土曜日、大学生の時に入っていたセクシュアル・マイノリティサークルの就活セミナーに行ってきた。

LGBT就活セミナー」という名の集いだが、企業がバックについているような、いわゆる“就活イベント・採用イベント”とは異なり、卒業生が会社とは関係なく完全に個人として講演するセミナーである。

企業が絡んでいないので、より実態に近い話が聞け、プライベートな話やぶっちゃけトークなどもあったりして、非常に面白い。

 

私は学生ではないので就活のために参加したわけではなく、かと言って卒業生として講演するために参加したわけでもなく、ただ久しぶりにサークルの人たちに会いたかったのと、いろんな人の話を聞けるのが楽しみで参加した。

 (実はこのイベントは2回目の開催で、1年前に参加した時に考えたことは次のリンク先の記事で綴っている。

メッセージを伝える際に気をつけようと思ったこと。

 

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さて、セミナーの講演で考えさせられたことがあるので、以下で書いていきたいと思う。

 

最初に結論を言ってしまうと、「スキルを身につけること」や「仕事で成果を出すこと」は大事だという身も蓋もない話になる。

ただ、これらはよくポジティブな意味で語られるが、今回の講演では「スキルを身につけて市場価値の高い人間になろう」とか、「成果を出し続け、成長しよう」といったことではない。

≪自分の身を守るため≫といういわばディフェンシブな意味において、非常に大切だと感じた、というのがポイントだ。

 

まず、スキルについて。

もちろん、どんな人でもスキルがあるに越したことはないのは事実だ。だが、LGBTがそうでない人と違うのは、カミングアウトをしたときのリスクを負っているという点にある。

 

会社の人に対してカミングアウトをする場合、どのように受け止められるかはしてみないとわからない。

「絶対に受け止めてもらえない」という環境でカミングアウトをする人はあまりいないだろうから、大抵はある程度大丈夫だという思いがあってする。

だが、それでもカミングアウトをして居心地が悪くなるリスクは完全にゼロではない。

 

そう考えると、スキルを身につけてからカミングアウトしたほうが安心だ。もし居心地が悪くなったら、その会社にしがみつくのではなく、転職すればよいのだから。

 

そしてもう1つ、仕事で成果を出すことの重要性について。

「成果が大事なんて、当たり前のことじゃないか」と言われるかもしれない。

それでもあえて取り上げたのは、セミナーで出てきた「実績がないうちにカミングアウトするより、仕事で認められてからカミングアウトしたほうがリスクが少ない」という意見に納得したからだ。

 

仕事で成果を出していれば、どんな人間だろうと、誰も文句は言わない。

私が勤めている会社も、特別にLGBTフレンドリーな会社というわけではないけれど、「仕事さえしてくれれば性的指向や性自認は何であっても構わない」というスタンスなので、近いものを感じた。

 

もちろん、理想を言えば仕事ができるできないにかかわらず、性的指向や性自認は否定されるべきではない。これは前提としてある。

特に、世間に訴え、社会を変えていこうと活動する場合においては、理想に向かって進んでいくことに大きな意義があると感じている。

 

しかし一方で、社会を変えていくのではなく、今目の前にある問題をどうするかという個人的な話になった場合、理想と違う現実に苦しむのは避けたいところである。

何の戦略もなしにカミングアウトをして、受け入れてもらえなかったとき、傷つくのは他でもない、自分なのだ。

 

私は今の会社で働く前からバイセクシュアルであることをオープンにしていたので、成果を出さないうちからカミングアウトをしていたような状態だったが、幸いにも居心地の悪さは感じていない(そう確信していたからこそ、この会社を選んだというのもある)。

しかし、すべての会社がそうであるとは限らない。そう考えると、リスクを極力減らすという点で、仕事で実績ができてからカミングアウトをするという戦略は非常に有効であると感じた。

 

思うに、LGBTに限らず、「人と違うこと」を受け入れてもらうためには、それ以外の部分で認めてもらっていることが条件になってくるのではないだろうか。

昨今の日本では「自分らしく働くこと」や「ありのままの自分でいられる場所」の価値が高くなってきており、それ自体は良い流れだと感じているのだが、逆の立場、つまり「あなたらしさ」や「ありのままのあなた」を受け入れる側の立場になって考えてみると、「そんなことはどうでもいいから、とりあえず仕事してくれる?」と言いたくなるのも、よくわかる。

 

それならそうと割り切って、まずは仕事で認めてもらい、その上で“自分”を出していった方が、余計なリスクを回避できるだろう。

もちろん、繰り返しになるが、仕事の実績にかかわらず、セクシュアリティを含め「人と違うこと」は差別の対象となってはならないし、否定されるべきではないということは前提としてあり、あくまで自分へのダメージを減らすための戦略としての話をしている。

 

☆★☆

 

正しいことを言っていても、受け止めてもらえないことはいくらでもある。

嘆いていても仕方ない。

そう感じることが増えてきた。

 

今はLGBTがある種のブームになっているようにも感じられ、社会の流れとしても段々とカミングアウトしやすい環境になってきていることは間違いない。

 

とは言っても、差別や偏見が完全になくなることは残念ながらないだろう。自分にとって理想的な社会でないのなら、スキルを身につけ、仕事で成果を出すことが、言い方は悪いかもしれないけれど「社会と折り合いをつける」ための最も簡単で有効的なやり方と言えるのではないだろうか。

成果ほど説得力のあるものは、たぶんなかなか見つからない。

 

そしてこれはLGBTに限った話ではなく、誰にとっても言えることなのだと思う。

 

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(2025/3/18更新)

 

【著者プロフィール】

名前: きゅうり(矢野 友理)

2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。

【著書】

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(Photo:Carsten ten Brink