リーダーシップの重要性が強調されて久しいが、未だに「有能なリーダー」は 組織に不足している。
もちろんこれは日本だけの話ではない。先進国でも、発展途上国でも、世界のあらゆる場所で リーダーは絶対的に不足している。
なぜリーダーが不足しているのだろう。 それは、簡単に言うと「知識を扱うリーダー」がどのようなものか、キチンと教えられたことがなく、 目にしたこともないひとが多いからだ。
たとえば幼少期の頃を思い出して欲しい。 「リーダー的な人はいましたか?」と聞くと、ガキ大将を挙げる人も多い。 では、ガキ大将は本当にリーダーだったのだろうか?
一昔前の会社、戦時中、緊急時においてはそういったリーダー像は間違っていないだろう。
だが、現代の平時においてこれは多分に疑わしいと言わざるを得ない。 単純にチカラが強く、権威によって人を従わせることができるだけではもはやリーダーの役割は果たせない。
「知識」を扱う現代のリーダーの役割はもっと複雑で、困難だ。成し遂げなければならないことを定め、それに対するアイデアを持つ人を使い、 全体の方向をまとめてアウトプットし、成果をあげさせる人がリーダーだからだ。
権力者がリーダーというわけではなく、声の大きい人がリーダーというわけでもない。「知識」を扱うことの本質を知っている人が、現代におけるリーダーなのだ。
知識を扱うことのできるリーダーであるかどうかはその人の行動を見れば分かる。
もちろんリーダーのフリは簡単にできるが、その人が現代のリーダーかどうか、旧来のリーダーとの差があまりにも大きいので、だれにでもわかる。
それは主に以下のようなことにおいてである。
1.現代のリーダーは、ビジョンを重視し、旧来のリーダーは権威を重視する
知識を持つ人は権威に従うことを拒む。権威に挑戦することが、知識を持つ人々の本質的な行動原理だからだ。したがって、現代における真のリーダーは、権威ではなくビジョンによって人を動かす。
無条件に従う労働力を必要とするリーダーは権威を用いる。反乱が起きては困るからだ。だが権威を用いようとするリーダーは、知識を扱うことには向かない。
2.現代のリーダーは、メンバーの意見を重視し、旧来のリーダーは自分の意見を重視する
知識に「絶対」はないため、現代のリーダーはメンバーの意見を重視せざるを得ない。あらゆる意見に検証が必要であると考えているからだ。
そのため現代のリーダーは、自分の意見もメンバーの意見も重みは同じであると考えている。
当たり前だが旧来のリーダーはそれを「無駄な行為」と感じる。やらなければならないことは既に決まっているからだ。手足に命令するならば、自らの意見を他のメンバーの意見と同列に扱うことができない。
だが「オレが正しい」と根拠なく主張する人間には、知識を扱うことはできない。
3.現代のリーダーは、意見が違うことを重視し、旧来のリーダーは意見が揃うことを重視する
知識は、意見の対立があってこそ発展すると信じているのが現代のリーダーだ。従来信じられてきたことへの疑念、人による意見の違いに、大きな発見の種があるのが、知識の本質だ。
旧来のリーダーはそれを知らず、意見の違いは自分の権威への挑戦と見る。したがって、「意見が揃っていないこと」は自分のリーダーシップの欠如につながるため、それを大いに恐れる。
物言わない手足を使いたいリーダーは「和を重んじる」と述べることが多いが。だがその態度は聞こえは良いが、知識を扱うことはできない。
4.現代のリーダーは、行動を重視し、旧来のリーダーは計画を重視する
知識とは、検証が必要なものである。これを知っているかどうかは、リーダーの行動に非常に大きな影響を与える。
現代のリーダーは知識は「仮説」に過ぎず、計画はうまくいかないことを当然とする。したがって「行動して、検証すべし」を前提としている。したがって行動を重視する。
旧来のリーダーは「我々が決めたことは、正しくなければいけない」との立場を取る。労働力に、その行動の正しさを検証する権限はないからだ。
したがって計画は成功が前提である。だが、往々にして計画を綿密にし過ぎることにより、機を逸するのが常である。
5.現代のリーダーは実績を重視し、旧来のリーダーは肩書を重視する
知識の世界に、肩書は関係ない。知識とはその中身が重要であり、誰が提唱しているかは本質的に無意味だからである。会議などで 「誰の発言か」を重視する人間は、知識を扱うことはできない。
現代のリーダーは、肩書にとらわれず、その発言の中身を検証する態度を持つ。
一方で旧来のリーダーは肩書や序列といったことを重視せざるを得ない。下層の人間の行っていることが正しかったとしても、指揮系統を守ることのほうが遥かに重要だからだ。
6.現代のリーダーはメンバーに「ルールを破れ」と言い、旧来のリーダーはメンバーに「ルールを守れ」と言う。
例えばあなたがテレアポをやらされているとする。あなたはテレアポが苦手なので、知り合いの大学生に頼んで「1件アポを取れたら2000円払う」と言って彼らにやらせ、1周間で15件のアポを取り、週間のアポ取り件数1位になった。
上司が「どうやってそれをやったの?」と聞いてきたのであなたは「大学生にやらせました」と言った。(元ネタ:飯髙さん)
その時の上司の反応を想像して欲しい。
「素晴らしい」と褒める人は、知識を扱うリーダーだ。「ルールを守れ」と叱責する人は旧来のリーダーだ。
なぜならば、知識を扱う行為は「得意なことしかやらない」との原則に基づくからだ。成果を出せばよい。それが知識を扱う人々のルールだ。
もちろん旧来のリーダーの型にもメリットはある。冒頭に紹介したように、単純労働の管理や命に関わる事態の発生時には議論は不要だ。軍隊で上官の命令には絶対服従なのは、当たり前なのである。
だが、知識を扱うにはそれなりの作法を身につけなければならない。作法を知らない人間は、当然ながら知識を持つ人々のリーダーにはなれないのだ。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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