技能、またはスキルと呼んでも良いが、あるワザを身につけるためにはそれなりの努力が必要だ。しかも、困ったことに努力したからといって必ず身につくものでもない。
語学やプログラミング、彫刻、演奏など数多のスキルを身につけたいと願う人は多いが、殆どの場合、目指す領域にたどり着ける人は非常に少ないのは、そのためだ。
実際、スキルの習得は、かなり注意深く行わなければ、無駄となってしまう。さらに、数多くのスキルを要求される「仕事」の領域においては、技能の習得のスピードが、仕事の成否を分けることもある。
したがって技能そのものの習得以前に、「どのように技能を習得するか」を学ぶこともまた重要である。
ではその方法とは何か。これについては以前、様々なハイスキルの保持者にインタビューをした時の資料が役に立つかもしれない。
実は、多くのハイスキルの保持者は、かなり共通の体験をしている。
例えばあるプログラマーが技能の習得を実現した時のことと、あるスポーツ選手が技能を習得した時の環境は酷似していた。そして、その環境とは以下のものだった。
1、良き指導者がいる
断っておくが、独学が悪いわけではない。独学でスキルを身につける方法も存在する。なぜなら、練習方法は調べればすぐにわかるからだ。webにはそういったものがいくらでも存在している。
だが問題は「その中で自分に適した練習方法がどれなのか」「今の状況に適した練習方法が何か」がわからないことだ。独学が難しいのは、そのためである。
例えば「腹筋」「トレーニング」で検索してみると良い。すぐに無数の腹筋のやり方が見つかるだろう。だが、自分に合っているトレーニングの方法がどれであるか分かる人は殆どいないはずだ。
従って、良い指導者の真のメリットは「自分にとって適切な練習方法を教えてもらえる」ことにある。逆に画一的な練習の指導であれば教えてもらう価値は半減してしまう。
2、アウトプットの場所がある
習得した技能は、何らかのアウトプットを伴わなければ良いフィードバックを受けることができない。
裏を返せば、自分の技能に対しての何らかの指摘がない状態では、到底上達は見込めない、ということでもある。
語学であれば実際にネイティブスピーカーと話したり、試験を受けたりすること、プログラミングであればソフトウェアを制作し、ソースコードをレビューされたり、販売したりすること、スポーツであれば試合をすることなどだ。
なお、練習を中心に据えてはいけない。練習はあくまでもある特定の課題に対して集中して改善に取り組むためのものだ。技能全般の向上のカギは実践である。
3、明確な目標を設定する
明確で、達成可能だと思える目標を持つことはモチベーションに大きく貢献する。
もちろん試合で勝つなど、アウトプットが評価されることも重要なのだが、日々の鍛錬の中でモチベーションにもっとも重要なのは、上達した実感である。そして、上達した実感は、目標の達成により得られるものだ。
実際、技能の習得に至る道筋がしっかりと決まっていれば、努力はそれほど難しくない。教え子に対して上達のステップを細分化し、達成感を得る頻度をふやすことは、有能なコーチであれば誰しもがやっていることだ。
4、鍛錬の時間を確保する
米国の著名なコラムニスト、マルコム・グラッドウェル氏は著書※1の中で、技術者、スポーツ選手、芸術家などにインタビューを行い、達人になるには「1万時間必要」という説を発表した。
1万時間という単位に根拠があるかどうかは議論の余地があるが「鍛錬の時間が必要」という部分において異論のある方はほとんどいないだろう。単純に言えば、毎日目の前に流れてくるものをこなしているだけでは技能を習得することはできない。
「鍛錬を行うのに必要な時間を確保する」という能動的な行動が必要だ。
余談だが、知人で「社会人になってから、日本にいながら英語を習得した」人物は、ほぼ例外なく毎日1時間程度の鍛錬を数年間、繰り返している。
5、競争する
誰を、何を競争相手とするかによって、技能の方向性は大きく変わってくる。逆に言えば、一定のレベルに達したら、競争する相手により技能の特化の方向が見える。これが「強みを見つける」という行為だ。
したがって趣味程度なら競争は不要だが、「使える技能」となると、競争に晒されなければならない。
技能はアップデートが必要とされる。そして、最新の技能は定式化されていないことがほとんどであり、アップデートをするには他者との競争を通じて行う他はない。
(2025/7/14更新)
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。
<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは
【ご視聴方法】
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当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【今回のトーク概要】
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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