現代は、先の読めない時代と言われています。歴史ある大企業でも、新興企業の台頭や破壊的イノベーション、経営者の不祥事などで、存続が危ぶまれるような危機に見舞われることもめずらしくありません。
そして、あらたな雇用の受け皿として、新しい事業の創造や起業のもたらす社会的意義が非常に大きくなってきています。そのような社会的背景のためか、20代〜30代を中心とした新しいスタートアップや、彼らに投資を行うベンチャーキャピタルが増え、ニュースメディアでも日々、巨額の資金調達を伝える勢いのある記事が賑わうようになってきました。
が、成功する人がいれば敗れる人もいます。チャレンジすれば失敗のほうが多いのです。それによって傷ついた人はどうすればいいのでしょう。
チャレンジする人にはどうしてもサポート役、メンターが必要です。そして、そんな仕事をしている人がいます。エリー・谷口さんです。
Yoshi Ellie Taniguchi/谷口佳久(エリー)
シリアルアントレプレナー、メディスンマン 聴く人
1967年和歌山県生まれ。大学を卒業後、証券会社に勤務、ニューヨークに赴任したあと、2000年に現地で起業。その後、紆余曲折を経て、現在は、2009年より株式会社マイカレッドの創業者兼代表取締役を務める。外資系スタートアップの取締役を務めたり、大学で起業論を教えるなど、様々な分野にて活躍中。
エリーさんは、数多くの経営者、起業家のメンターを行い、彼らの日々増え続ける悩みに応え続けています。具体的にどのようなことをしているのか、お話をうかがいました。
−エリーさんは、数多くの経営者や起業家の方々のメンターをやっていらっしゃると聞きました。
はい、経営者の悩みを「聴く」ことをしています。ひょっとしたら、それが、メンタリングと言われることなのかもしれません。
-聴く、ですか?
はい。実は、経営者って、とっても孤独なんです。本当の悩みを話せる場がないんですよ。特に男性の経営者は、悩みがあったとしても、周りに打ち明けず気晴らしをして、責任を背負い込む傾向があります。
-なんだか、自分のことを言われている気がします(笑)
実は私もそうだったんですよ(笑)。昔、会社の経営が厳しかった時に、誰にも打ち明けられず、ものすごく苦しんだんです。あの頃、だれかにその話を打ち明けられたら、すごく楽だったでしょうね。
自分の今を否定する必要はない
-どんなことがあったんですか?
2000年に、ニューヨークで起業をしました。今でいう、ウェブ系の会社なのですが、そこそこの成功もしました。しかし、ちょっとしたはずみで会社を倒産させてしまい、個人的な負債を負ったり、いろんな辛い思いも経験しました。
一番辛かったのは、倒産した後、自分の全てが否定されたように感じられたことでした。
実際は、自分を一番打ちのめしていたのは、人の声ではなく、自分の声だったのです。あの時、ああしたら、こうしたら……。結局、失敗した自分を、受け入れられなかったんでしょうね。
ーそれは、辛い経験でしたね。
結局、今思えば、会社を興し、大きくできただけでも、奇跡のような体験だったのです。少なくとも、やることはやった。それでいいではないでしょうか。
実際、起業家や経営者などのチャレンジャーの手がけていることの多くはうまくいかないのです。新しいことにチャレンジするということは、常に失敗と隣り合わせです。
でも、少し話すだけで、ああ、こんなことで悩んでいるのは、自分だけじゃないんだ、と思うことがある。また、口に出して、声にするだけで、いいこともある。
ーでも、聴くだけだと、なんの問題解決にもならないのでは?
それが、不思議なんですけど、だんだんと、話している本人が自分で手がかりを掴んでいくんですよね。話しながら、考えが整理できていくというか。
最近は、特に経営者に絞らず、会社勤めの人や、主婦、学生さんなどの話を聴くことも増えてきましたが、それらを通じて、強く思うのは、人は、それぞれの中にすごいエネルギーとポテンシャルを持っているということです。
ただ、ちょっとした思考の癖が、その人を苦しめたりしていることが多いと思います。
ーどうすればその悪い癖を無くせるのでしょう?
これがね、面白いことに、体を動かすと、その癖から抜け出せたりするんですよ。
5、6年前に、「歩こう会」という、みんなで集まって、街を歩くだけのイベントを友人と始めたのですが、歩く井戸端会議のような感じで、みんな、いろんな話をしながら歩くんですよね。
なぜか歩きながらだと、なんだか話が前向きに変わるんですよ。
また最近、森の持つ効果に注目しています。友人に木こりがいまして(笑)。
リトリートという言葉があるのですが、これは、今まで突き進んできたことから、一旦距離を置いて時間を取り、本来の自分の目標を再確認するような行為を言います。
これを、森と組み合わせて実施できないかと思っています。すでに、同じようなことを提供している方々ともめぐりあい、彼らと一緒に、より多くの人に、そのような場を提供できないかと思っています。
-変わったメンタリングのプログラムですね。
森でのプログラムだけではなく、そのエッセンスを、都会にいても感じることのできるようなことも、同時に考えていきたいと思っています。
心の問題のサポートは、起業家や経営者だけの問題ではなく、会社勤めの人でも、主婦でも、学生でも、今から一歩踏み出すために、必要なことだと思います。
これまで、個人で行ってきたこれらのことを、様々な方とネットワークして、継続的な仕組みに育てたいと思っています。
−エリーさん、ありがとうございました!リトリート・プログラムにご興味のある方は、こちらからエリーさんにコンタクトして下さい。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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