お金とやりがい、どちらを取りますか?という質問をする方がいる。しかし、この問いは、残念ながら的を外しているかもしれない。
ある製造業の会社に訪問した時の話だ。経営者と採用について話をしていたとき、私は一つの考えさせられる意見を聞いた。
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「金もやりがいも欲しい人しか、採用したくないですよ。」
と、その経営者は言った。
「お金なんかいらない、なんて嘘じゃないですか。私は嘘は嫌いです。あるいは、やりがいなんていらない。お金だけください、なんて、そんな面白くない人物と仕事はしたくないです。だから、私は「お金もやりがいも欲しい」っていう人しか、採用しません。」
私は意図を図りかねていた。 「欲張りな方のほうがよい、ということでしょうか?」
「いえ、もう少し現実的な話です。実際、この世にあるのは「やりがいがあって、金がそれなりに貰える仕事」と、「やりがいもなければ、給料も安い」という仕事がほとんどでは無いですか?私は、やりがいもお金も得られる仕事を提供したいだけです。
そうでなければ、会社をうまく経営できません。だいたい良い人が集まりませんよ。」
なるほど、そういう意味か、と思う。「まあ、そうかもしれません」私はお茶を濁した。
「いや、そうでしょう。百歩譲って、やりがいがあるけど給料が安い仕事を社員に提供したとします。でも、こんなことは長続きしません。いつか仕事には飽きがくるし、搾取に気づいた人も次々辞めていきます。そんな業界が長持ちするとは思えません。
良い人材が流入してこない業界は、すぐに衰退しますよ。人は、お金が必要です。人生においてお金で解決できることはたくさんあります。」
私は、もう少し意見を聞いてみたかったので、「やりがいはないけど、給与が高い、という仕事はどうでしょう?」と聞いた。
「やりがいはないが、給料が高い仕事ですか?そんな仕事あるんでしょうか?私は聞いたことがありません。それに、そんな仕事を提供しても会社にとって百害あって一利なしですよ。」
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では、「お金」も「やりがい」も欲しいという人が、仕事において優先すべきは何か。個人的には、恐らくその解答は、「経験」ではないかと思う。
「得難い経験ができるのか」
「自分の今後に活かせる経験が積めそうか」
「今まで経験したことのないことが起きるか」
仕事の技術は、本質的にはそういった「経験」を通じてのみ得られる。
もちろん、完全にムダな経験などない。どんなことからも学びは得られる。だが心も躍らず、漫然と繰り返す毎日から得るものは少ない。
お金とやりがい、両方を獲得したいなら、目の前のくだらないことは捨てて、良い経験をつもう。
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(Photo:Rafael Rijo)