14405977201_00137966a9_z企業も個人も、意思決定で最も難しいことの1つが、「やめる」ということだ。物事は、始めるよりもやめるほうが遥かに難しい。そういったことを数多くの現場で見た。

 

例えば、あるwebサービスの運営会社は、1年かけて作り上げたサービスが振るわず、毎月のように赤字を垂れ流す状態だった。半年ほどたち、それを見かねた経営者が「撤退する」といったところ、現場の技術者たちは強固に反対した。

「ここまでやって、途中でやめるなんてダメです。諦められません」

彼らはそう主張した。

 

またある会社では現場の技術者に「日報」を導入した。最初の3カ月間、皆で頑張って書いたが、どうやら時間を使うだけであり、目立った成果は上がらなかった。

現場のあるリーダーはそれを見て、「辞めたほうが良いのでは」と、日報を導入した役員に進言したが、彼は頑なに「日報が会社を変えるのだ」と主張して譲らなかった。

仕方なく現場は日報を継続したが、実態は形骸化しており、だれもが毎日日報に使う30分間を「意味が無い」と思っている。

 

また、とある知り合いがもう5年間、司法試験にチャレンジし、失敗している。だが彼は諦めきれず、未だに受験を続けている。

「普通に就職してはどうか」と周りから言われるそうなのだが、彼は「ここまできて諦められない」と言っている。

 

 

サンク・コストという用語がある。すでに回収の見込みない投資や労力のことだ。

つまらない映画を見続けるべきか

2時間の映画のチケットを1800円で購入したとする。映画館に入場し、映画を見始めた。10分後に映画が余りにもつまらないことが判明した場合に、映画を見続けるべきか、それとも途中で映画館を退出して、残りの時間を有効に使うべきかが問題となる。

  • 映画を見続けた場合:チケット代1800円と上映時間の2時間を失う。
  • 映画を見るのを途中で止めた場合:チケット代1800円と退出までの上映時間の10分間は失うが、残った時間の1時間50分を有効に使うことができる。

この場合、チケット代1800円とつまらないと感じるまでの10分が埋没費用である。この埋没費用は、上記のどちらの選択肢を選んだとしても回収できない費用である。したがって、時間を浪費してまで、つまらないと感じる映画を見続けることは経済学的に合理的な選択ではない。途中で退出して残りの時間を有効に使うことが経済学的に合理的な選択である。しかし、多くの人は「払った1800円がもったいない。元を取らなければ」などと考え、つまらない映画を見続けることによって時間を浪費してしまいがちである。

(Wikipedia)

これは、博打での負け分を取り返そうしとて更に負けが込んでいく状況とよく似ている。

 

 

もちろん、やめるのが簡単なこともある。だが、多くのことがかかっていると、「やめたくてもやめられない」「夢を諦められない」という状況と戦わなくてはいけない。

誰しも、自分が決定したことに対して愛着が出てくるものなのだ。

 

 

だが、ピーター・ドラッカーは著書※1の中で、

死体が臭わないようにすることほど涙ぐましく、しかも不毛な仕事はない」

と述べる。

成果を上げることを第一に考えるならば、「始める」よりもまずは今行っている不毛なことを「やめる」ことが、何より重要だ。

 

【お知らせ】
弊社ティネクト(Books&Apps運営会社)が2024年3月18日に実施したウェビナー動画を配信中です
<ティネクトウェビナー>

【アーカイブ動画】ChatGPTを経営課題解決に活用した最新実践例をご紹介します

2024年3月18日実施したウェビナーのアーカイブ動画です(配信期限:2024年4月30日まで)

<セミナー内容>
1.ChatGPTって何に使えるの?
2.経営者から見たChatGPTの活用方法
3.CharGPTが変えたマーケティング現場の生々しい実例
4.ティネクトからのプレゼント
5.Q&A

【講師紹介】
楢原一雅(ティネクト取締役)
安達裕哉(同代表取締役)
倉増京平(同取締役)



ご希望の方は下記ページ内ウェビナーお申込みフォーム内で「YouTube動画視聴」をお選び頂きお申込みください。お申込み者にウェビナーを収録したYoutube限定動画URLをお送りいたします。
お申込み・詳細 こちらティネクウェビナーお申込みページをご覧ください

(2024/3/26更新)

 

・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします))

・筆者Twitterアカウントhttps://twitter.com/Books_Apps

・大学・研究の楽しさを伝える、【大学探訪記】をはじめました。

【大学探訪記 Vol.21】人間は、なぜ1種しか地球上に存在しないのか?という疑問に迫る。

【大学探訪記 Vol.20】地球に隕石が飛んできているからそれ調べてるんですけど何か?

【大学探訪記 Vol.19】伊勢神宮のネットワークを駆使し、地域おこしを実現する。

・仕事の楽しさを伝える、【仕事のチカラ】をはじめました。

【仕事のチカラ Vol.5】データサイエンティストって、どんな人?どうやったらなれるの? という疑問に答えてもらいました。

【仕事のチカラ Vol.4】何をやるかを決めずに、気の合う仲間と起業する。そんな人生もいいじゃない。

【仕事のチカラ Vol.3】プログラミングを独習し、その勢いで独立した、28歳の凄腕プログラマーの話。

・ブログが本になりました。

(Photo:Kris Symer

 

 

※1 イノベーションと起業家精神(ダイヤモンド社)