先日、レオパレスの『手抜き工事』が話題になった。

私も何度か遭遇してしまったことがある。

数年前「会社の照明をLEDに変えて欲しい」との依頼があったので現場に行ってみると……

照明器具を開けてビックリ!

以前に工事したハズの装置が……

無い!

 

その取付け作業は「下請け業者」に依頼して作業完了の報告はバッチリ受けている。

ということは…………?

下請け業者は「仕事やっときましたよ~」とウソをついて、まったく作業せずに、お金だけを貰っていることになる。

「そんなバカな!」だ。

もし作業してなかったことがクライアントにバレたらどうする……?(よく気付かれなかったなぁと思う)

 

……下請け業者が作業していないことに気づいた私は、すぐに先輩に相談を持ち掛けました。

しかし……先輩は言う

「仕方がない」

困惑する私に、先輩はこう説明してくれました。

① 我が社は下請け業者さんに対して、物凄く安いお金しか払えていない。(払えない)

② 遠方の現場でも我が社は無理を言って、頭を下げて下請け業者さんにお願いしている。

③ うちの会社の条件で下請けをやってくれる会社は他には無い。

④ 「下請け」とは言っても実は立場が弱いのはコチラの方。

⑤ 下請けの方々に切られたら我が社はオシマイ。だからこの件は黙っているしかない。

⑥ たまに手抜きはするけど、大体はちゃんとやってくれるから気にするな。

つまり下請け業者は……我が社の割に合わないクソ安い仕事を度々請けてくれてはいるが、利益を出すために、たま~に『手抜き工事』をしているのだ。

そして我が社はそれを黙認するしかない。

たまに「仕事をせずに帰ってました」って?

あまりに自由過ぎる。

 

しかし・・驚くべきは全く作業していないにも関わらず、作業員達が汗をにじませながら

「やりました~」と言うだけで、クライアント達も特に確認せず、コロッと騙されてしまうことだ。

スーツを着ている人の話は疑うのに、作業服を着ている人の話はつい信じてしまう。

状況によって、そういう現象は多々ある。

 

……ある日は、「キッチンの水が流れない」という依頼を受けてマンションの一室に向かいました。

そこは初老のご婦人が一人暮らしをしている部屋だった。

キッチンの排水溝を『管内カメラ』で調べてみると……

管の中で『油』が固まっており、水の通りが悪くなっていた。

すぐに小型の高圧洗浄機で油を削って、管内の詰まりはキレイさっぱり解消した。

よくある簡単な作業ですから、20分ほどで作業は完了。

 

「作業費は1万円頂きます!」と……言いたい所ですが……うちは小さな設備屋ですし……ご近所だから「5000円」で良い。

正直……一人暮らしのご婦人相手ですから、人情的に値段設定も甘くするよう言われていた。

するとご婦人はハイハイと財布を取り出しながら……「ちょっと前にも直してもらったんだけどねぇ……」とボソッとつぶやいた。

(むむっ!?)聞き捨てならない話である。

ご婦人に事情を尋ねてみると……数日前にも「別の業者」を呼んで排水管の詰まりを直してもらったらしい。

ところが!

その業者さんは部屋に入ると、詰まっている排水溝の中も見ずに、『謎の液体』をタタタッと垂らして……

「コレでもう大丈夫!明日には詰まりが直ってますよ!」

と言って帰ってしまったらしい。

いやいや……なおるワケが無い。

「油の塊」はゴムのように硬い。なので薬品だけで解決するのは非常に困難です。

そもそも排水管の中を確認せず薬品を垂らすのはオカシイ。なぜなら排水に『スポンジ』や『タワシ』なんかが詰まって水が流れない可能性もありますよね?

で……当たり前の話ですが……次の日になってもキッチンは詰まったまま。

水は流れない!

そこで急遽、私が呼ばれたとのこと。

(手抜き……というか詐欺じゃなかろうか?)とか思ったが・・気安く同業者の悪口は言えない。

するとご婦人が「コレ見てよ!」と言って
明細書を持ってきた。

その明細を見てさらに驚いた。

なんとその業者・・実質なにもしていないのにも関わらず、ご婦人に対して「4万円」近くの請求をしていたのです。

やりました!と言って実は何もやってない!その上さらに高額な請求をしてくる。

こんな一人暮らしのご婦人にすることか?……さすがにあくどい。

作業した業者はテレビCMなどでも見かける大手……のカンバンを背負ってはいるけれど、実際は下請け(協力業者)である。詳しい素性はわからない。

私が状況を説明すると初老のご婦人は「まさか職人さんがウソを付くなんて思わなかった!」と嘆いていた。

なるほど・・たしかに昔の「職人」と呼ばれた人たちは、確かな技術と誇りを持って仕事をしていたのかもしれない。

でも時代は変わった。

現代では、『ある程度の作業』だったら、ユーチューブで検索すれば出来てしまう。

プロが動画で色んな作業をメチャクチャ丁寧に解説してくれている。

(私も動画を見ながら作業することもあった)

 

良いさ、それで問題は無い。

「安くやってくれ!早くやってくれ!雑で良い!」と求めるクライアントは多かった。

だから我々も効率を考えて、手を抜ける部分は思いっきり手を抜いた。

しかし手を抜き続けることで、仕事に対する誇りや気概は消えていった。作業は楽になったが、仕事は苦痛になった。

効率は大切であるし、手抜きの存在は認めなければいけない。

しかし良い手抜きと悪い手抜きがある。

その手抜きは良い手抜きなのか?悪い手抜きなのか?守るべきプライドか?捨てるべきプライドか?

選択を誤らないで欲しい。

おわり

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

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(2025/6/2更新)

 

【プロフィール】

著者名:ハルオサン

18歳で警察官をクビになってから、社会の闇をさまよい続けた結果、こんなことを書いて生活するようになってしまいました。

『警察官クビになってからブログ』⇒keikubi.co

ツイッター⇒https://twitter.com/keikubi123