根性論は嫌われる。まあ、嫌われるのも無理はない。
根性があればなんでも解決する。と言うのは嘘だし、物事の不調の原因をすぐに「根性が足りないから」で片づけようとするのは、頭を使っていない証拠だ。
それにもかかわらず、なぜ根性を強調する人が後を絶たないのか。いや、むしろ「できる人たち」ほど「結局最後は根性だよね」と言ってしまうのか。
それは、極めて仕事ができる、トップ5パーセントの中での戦いにおいては「結局根性がモノを言う」が真実だからだ。
例えば、こんな話を想定してほしい。
ここに一人の人がいる。もともと能力が高かったので、学校の勉強などはあまり苦労せずに頭一つ抜けることができた。そして就職も、持ち前の機転と学歴もあり、有名所にひとまず滑り込む。
ところが、彼は就職してから気づく。その中での戦いが熾烈であることを。
それなりに能力が高い人同士の戦いは、センスだけでは絶対に勝てない。粘り強く、時間をかけて1つのことを極めていく必要がある。
そして、彼は努力の継続こそ、本質であることを知る。
もちろん、努力を継続すればそれなりの結果が出すことができるようになる。結果、彼はようやく、それなりの地位を得る。
しかし、それに勝ち残った人たちは、さらに過酷な競争に投げ込まれる。皆、才能があり、粘り強さも兼ね備えている。
その中で更に上位を目指すのは、これはもう完全に根性の世界だ。
軍事心理学者のマイケル・マシューズは、米陸軍士官学校ウエストポイントでの教官を通じ、次のことを知った。
マシューズが驚いたのは、困難に対処する力は、才能とはほとんど関係ないということだった。訓練の途中でやめていった者たちは、才能がなくて辞めたわけではない。それよりも重要なのは、マシューズの言葉を借りれば、「絶対にあきらめない」という態度だった。*1
彼らは仕事の質や工夫において手を抜くことはしない。手を抜かないのは当たり前なのだ。あとはもう、どれだけプライベートを犠牲にしても目的達成のためにやりきるかなのだ。
そして、彼は確信するに至る。「結局、最後は根性だ」と。
これが「できる人たち」がなぜ、「結局最後は、根性だよね」という理由だ。
勘違いしてはいけないのは、彼らは根性があるから、仕事ができるようになったわけではない、ということだ。もともと仕事ができる素養があり、その中でトップを目指す時に、「根性」が要求されただけである。
*****
一方で、結局才能だよね、という方がいるが、実は才能は「入り口」で役に立つ。
才能は初心者の段階で「苦労せずに上達した」「オモシロイと思った」「素人集団の中で抜きん出ることができた」というきっかけを与えるものである。
カナダの心理学者、ロジャー・バーンズリーは、カナダのプロアイスホッケー選手の誕生日を調査したところ、なんと全選手の40%は1月〜3月生まれだった。
果たして、1月〜3月生まれが多いのは偶然なのだろうか?
そうではない。カナダではクラスの年齢を区切る日が1月1日に設定されているので、当然、1月生まれの選手のほうが、最大で1年、時間的に有利なのだ。*2
早いうちに才覚を見せた人間は、引き上げられ、良い環境を得る。
そして、それがそのまま「一流」につながっている。良い環境を得られるかどうかは、「才能」と「運」に依存する。
*****
だから、一見逆説的に見えるが「できる人」は、初心者に根性を要求してはならない。まずは知恵を絞って、楽にやれる方法、結果を出せる方法を模索する。
そして、その中で「強みを発揮できそうな」その人物にだけいうのだ、
「結局、ハイレベルな戦いにおいては根性だ。」
と。
(2025/6/16更新)
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第4回目のお知らせ。
<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第4回テーマ 地方創生×教育
2025年ティネクトでは地方創生に関する話題提供を目的として、トークイベントを定期的に開催しています。
地方創生に関心のある企業や個人を対象に、実際の成功事例を深掘りし、地方創生の可能性や具体的なプロセスを語る番組。リスナーが自身の事業や取り組みに活かせるヒントを提供します。
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【ゲスト】
森山正明(もりやま まさあき)
東京都府中市出身、中央大学文学部国史学科卒業。大学生の娘と息子をもつ二児の父。大学卒業後バックパッカーとして世界各地を巡り、その後、北京・香港・シンガポールにて20年間にわたり教育事業に携わる。シンガポールでは約3,000人規模の教育コミュニティを運営。
帰国後は東京、京都を経て、現在は北海道の小規模自治体に在住。2024年7月より同自治体の教育委員会で地域プロジェクトマネージャーを務め、2025年4月からは主幹兼指導主事として教育行政のマネジメントを担当。小規模自治体ならではの特性を活かし、日本の未来教育を見据えた挑戦を続けている。
教育活動家として日本各地の地域コミュニティとも幅広く連携。写真家、動画クリエイター、ライター、ドローンパイロット、ラジオパーソナリティなど多彩な顔を持つ。X(旧Twitter)のフォロワーは約24,000人、Google Mapsローカルガイドレベル10(投稿写真の総ビュー数は7億回以上)。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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