こんな話がある。ある営業部での話だ。
その営業部ではテレアポにより受注を獲得することが一般的だった。電話をかけ、手紙を書き、顧客を開拓する。皆、一生懸命やっていたが、一人だけ成果の上がらない若手がいた。
業を煮やした上司があまり振るわない若手に
「成果が出るように努力してください」と、部下にいうと
「努力したから成果が出るわけじゃないです」と反論された。
部下は続けてこう言った。
「僕は無駄なことはしたくありません。結果の出る効率のよい方法でやりたいんです。」
上司はそれを聞き、その部下に言った。
「教えた通りにやればいい。うちのやり方は知っているだろう。」
部下は言った。
「でも、あのやり方はとても非効率です。」
上司は「つべこべ言うな、やることをやってから主張しろ」と、その部下を叱りつけたが、上司はそのやり方が非効率であることも知っていた。
昔は電話一本で仕事がとれたが、最近は競合が増え、そんなにカンタンに仕事をもらうことはできなくなっている。確かにこの状態は、問題だった。
そこで、その上司はその部下に言った。「効率のよいやり方のアイデアはあるか」と聞くと、彼は「取引が切れてしまった顧客の名簿と、webサイトを改良する許可が欲しい」という。
上司は半信半疑で彼にその権限を与えたところ、彼はその名簿とwebサイトを使い、テレアポを一件も行わずに月間の成績1位を獲得してしまった。
成果が出てよかった…で済めば良いのだが、そうはいかなかった。
怒ったのは周りの営業である。
「なぜ、あいつにだけ特別に情報を与えたのか。」と、上司は詰め寄られた。部下たちは「不公平じゃないですか。あいつだけ楽に仕事できるなんて」という。
そこで上司は「名簿と、webサイトを使ったやり方を、他の営業に伝えるように」と、彼に伝えたが、彼は「私が考えたやり方なのだから、見返りなしには渡せません。」という。
困った上司は、社長に裁定を依頼した。社長は「情報を、一部の社員が独占するのは許可できない」と言い、彼は名簿を独占する権利を失った。
彼にはわずかばかりの賞与が支給されたが、彼は「バカバカしい」と言って、会社を去った。
さて、彼と上司、社長の裁定、誰が間違っていたのだろうか?それとも、誰も間違っておらず、これが日本の会社のあり方なのだろうか。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (最新記事をフォローできます)
・ブログが本になりました。
「仕事ができるやつ」になる最短の道
- 安達 裕哉
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(Photo:Henry Schimke)