残念なアンケート結果を目にした。

中学生に「大人に対するイメージ」を聞いたところ、

「疲れている」(88.5%)

「大変そう」(87.5%)

「楽しくなさそう」(66.5%)

という答えが上位3位を占めたというのだ。

 

高校生の結果になるともっと悲惨で

「大変そう」(93.5%)

「疲れている」(92.5%)

「楽しくなさそう」(73.5%)となっている。

(参考:ソニー生命調べ

 

この結果を見て、ドキッとした”大人”の方も多いのではないだろうか。

現在、労働環境の改善を迫られている日本。

それは、いま働いている労働者たちのためだけではなく、将来働く子どもたちのためにも必要なものである、と痛感させられるアンケート結果だ。

 

仕事=つらいという認識

3年前、わたしは大学4年生だった。この時期にはもうみんな就職先が決まっていて、「人生最後の自由時間」とばかりに、思い出作りにいそしんでいた。

そこで驚いたのは、だれひとりとして「就職すること」を楽しみにしていなかったことだ。

 

学生生活が終わることに、感慨深くなるのはわかる。

それでも努力して内定をもらったのだから、「どんな会社か楽しみだ」「就職の前に勉強しておこう」となっているかと思いきや、みんな「いま遊んどかないと!」と言っているのである。びっくりだ。

 

また、現在25歳のわたしたち世代は、「サラリーマン」と同義語のように、「社蓄」という言葉を使うことがある。

「残業で飲み会に遅れる!社蓄つらい」

「これから40年社蓄やるってやばくない?」

「連休とか社蓄には関係ないからな~」

といった感じだ。

学生や20代の若者ですら、すでに「仕事はつらいもの」という認識になってしまっている。

 

人生の大半の期間で、「仕事」は大きな割合を占めている。

その仕事にネガティブなイメージを持っているから、働いている大人に対してもネガティブなイメージになっているのかもしれない。

「大人は大変」「大人はいつも疲れている」というアンケート結果になるということは、言い方を換えれば、「生き生きと仕事をしている大人が少ない」ということになるんじゃないだろうか。

 

子どもたちは疲れた背中を見て育つ

「親の背中を見て育つ」と言うように、子どもたちは常に、親を含め、大人の背中を見ている。

 

わたしも「大人=疲れている、大変だ」と思う若者のひとりだ。

(とはいえ20代も半ばなので、わたしも”大人”ではあるのだが)

 

学生時代、電車の中で見かけるサラリーマンは、かなりの確率でくたびれていた。

酔っ払ってフラフラな人だっているし、気を失ったように寝ている人もいる。居酒屋のバイトをしているとき、いたるところから職場の愚痴が聞こえてきた。

 

日本ではスーツを着て毎日出勤する企業勤めの人が多いから、

サラリーマン=大人+サラリーマン=大変→サラリーマン=大変

という認識になっていったのだ。

 

アンケートで大人に対してネガティブなイメージを答えた中高生も、きっと同じ大人の姿を見ている。

「仕事のせいで大人たちは大変そう、疲れている」と。

 

楽しそうに仕事をして、「充実した人生だ」と胸を張れる”大人”はどれくらいいるのだろうか。

サラリーマンが多い日本社会で、子どもたちに「仕事の楽しさ」を教えられる人はどれくらいいるのだろうか。

「仕事は楽しむものである」という背中を見せないと、子どもたちは働くことにネガティブなイメージを持ってしまう。

 

それでは労働意欲も上がらないし、極論、「働かない」という選択肢を選ぶ人がいたっておかしくはない。

仕事を楽しそうにしている大人がいなければ、子どもたち世代も「仕事=楽しくないもの」と認識してしまうのだ。

 

苦労話ではなく「人生の楽しさ」を語ってほしい

働き方改革というと、現在働いている人に注目しがちだ。

もちろんそれは、最重要と言える。

 

だが働き方改革で大切なのは、労働環境の改善だけでなく、労働環境改善により大人たちが人生を楽しんで、その背中を子どもたちに見せることなんじゃないだろうか。

 

人生の先輩たちは、往々にして過去の苦労話を披露したがる。

どれだけ大変で、どれだけしんどかったかをアピールし、それを乗り越えたからいまの自分がある、と語るのだ。

 

苦労話や経験談に価値がないわけではない。しかし、苦労したことをアピールすればするほど、下の世代は「大人は大変」というネガティブなイメージを持つようになってしまう。

それならばいっそのこと、「どれだけ人生が楽しいか」を、人生の先輩にはアピールしてもらいたい。

 

「自分が若いときは大変だった」を「若いときこういうスキルを身に着けたから、いますごく助かってる」に。

「昔はもっときついノルマをこなしていた」を「ノルマが減った分趣味を楽しんでる」に。

「仕事はイヤでもやらなきゃいけないから仕方ない」を「自分の仕事にはこんなやりがいがある」に。

 

仕事を楽しんで輝いている大人がいることを知れば、中高生が「大人は疲れている」なんてイメージは持たないはずだ。

それどころか、「将来こんな大人になるために勉強をがんばろう」とか、「将来の夢を探そう」とか、自分の未来にも希望を持てる。

子どもたちに人生を楽しんでいるカッコイイ背中を見せるためにはやはり、いま働いている”大人”たちが輝ける環境が必要だ。

 

自分の背中が子どもたちにとって誇れるものであるか、もう一度考えてみるといいかもしれない。

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)

 

【プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

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(Photo:Eduardo Meza Soto