何かの失敗について振り返るときに、2種類の人間を見かける。

「犯人探し」をする人間と、

「原因探し」をする人間

の2種類だ。

彼らは似たことをしているようだが、その実は全く異なる。

 

「犯人探し」を主に据える方の発言は以下のとおりだ。

「誰に責任があるのだ」

「こんなことになってしまって、どうしてくれるのだ」

「謝罪せよ」

「担当者を変えろ」

「あいつが悪い」

「やる気が無い」

彼らの頭の中にあることは、「この事態を招いた人間を糾弾し、責任を取らせ、意識改革を促すこと」だ。したがって、彼らは失態を犯した人を糾弾しなければならないと考える。

 

代わって、「原因探し」を主に据える方の発言は以下のとおりだ。

「何がこの事態を引き起こしたのだ」

「どのような方法がまずかったのか」

「何が原因なのか」

「やり方を変えよう」

「仕組みを変えなければ」

彼らは「人」の責任も考えるが、むしろ「システム」「仕組み」の何に欠陥があるのかを考える。「有能な人がいなければ回らない仕組みは、欠陥がある仕組みだ」という。

 

もちろんどちらが正しいと断言できることではない。

だが、企業において継続性のある成功を求めるのであれば、後者のほうが格段に優れている。

 

ピーター・ドラッカーは著作※1の中で、次のように述べた

前職において十分な仕事ぶりを示してきた人を二人、三人と挫折させる仕事は、そもそも人の仕事ではないものと考えなければならない

勘違いされやすいが、「卓越した人でなければ成功できない仕事」はそもそも会社にとっては敵である。

 

もちろん有能な人に任せるのと、無能に任せるのとでは成功の確率は天と地ほども違う。

しかし、無能に大きな仕事を任せる人はほとんどいない。どんな企業でもそれなりの仕事にはそれなりの実績を持つ人を充てるはずである。

したがって、仕事における失敗の原因はほとんどの場合

「仕組み」

「制度」

「環境」

にあると考えるほうが遥かに妥当だ。

 

 

コーネル大学で食品・ブランド研究所を運営するブライアン・ワンシンクはこんな実験を行った。※2

 

映画館の観客に、ソフトドリンクとポップコーンを無料で渡した。一方のグループにはMサイズの容器に入ったものを、もう一方のグループにはLサイズの容器に入ったものを。どちらの容器も大きく、食べきれないほどの量のポップコーンが入っている。そしてポップコーンは「湿気っているマズイもの」を入れた。

 

一見何の実験かわからないが、真の目的は「大きい容器を渡された人ほど、多く食べるか?」を測定することにあった。

結果は意外なことに、たとえマズいポップコーンでも、Lサイズの容器を渡された方の人々はMサイズの人々よりも53%も多く食べていた。しかもこの実験は再現性があった。つまり、「ダイエットをしたければ、小さな皿に盛れ」ということがわかった。

これは、人間の意識の問題に見えても実は環境の問題であることが多くある事を示している。「大食いに気をつけろ」と人に意識改革を促すよりも、皿の大きさを変えるほうが遥かに簡単だ。

 

 

パフォーマンス改善を意識改革に求めることは「頭の悪い行為」である。ほんとうにパフォーマンス改善をするために人の行動をを変えたいなら、「環境を変える」のが最も効果的だ。

 

 

トヨタはトラブルの真の原因を分析するために「なぜそれが起きたのか」を5回繰り返して問うという。だが「頭の悪い会社」にはそれを使いこなすことはできない。

なぜならば「なぜ」を5回繰り返すと、大抵「担当者の不注意」や「担当者のスキル不足」など、安易に人の責任にしてしまう誘惑が働くからだ。

そこにはたいてい、喜々として「犯人探し」をする人間がいる。

 

だが、そんなことをしているヒマがあったら、「どのように環境を変えればパフォーマンスが上がるか」に頭をつかうほうが遥かに建設的であることは言うまでもない。

 

【お知らせ】
前回(3月8日開催)に大変ご好評をいただいたウェビナーを、皆さまの声にお応えして再び開催いたします。 今回は、最新の生成AIの活用方法や最新知見を中心に、ティネクト主催でお届けします。 ぜひご参加いただき、実務に役立つ情報をお持ち帰りください。



ティネクトだからこんなことが話せる!4つのポイント
・SEOの「検索順位至上主義」を否定し、AI時代の検索戦略をご提案
・「先読みSEO」」で未来の検索ニーズに先回りし、圧倒的トラフィックを獲得した実例
・SEOを「ブランド × コンバージョン」の両立として設計し、ビジネス成果へ直結する方法
・SEO無料診断のご提供

<2025年4月10日実施予定>

AI時代のSEO最前線:企業が知るべき戦略とは?コンテンツの専門家が徹底解説

SEOはもはや「検索エンジン対策」ではなく「AI対策」へと変化しつつある

【内容】
1. AI検索時代のSEOとは?
2. SEOの未来を予測し、先回りする「トレンド予測型SEO」の重要性
3. コンバージョンまで設計するSEO
4. まとめ & Q&A


日時:
2025/4/10(木) 16:00-17:30

参加費:無料  
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細 こちらウェビナーお申込みページをご覧ください

(2025/3/27更新)

 

・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします))

・筆者Twitterアカウントhttps://twitter.com/Books_Apps

・大学・研究の楽しさを伝える、【大学探訪記】をはじめました。

【大学探訪記 Vol.23】恐竜「トリケラトプス」の本当の姿を追求する先生がいた。

【大学探訪記 Vol.22】コスプレの研究をする大学の先生がいた。

【大学探訪記 Vol.21】人間は、なぜ1種しか地球上に存在しないのか?という疑問に迫る。

・仕事の楽しさを伝える、【仕事のチカラ】をはじめました。

【仕事のチカラ Vol.7】月間170万PVのオウンドメディアを1年で作り上げた人はどんな人?

【仕事のチカラ Vol.6】27歳にして3社を渡り歩き、起業した人の話。

【仕事のチカラ Vol.5】データサイエンティストって、どんな人?どうやったらなれるの? という疑問に答えてもらいました。

・ブログが本になりました。

「仕事ができるやつ」になる最短の道

「仕事ができるやつ」になる最短の道

  • 安達 裕哉
  • 日本実業出版社
  • 価格¥1,455(2025/03/28 12:22時点)
  • 発売日2015/07/30
  • 商品ランキング77,694位

 

 

※1経営者の条件(ダイヤモンド社)

ドラッカー名著集1 経営者の条件

ドラッカー名著集1 経営者の条件

  • P.F.ドラッカー
  • ダイヤモンド社
  • 価格¥1,980(2025/03/28 03:22時点)
  • 発売日2006/11/10
  • 商品ランキング5,949位

※2スイッチ!(早川書房)

スイッチ!

スイッチ!

  • チップ・ハース,ダン・ハース,千葉敏生
  • 早川書房
  • 価格¥832(2025/03/28 14:22時点)
  • 発売日2013/08/24
  • 商品ランキング26,466位

 

 

 

(Photo:Jessica Diamond