「世代の差」は思わぬところから感じることがある。それは、ある学生と「書くこと」について話していた時だ。

 

「ブログを書くのって、面白いっすか?」

と、私はその学生に聞かれた。

 

「そうですね、人によるとは思いますが、面白いと思いますよ。」

と答える。

 

「どの辺が?」

「まあ、「自分の書いたもの」が見知らぬ人に読んでもらえるのは、嬉しいですかね。まあ、だいたい賛否あるんですが、インターネットの恩恵ですかね。」

「ふーん、そうなんですね。でも、文章がかけるのは得っすよね。」

 

彼については、どちらかと言えば「ブログをコツコツ書く」というタイプではなく、「皆でワイワイやるのが好き」な学生だというイメージがあったので、珍しいことを言うな、と感じた。

文章を書く、というのは孤独な作業だからだ。

 

「なぜですか?」

「いや、モテるためには文章力が必要だからっすよw」

 

予想外の答えである。

「……モテる、と文章力、が全くつながらないんだけど。もう少し詳しく。」

「いや、狙ってる子を落とすために、「うまい文書きたい」って人、まわりにいますよ。」

「……。うまく喋れるようになりたい、っていうなら、なんとなくわかるけど。」

「いやいや、違いますよ。勿論しゃべりは大事ですけど、むしろ書けるほうが重要じゃないかって。」

「……。」

 

 

彼は言った。

「本当にわかんないんですか?LINEとか、メッセンジャーとかで女の子に連絡取るじゃないですか。そんときの文章で、相手の反応がめちゃめちゃ違うわけですよ。本当に細かい点にも、気を遣いますよ。」

「例えば?」

「いや、あまり親しくない時とかは、どれくらい絵文字つかっていいかわかんないじゃないですか。」

「うん。」

「だから、最初のメッセージはめちゃめちゃ練るわけですよ。最初から「ご飯行かない?」だけじゃ、乗ってこなかった子も、「最近、◯◯の面白い噂、聞いたことある?」だったら、会話が始められるとか」

「ほう」

「合コンやろうよ、じゃダメだけど、「あいつを励ましてあげたいんだけど」なら、大丈夫とか。」

「ほうほう」

「あとは、しばらく連絡取ってなかった子にも「久しぶり」って、書かないとか。」

「なんで?」

「「忘れてた感」が出ないほうが、相手が返事返しやすいらしいですよ。そういう時は「久しぶり」じゃなくて、いきなり本題のほうがいいらしいです。」

「へえ、それって本当なの?」

「まあ、自分も前置き面倒くさいんで、いきなり本題に入ることは多いですかね。「今日近くに行くんだけど、1時頃あいてない?」とか。」

 

 

なるほど、そういうことか。

 

「いまは、しゃべりよりも「どうやったらうまく伝わる文が書けるか」は、はめちゃ重要っすよ。結構友達に、「どんなメッセージがいいか」って、見てもらったりする奴もいます。ま、ブログは面倒くさそうなんで僕はやりませんけどw。」

 

 

最初は笑っていたが、言われてみると、これはもしかしたら他人事ではないのかもしれない。

 

例えば、昔はお客さんと電話で連絡をとっている人も多かったが、徐々にメールが主流になり、今は仕事の人ともFacebookやLINEなどで連絡を取ることも多い。

「短い文で、いかにうまく伝えるか」はなかなか仕事において重要なスキルだ。

 

私が仕事を始めた頃は、「webでのマーケティング」など考えたこともなかった。せいぜい、ダイレクトメールやチラシ程度だった。webに情報が集積されるようになると、「文字に依る情報の伝達量」は飛躍的に増加した。

なにせ、今でもwebは「文字が主流」なのだ。さらに、スマートフォンの登場で、文字コミュニケーションには拍車がかかっている。

 

そう考えると彼の「モテるためには文章力」という世代の差を感じる発言は、実はビジネスパーソンにも言える、というのは考え過ぎなのだろうか。

 

 

 

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