最近、小三の長男が、学校から借りてきた「三国志」を読むのに夢中になっていまして。

児童向けのハードカバーの三国志でして、四冊ある内の二巻を今読んでいます。

 

二巻の最後が赤壁の戦いのようで、「三巻早く読みたい!!!」と言っているのですが、なんか学校の図書館のスケジュールの関係でまだ借りられないようで地団太を踏んでいる模様。

本の続きが読みたくてじたばたする、というのは貴重な経験ですよね。

 

三国志 1 英傑雄飛の巻

三国志 1 英傑雄飛の巻

  • 渡辺 仙州,佐竹 美保
  • 偕成社
  • 価格¥1,760(2025/06/15 16:44時点)
  • 発売日2005/03/01
  • 商品ランキング230,140位

 

上が長男が読んでいる三国志でして、渡辺仙州という方が翻訳したバージョンのようです。

正直なところ、最初は「まあ児童向けだろ?」と侮っていたのですが、私も自分で読んでみて認識を改めました。なかなか侮れません、このバージョン。

 

 ・基本は演義ベースなのだが、適度に正史と演義のいいとこどりをしており、人物像に違和感がない

・策略や作戦について、意図や結果、戦術的な推移まできちんと記載している

・表現におおげさなところがなく、平易で読みやすい

・度量衡の表や地図のような補足資料が載っていて分かりやすい

・上段に、ことあるごとに武将のイラストと紹介が記載されて、「こいつ誰だっけ?」ということが起きにくい

 

 特徴としてはこんな感じなのですが、「児童にとっての読みやすさと、物語としての三国志の面白さ」をきちんと両立させていて、よくできたバージョンだなーと感心しました。

 

個人的には、特に一つ目の「正史と演義のいいとこどり」が大きなポイントでした。

演義は「正史をもとにした小説」であって、キャラクターの描写や性格に、羅貫中の独自解釈がかなりの部分入っております。特に劉備の優等生っぷりやら曹操の描写やら、ちょっと大げさに描かれ過ぎていて違和感が強い部分が結構あると思うのです。

 ところが、このバージョンだと人物描写について正史色が強く、劉備は戦術指揮官としてしたたかで有能だけど決して聖人君子ではありませんし、演義でチョイ役にされてしまった武将がちゃんと史実通りの活躍をしていたりします。演義だと特に魏の諸将がだいぶワリを食ってしまっているのですが、そこもだいぶ軽減されているんですね。

 

ただし、決して「リアル描写」「正史ベース」にこだわっている訳ではなく、物語として面白いところはきちんと物語として描写されています。

桃園トリオは三人がかりで呂布と刃を交えますし、孔明は十万本の矢を集めますし、于吉は孫策を呪い殺してしまいますし、ホウ統は赤壁の戦いで活躍しますし。「人物描写は正史寄り、エピソードは演義寄り」とでもいうべきでしょうか。

まさに「いいとこどり」というべき構成です。

 

吉川三国志や、正史三国志を敬遠していた人でも、このバージョンは面白く読めるかもしれないなーと思った次第です。三国志に興味はあれど、今まで触れていなかった、という方には結構お勧めです。

 

 それはそうと。

 長男が夢中になって三国志を読んでいるのを見ると、「ああ、そもそも演義だ正史だっていうのも、物語を楽しむ上では余計な思考なのかなあ」と思ったわけです。

 長男は小学三年生でして、私の「三国志大戦」のカードを見て三国志に興味を持ちました。勿論、演義と正史の違いなんて殆ど知りませんし、光栄の三國志も遊んだことがないですし、歴史上の知識についても非常にフラットです。

 

そんな彼の三国志感想を聞いていると、「孔明凄い頭いいね!!」とか、「長坂の趙雲!!すごいね!!趙雲もすっごく強いんだね!!」とか、「呂布って滅茶苦茶強いんだね!!最後やられちゃうけど」とか、「賈クって、言うこと全部当たって物凄い賢いね!!」とか、とにかく「武将や軍師たちの活躍に、凄くピュアに感動している」んですよね。

 

 実際あったことなのかどうか、なんて関係ない。戦術的に成立する描写なのかどうか、なんて問題じゃない。ただ、かっこいい武将や賢い軍師たちが大活躍するのをみて、純粋にワクワクするし、感動する。

 ああ、そうだなーと。物語としての三国志の楽しみ方って、本来こうだよなー、これでいいんだよ、と思った訳なんです。

 

 

物語をフラットに楽しむ、というのは、大人になればなるほど難しくなっていきます。知識が増えるのは勿論大事なことなんですが、時にはその知識が「素直に物語を楽しむ」ことを邪魔してしまう。

創作について、「リアルじゃないから」という理由で楽しめなくなってしまうことがその最たる例だと思うんですが、事情を知ってしまえば知ってしまう程、単純な物語としては楽しめなくなってしまうってこと、結構多いと思うんです。

 

心が汚れた私のような大人(三国志大戦的に言うと呂布ワラ使い)が、

賈クを見て「離間の計範囲広過ぎやろナーフしろください」とか、

ホウ統を見て「ごめん連環の計だけは勘弁してください」とか、

諸葛亮を見て「なんでこいつ無双でビーム撃ってたん」とか、

徐庶を見て「ごめんなんこの人落雷の計とか使うの?雷関係なくない?」とか。

そういう余計なことを考えるのは、いやそれはそれで一つの楽しみ方ですけど、やっぱりピュアな楽しみ方とは言わないと思うわけです。

 

 そういう意味では、まだ三国志について何も知らない内に、三国志という物語に初めて触れることが出来たのは、長男にとってとても良い体験だったんじゃないかなあと。

これからも、先入観がない内にいろんな本に興味が持てるようにしてあげたいなあと。

 そして、我々大人としても、時には余計な思考を捨てて、場合によっては考証やリアリティのことすら忘れて、単純に物語に没入してみてもいいんじゃないかなあと、そんな風に思ったわけです。

 

 もう少し経って、長男がいろんな疑問を持つようになったら正史と演義について詳しく教えようと思いますが、それまでは口出ししないでおこうと思った次第です。

 

 

ただ、「〇〇と××が戦ったらどっちが勝つ?」ということにこだわるのはやはり男の子だなーと思いまして。

物語的には呂布最強の筈なんで、一騎打ちで戦ったら大体呂布が勝つんじゃない、という話なんですが、何故か

「程踖と荀鄷が戦ったらどっちが勝つの?」

という質問にはお前なんでその二人を戦わせようと思ったんだよ、とちょっと思いました。

 

いやまあ、作戦指揮っていう意味では奮武将軍で直接軍を指揮した経験が多い程踖が勝つような気がしますし、殴り合いなら20歳くらい若い荀鄷が勝つような気はしますが…。いや程踖の方が体格が良かったらしいから微妙なんでしょうか。謎です。

 

 あと、何か疑問が出来たらすぐ私に聞いてくるのも長男のいいところだと思うんですが、

「はちもんきんさ、ってなんでいい門と悪い門があるの?外から見て分かるの?」と聞かれても咄嗟には答えられませんし、

「程遠志、もうちょっと活躍出来ればよかったのにね…」「程遠志すぐ死んじゃって可哀想だね…」と言われても「せやな…」としか答えられていません。不甲斐ない父親ですいません。

 

あ、程遠志っていうのは黄巾賊の指揮官の一人で、物語最序盤で死にます。程遠志好き過ぎだろ長男。

 

 今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

【プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

 

(Photo:kanegen)