なんというか、世の中には、「自由な、型にはまらない発想」というものを礼賛するあまり、却って「発想」を表現出来る機会を奪っているような、そんな傾向があるような気がするんですよ。

 

8月も初旬を過ぎて、世間はすっかり夏休み色一色になりました。

しんざきは激しく暑さに弱い体質でして、自分にライブラを使えば「あつさによわい」「直射日光によわい」「高温多湿によわい」「よわいったらよわい」と表示されること間違いない感じなんですが、この季節は本当に外を歩いているだけで、継続ダメージによる死が見えてきます。

ワルキューレの冒険で言うと毒沼歩いてるようなもんです。お互い熱中症には気を付けましょう。

 

「自由研究」の話をします。

 

毎年、小学校の夏休みの宿題に「自由研究」が出ます。

先日まで知らなかったんですが、これ、別に学習要領に「自由研究」という項目がちゃんと定義されている訳ではなく、どう指導するかはかなりの部分学校側の自由裁量に委任されているみたいですね。

学習要領に「自由研究」という項目がちゃんと定義されていたのは、戦後のほんの一時期のようです。

(参照 学習指導要領 一般編‐試案‐(抄)(昭和二十二年三月二十日))

 

で、以前、学校の「自由研究」についての親側・先生側プリントを観る機会があったんですが、それについてちょっと思うところがあったんですよ。

一言で言ってしまうと、「子どもの自由な、型にはまらない発想」を重視する内容であって、その為ひな型や形式を定めない、子どもの考えに任せる、ということを重視する内容だったんです。

 

その時も思ったんですが、それ、ちょっと違うんじゃねえかなあ、と。

「自由な発想」を重視すればこそ、始めにきちんと「形式」を教えてあげないといけないんじゃないかなあ、と、私は思ったんですよ。

 

***

 

以前、「作文が書けない子」について書いた時にも同じようなことを書いたんですが、考えを文章にする時、人間は必ず「発想」と「表現」という二つのプロセスを経ることになります。

 

「作文が書けない子」に本当に必要な訓練の話

「書く」という行為には、大きく「発想」と「表現」という二つのプロセスがあります。

つまり、

・何を書きたいのかを考える

・考えた内容を言葉に落とす

という段階を経なくてはいけない。これに例外はありません。

どんな文章でも、必ず、例外なく、この二つのステップを踏んでいます。

「何を書きたいか」「何を言いたいか」ということ自体は頭の中にあっても、それを文章という形に整える為には、「表現」というプロセスを経なくてはいけない。

前段が「発想」であって、後段が「表現」です。

で、これ、文章だけの話ではないんですよね。「発想と表現」って、あらゆることに当てはまる普遍的なテーマだと思うんです。

 

確かに、「発想」って大事なんですよ。

自由なアイディア。型にはまらない、みずみずしい着想。それが大事であって、時にはそこから物凄いものが産まれ得る、ということも確かです。それは否定しません。

 

しかし、「表現」なしに形を得ることが出来る「発想」は存在しない。

どんな「発想」であっても必ず「表現」はワンセットであって、ある程度ちゃんと「形にする」というノウハウがないと、折角の「発想」も絶対に日の目をみないんです。

 

どうも、この単純な事実を忘れている人が、世の中には案外多いような気がするんですよ。

「自由な発想を」という割りに、それを形にする為の表現手法については指導しない。

うっかりすると、「自由な発想」の為には、型にはまった手法なんてものは邪魔だというくらいに考えている。

 

勿体ないよなーと。

 

見逃せない問題として、「発想」自体も、「表現」手法を身に着けているかどうかによって質が変わってくる、という要素があります。

アイディアは、決して無の状態から生まれてくるわけではないんですね。

 

ある程度決まったノウハウ、ある程度決まった回路があって、そこに最初から蓄積されているものをこねくりまわすことによって、より優れた発想が生まれてきたりする。

いきなり何も知らない状態から「素晴らしいアイディア」が発生する訳ではなくって、そこには母体が必要なんです。

そして、その母体から上手いこと情報を切り出す為にも、ある種の整理能力が必要になる。

 

