現状の採用面接、特に面接官の質問の質についてはかなり多くの課題がある。例えば、こんな質問だ。
「あなたの強みは何ですか」
仮にあなたが求職者としたら、あなたはどう答えるだろうか。
実際には、学生や若手の求職者からはこんな回答がある。
「私の強みは、粘り強く物事を最後まで行うことです。例えば私が企画したプロジェクトにおいて、最初はなかなか結果が出ませんでしたが、諦めずに周りを巻き込んで最後までやり通しました。その結果、◯◯という大会で、準優勝出来ました。」
こういった回答では、あまり仕事の資質や適性を判断する材料にはならないことがわかる。中には「こんなテンプレート通りの回答をする応募者は欲しくない」という採用担当者もいるかもしれない。
だが、その指摘は的はずれである。この回答は「回答する側」の問題というよりはむしろ、「質問する側」の問題なのだ。
なぜなら、「強みは何ですか」という質問があまりにも曖昧で、かつどのような意図を持って質問されているのかがわかりにくいからだ。
果たして面接を受けている相手はこれに対してどう答えればよいのだろう。
「粘り強いです」という回答?
「経理スキルが高いです」という回答?
「友だちが多いです」という回答?
「強み」は、性格的な強みを聞かれているのか、スキルを聞かれているのか、実績を聞かれているのか、何を聞かれているのだろうか。この質問だけでは判断が難しい。
しかも、「なぜ強みを聞くのか」がわからないので、どのような回答が面接者にとって望ましいのか、あまりにも情報が少ない。
回答に筋が通っていれば良い、という面接者の方もいるかもしれないが、それであれば「強み」などという曖昧な質問ではなく、単に経歴や経験を説明させればよいはずである。
つまり、これは「下手な質問」の代表格である。他にも現場で見かける下手な質問は数多くある。
「印象に残った出来事を教えて下さい」(なんでそんなことを聞くのか?)
「うちは第一志望ですか?」(第一志望、って言って欲しいのかな?)
「仕事は楽しめる方ですか?」(はい、以外の回答は無いだろう!)
「自分はよく勉強する方だと思いますか?」(勉強しないという人がいるのだろうか?)
では、面接官はどうすればよいのだろうか。
役に立つ回答をして欲しければ、「質問の意図」を相手に知らせることだ。インタビューをするときは、必ず「質問の意図」を伝えていた。
精度の高い回答を受けたいなら、当然の配慮である。
「あなたが、ウチでうまく働けるかどうか、仕事の何に重きをおいているのか知りたいので、今までに印象深い仕事のエピソードを教えて頂いていいですか?」
という質問のほうが、
「印象深い仕事を教えて下さい」
という質問よりも精度の高い回答が来ることは予想がつく。
面接官は、応募者に質問の意図を伝えないことが多い。まるで取り調べである。
「なぜあんな質問をしたのか」と面接の後に聞くと、「◯◯」というように回答する人が欲しかった、という。
気持ちはわからなくはないが、これはほとんどクイズである。そんな面接では何もわからない。
面接においては、「質問の意図」を相手に知らせるのはほんとうに大事だ。さもなくば、「なぞなぞ」を相手に答えさせているのとほとんど同じである。
「雇用のミスマッチ」は、面接の段階からすでに始まっているのだ。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
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<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
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3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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【大学探訪記Vol.5】銀幕スターを通じて「戦後の日本人」を解き明かす
【大学探訪記 Vol.4】ベトナムの人材育成を支援したい!と、ベトナムに単身渡る女子大生
【大学探訪記 Vol.3】プロ野球に統計学を適用するとどうなるか?
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