8012906401_b93e2beb5e_z精神論、という言葉がある。心の持ちようによって、現状を変えることができるという考え方だ。

一昔前まで、精神論は割と好まれていたようであるが、近年では嫌悪する人も多い。なぜなら、頻繁に悪用されるからだ。

「ダメだと思うからダメなのだ」

「失敗は失敗と思わなければ失敗ではない」

「不屈の精神力が、敵を打ち負かす」

そのような掛け声とともに、人を酷使しようとする輩は後を絶たない。

 

予め断っておくが、これは精神論自体が問題なのではない。精神論を悪用し、人を酷使することが、問題なのである。

概して、すぐに精神論を持ち出す経営者やマネジャーは、ダメなマネジメントを行っている可能性が高い。当たり前だが、精神力は物量に勝てないし、失敗は失敗と認めるところからようやく次に進めるのである。

マネジャーが頻繁にこれを言い出したら、まず考えるべきは「この組織から逃げろ」である。考えることを放棄した組織は、瓦解するのみだ。

 

だが、精神論もうまく使えば有用なシーンはある。

 

以前、「精神論」をうまくつかうマネジャーがいた。

彼はある失敗プロジェクトを引き継いだ。前任者のマネジャーは体を壊し、体調不良で会社を休んでいた。

彼は現状を分析し、今後どうすべきかを立案した。結果的にそのプロジェクトの立て直しが成功したことを鑑みれば、その作戦は正解であり、データに基づく綿密なものであった。

だが、それを実行する段階になり、プロジェクトメンバーはそれを疑っていた。要するに、上が信用できなくなっていたのだ。

プロジェクトメンバーは動こうとしなかった。立て直しの案に頭では納得しているが、それをやろうとはしないのである。

 

そのマネジャーは任せておけ、と言ってメンバーへ「根性論による説得」を試みた。

「この経験は必ず生きる。我々の能力を信じようではないか。」

一人ひとりの感情に訴え、精神力が現状を打開することを熱意を示すことでメンバーを動かそうとした。数名は会社を去ったが、結果、彼の熱意に負けて「やってみよう」というメンバーも多数いた。

彼は現場で信頼され、プロジェクトは成功裏に終了した。

 

 

精神論はムダとは言い切れない。動くか、動かざるべきか、勇気の必要な行動については「最後のひと押し」は、結局精神の働きによる。
起業にせよ、資格取得にせよ、受験にせよ就職活動にせよ、十分な準備と能力的な背景を持っていたとしても成功するかどうかはわからないが故に、未知のものに耐え、我慢しなければ成功しないことも多い。

 

綿密な計画に最後のひと押しを加えるのが、精神論であり、これは自分を信じる力から生まれる。陳腐な言い方だが

「自分を信じろ」

が必要なシーンが、精神論の使いドコロなのである。

 

 

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(Photo:Raul Lieberwirth)