ながら当社ではあまり活躍できないでしょう。

 

また、別の人はこう言いました。「上司と方針が合わなかったからです」、私はその方にも「なぜそう思ったか?」と聞きました。すると「施策が一貫しておらず、短期的な業績ばかりを気にする。」と答えていただきました。

「それのどこが悪いのですか?」と聞くと、その方は

「業績は重要ですが、短期的に業績を上げることのできるものと、長期的に見るものと区別は必要です。あらゆるもの、例えば人材育成や新規事業、webマーケティングなどもすべて短期的にしか見ることができていなかったので、すぐに流行りに飛びつくのです。結果的に何一つやりきれない。」

と答えていただきました。そこで

「具体的には、どのような事象があったのでしょう?」と聞くと

「はい。例えば…」

と、詳細に状況を教えていただきました。たしかにその方の言うとおりかもしれません。幾つかの質問を行い、その方は採用されました。」

 

 

転職の理由を語るときに、「過去の話はしない」「前向きに」という話がまことしやかに語られているが、ネガティブな話から引き出せる情報は非常に多い。

また、ネガティブな感情を伴わない転職などほんとうにあるのか、疑わしい。逆に積極的にネガティブな感情なども共有していくほうが結局お互いのためになるのではないだろうか。

 

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

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