就職活動の面接で、こう聞かれたことがある。
「あなたは、自分のために動く人ですか? 他人のために動く人ですか?」
何を意図して、このような質問をされているのか、すぐには理解できなかった。
私が戸惑っていたからだろうか。面接官は説明を付け加えた。
「つまり、あなたは何が原動力となって動く人なのかどうかを知りたいってことですよ。100%自分のため、100%他人のためという人はあまりいないけれど、基本的にどちらが原動力になっているかは、人によって分かれるところだからね」
そういうことか。私は少し考えたあと、こう答えた。
「私は、自分のために動く人だと思います」
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少し不安そうな顔で答えていたのだと思う。私の答えを聞いて、面接官は「どちらが良くて、どちらが悪いという話ではないからね」と言った。
「自分のために動く人は自己中心的で、他人のために動く人は思いやりがあるという印象が強いみたいで、前者がダメで後者のほうが良いと思われがちだけれど、僕はそうは思わない。
組織は、自分のために動く人も他人のために動く人もいて成り立っている。ただ、会社として社員の原動力がどちらにあるのかは知っておきたいし、あなた自身も知っておいたほうが働きやすいと思う」
説明を聞いて納得した。当時は実感の伴わない納得感だったが、働き始めて1年と数ヶ月が経ち、実感が伴うようになった。
どのような実感が湧いたのかというと、
「組織には、自分のために動く人も、他人のために動く人もいるということ」
についてだ。
私自身が自分のために動く人だからか、他の人もそうだろうと思っていた。「人のため」と言いつつ、結局はみんな自分のために動いているのだろうと思っていたのだ。
誰かの役に立つことで自分も嬉しくなるから、という意味ではみんな最終的には自分のために動いているとも言えるが、「誰かの役に立ちたい」という思いを本当に持って動いている人もたくさんいることに気づかされたのは、働き始めてからだった。
そして面接時の「どちらかといえば自分のためかな」といったぼんやりした思いが、「私は本当に自分のためにしか動けない人なんだ」という確信に変わったのも、働き始めてからだった。
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そんな「自分のためにしか動けない」私が、最近「この人の役に立ちたい」と思った話をする。
その人は、「人の役に立ちたい」という思いを持って事業を運営している人だった。仕事のできる人で社会的地位もある人だったが、「人の役に立つことがしたい」と事業をスタートした。貯金を崩しながら、収益化できるように全力を尽くしている。理解されずにつらい思いをすることもあると言っていた。
生きるために必要なお金が手に入るかどうかも定かではないのに、つらい思いまでして「人の役に立つ」事業をしようとしている。敬意を払わずにはいられない人とは、まさにこういう人のことを指すのだと思った。そして、私にできることなら協力したいと思った。
最初は、協力したいという思いはほとんどなく、単純に「おもしろそうだから」その人に会った。私は基本的に興味の有無で行動が決まる人であり、「おもしろそう」と感じればすぐにやってみるし、「おもしろそう」だと思えなければ、なかなか行動にうつせない人である。
それでも、その人の話を聞いて、「この人の役に立つことがしたい」という気持ちが湧いてきた。この気持ちが湧いてこなくても、私は「自分のために」関わらせてもらうことになったと思う。でも、「この人の役に立つことがしたい」という気持ちが湧いてからは、関わっている時の喜びに「この人の役に立てている」という思いが加わり、とても幸せな気持ちになった。
人のために動く人の気持ちが、少しだけわかった気がした。
「ビジネスではWin-Win関係を築くことが大切」だとか「世の中はGive & Takeの関係で成り立っている」だとかよく聞くけれど、もっとシンプルに、「役に立ちたい」という思いが集まって関係性が築かれたりすることもあるのだ。
そうではないこともたくさんあるだろうし、「世の中そんなに甘くない」「ビジネスはもっとシビアなものだ」といった意見もあるだろう。
実際、働き始めてから、やっぱり仕事はシビアなものだと感じることは何度もあったし、優しさだけで成り立つビジネスなんて存在しないとも思っている。それでも、「役に立ちたい」という思いは、私が思っているよりもたくさん転がっているのかもしれない。
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この記事を読み返してみて、先輩に「あなたは基本的に性善説だよね」と言われたことをふと思い出した。
ではまた!
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[プロフィール]
名前: きゅうり(矢野 友理)←名前をクリックすると記事一覧が表示されます
2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。
著書「[STUDY HACKER]数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」」(マイナビ、2015)
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ブログ:「微男微女」