「自由研究」って、それ自体はとても良い機会だと思うんですよ。

自分でテーマを決めて、そのテーマについて調べて、それを形に出来る。

それはとてもスリリングな行為であって、子どもにとって科学的な考え方を身に着けるチャンスでもあり、「科学って楽しい」ということを実感してもらうチャンスでもあります。

 

ところが、一応毎年確認するんですが、学校でそういう「研究のアプローチ」みたいなものを教えてもらえるかというと、全くそういう訳ではないんですね。

形式もないし、ひな型もない。最低限の「例」くらいは提示されることもあるみたいですが、それに対してどんなアプローチをとればいいかとか、そういうことは「自由な発想」というお題目によって排斥されてしまっている。

ほんっとーーーに最低限のゴールしか提示されないんです。

 

ちゃうやろと。

型にはまらない為には、まず型を知らないといかんやろと。

 

そんな「研究のアプローチ」みたいな話、まだ小学生には早い、と思いますか?

私の考えは逆で、むしろ「型」を知ること自体は早ければ早い程いい、全てその通りに出来なくっても、そういうやり方があるんだということは早めに知っておくにこしたことはない、と思っているんです。

「中身」を考える時、「こんな器がある」と知っているかどうかでは、考える時の難易度も段違いだと思うんですよ。

 

勿論、学校の先生も忙しいので、十全な指導が出来ない場合もあることはよく分かるんですが、それにしても今の状況はちょっともったいないよなあと。

せめて自分の子どもくらいには、そういう「型」の存在自体は知っておいてもらいたいと。

 

長男はもう6年生なのである程度自分でテーマをコントロール出来るんですが、今年は小2の長女次女に、自由研究のアプローチについて初めて色々と話してみたんです。

 

***

 

そこまで細かい話ではないんですが、しんざき家では、子どもたちの自由研究に対して、大体こんなアプローチをしています。

 

・興味がある分野、試してみたいフィールドがあるかどうかをヒアリング

・そこから、証明したい仮説、ないし導きたいゴールを設定

・その仮説を証明する為にはどんなエビデンスが必要か、その目的を達成するにはどんな成果物が必要かを一緒に考える

・その成果物を得る為の計画を立て、スケジューリングする

・適宜進捗の見直しをしながら、その計画を実施する

・計画通りに実施できたかどうかは適宜振り返る

 

ごく一般的な実証研究のアプローチですよね。

勿論、テーマが科学的な実証研究になるとは限りませんので、実際のアプローチはエビデンス集積や分析とは異なってくる場合もままありますが、基本的な流れは毎回同じです。

 

今回の場合、最初にヒアリングした時点で長女次女の興味が「お菓子」になりまして、長女はお菓子作りとその記録というアプローチ、次女はお菓子をテーマとした物語を作るという非常にアクロバティックなテーマを選択したので、実際実施ターンにはお菓子作りの名手である奥様にほぼ頼りっぱなしになっているのですが、計画自体は結構きちんとしたものを作りました。

ただ、私が当初お菓子作りにかかる手間をよく理解していなかったので、これについては奥様の監修が入って、だいぶ修正されています。まあよくあることです。

 

最終的に、これを「自由研究」という成果物に落とし込む為には、更にもうちょっと細かい文章落とし込みの指導が必要なので、それはそれで別途実施しようと思っている次第なのです。

長女にせよ次女にせよ、最終的に彼女たちの自由研究がどんな成果を出すのか、私自身今から楽しみでもあります。

まあ、これを書いている時点ではまだ全然作りかけなんですけど。

 

***

 

勿論、これと同じことを皆がやればいいのに、という話ではありません。

十人子どもがいれば十種類の向き・不向きがあります。

学校によって、先生によって、最初から教えられる指導方針が異なることだってあるでしょう。

 

ただ、

・「発想」を形にする為に「表現」は不可欠であって、また「表現」のアプローチはある程度具体的に教えるべきである

・ただ「自由な発想を」といっているだけでは、自由な発想はいつまで経ってもちゃんとした形にならない

・自由研究は、「表現」のアプローチを身に着ける為の絶好の機会になり得る

という三点だけは、ある程度一般化してしまってもいいような気がしていまして、今後とも、「表現のテクニック」というものは子どもに都度伝えていきたいなあ、と。

 

そんな風に考えるわけなんです。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

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【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

(Photo:Ryu Hayano