前日に書いた「人に「意識改革」を求めてもあまり効果はない。仕組みからアプローチする。」は、組織だけではなく個人に当てはめてもそのまま機能する。
つまり能力を身につけたい、あるいは何かを成し遂げたいと思えば、自分自身の「強い意志」によってそれを実行するのではなく、「仕組み」や「環境」に工夫をこらすほう良い。
つまり、「習慣を設計する」ことが重要だ。
そして、具体的に「習慣を設計する」基本的な考え方と、具体例は以下のとおりだ。
1.「習慣化したいこと」を強い制約に従属させる
「嫌でも必ずやらなくてはならないこと」は強い制約だ。例えば通勤電車に乗ることは強い制約だが、それに従属させる習慣を作ると、その習慣は長続きする。
具体的には「電車に乗ったら本を読む」「駅はエスカレーターをつかわず階段を登る」などだ。
他にもある。「フロに入る」は強い制約なので、「フロに入ったらスクワットする」なども長続きさせやすい。湯船に浸かる人であれば、湯船に使っているときは英語の勉強をする、ときめれば1日に20分程度は英語の勉強ができるはずだ。
2「習慣化したいこと」は具体的でカンタンな形にする。できれば詳細に記述する。
たとえば「資格取得のために毎日勉強する」は習慣化の記述方法としては最悪に近い。本当に習慣化したいのであれば、もっと簡単に詳細に記述する必要がある。
例えば「持ち歩いているテキストを会社の帰りに◯◯で30分、勉強してから帰宅する」(◯◯には具体的な場所を入れる)と記述することで、この習慣の遂行率は格段に上昇する。
他にも「毎日日記をつける」ではなく「ベッドに入る前に、毎日Evernoteに、今日あったことを500文字書く」のほうがはるかに遂行率が高い。
「毎日英語の勉強をする」ではなく「通勤電車の中で◯◯英会話のポッドキャストを聞く」の方が良い。
つまり、習慣の記述をしている段階で細心の注意を払う。具体的でカンタンな形であれば結果も見えやすく、長持ちする習慣となる。
3.習慣に関連するものが、自然に眼に入るようにする
元素の周期表を憶えるために、それを見ることを習慣化したいとき、どこに周期表を貼りだすのが一番よいか?それは、トイレの扉の内側だ。余計なものがなく、繰り返し目にする場所で見たものは、記憶に残りやすい。
したがって「よく目にする場所」に張り出しておいたり、掲示しておくのは賢いやり方だ。また、走ることを習慣としたい場合、ランニングシューズやウェアを靴箱やクローゼットに入れず、外に出しておくことも良い。
会社で営業成績を貼りだしたり、PCを立ち上げると連絡事項が表示されるなどの仕組みを取り入れている会社が多いのは、このためだ。
4.入学、転職、引っ越し、入会、参加などの転機を利用する
環境の変化は、習慣を変化させる大きなチャンスだ。「◯◯デビュー」という言葉がある通り、特に大きな変化である入学、転職、引っ越しなどは、新しい習慣を作ることに非常に役に立つ。
英会話スクールを利用しているひとは、そこで教えられるコンテンツだけではなく、入学という「変わる機会」を求めていく側面もある。
大きな転機を得づらいのであれば、「部屋の模様替え」や「不要なものを捨てる」、「何かのセミナーに参加する」など小さな転機から試してみても良い。
部屋のゴミを捨て、掃除をするだけでも、かなりの意識改革が伴うものだ。
5.実行可能なレベルまで目標を下げ続ける
習慣化の設計において、もっとも重要なことは何か?と聞かれたら、「欲張らないこと」と私は答える。
具体的には、習慣化に失敗したら、具体的には連続でサボってしまったら、目標を下げたほうが良い。無理は長続きしない。
例えば上に挙げた日記も、500文字辛かったら、一文でいいとする。一文でも書けなかったら「ノートをひらく」だけとする。レベルを上げるのは、習慣が定着してからでも全く遅くない。
習慣化の途上においては目標を下げ続けることが重要なのだ。
通常、習慣化は1回の試みではうまくいかない。むしろ、現在の自分の力に合わせて少しずつ調整していき、ようやく適切な強度がわかる。
初期に大事なのは量ではなく、やったという事実であり、自信だ。
6.やっても楽しくないことは習慣化しない
多くの人が感じるように、やっても楽しくないこと、気持よくないことは習慣化しない、という選択肢を持っておく。上の1から5を試してみて、それでもかなわないようであれば「自分には向いていない」という結論もある。
つまらないことはさっさとやめて、次のことを始めよう。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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