14414603887_6df60b5a60_z「ロジカルシンキング」がビジネスパーソンの中で流行って暫く経つ。その影響もあって、「ロジカルであること」を人に求める方が非常に増えたように思う。

だが、物事には必ず正の部分と負の部分、両方が存在する。

 

一つのエピソードがある。

 

ある会社で「webでのマーケティング」について話題が持ち上がったときのことだ。ある部下が上司である課長に提案した。

「Facebookで、ウチの社員の紹介をひとりひとりやれば、お客さんに親近感を感じてもらえるのではないか、是非、試してみたい」

と熱く語り、資料を配った。よく見ると彼の持ってきた案はなかなか突拍子もないものであった。

だが、課長は答えた。

「Facebookでなければいけない理由、ウチの社員の紹介をしなければならない理由を説明せよ」

部下は言った。

「Facebookでなければならない理由は特にないのですが、ユーザー数が多いのと、親近感は商売に良い影響があると普通に考えました」

というと、課長は「ロジカルではない。エビデンスもない」という理由でその案を却下した。

 

 

部下が部屋を去り、あとには部長と課長、そして私が残った。

部長は課長に「ちょっといいかな」という。

 

部長は課長にゆっくりと話した。

「なぜ、あの提案を却下したのかね?」

「論理が通っていないからです。データも、エビデンスもない。彼のいうことには根拠がありません。」

部長は言った。

「しかし、彼には熱意があっただろう?企画も面白かった。」

「熱意ですか?大事ですが、論理的な裏付けがなければ、お金をかけるわけにはいきません。」

部長はだまっていたが、やがて口を開いた。

 

「いいかね、施策はロジカルに生み出されたものでなければいけない、と言うのは大きな誤りだ。多くの場合、論理はアイデアを生み出さない。飛躍しない。当然の帰結を導くのみなのだよ。無難な、論理的にだれでも導ける回答など、私は欲していない。」

「しかし……」

「どうやらうちにも大企業病がはびこってきているようだな。大事なのは社内を説得することではなかろう。あの案は明らかにインパクトが有る。それがわからない君でもないだろう。」

「……」

「いいかね、人間は感情で動く。だからサービスを考えるときには感情のほうが大事なこともたくさんある。大体において多くの人は考えてサービスを選んでいるわけではない。直感的に「なんとなくダメ」「なんとなく良い」が重要なのだ。

その感覚を大事にしない人間は、「センスが貧しい」と私は思う」

「しかし部長…」

「とはいえ、君の視点は会社には必要だ。彼らには是非チャレンジしてもらいたい。その代わり、うまく行かなかった時の検証と分析はロジカルに行わなければならない。再発を防ぐためだ。それを君にお願いしたい」

「わかりました。申し訳ありません。」

 

 

「究極の論理」である数学ですら、歴史上重要な命題の証明※1には「なんとなく似ている」「これを見たことがある」「もしかしたら」といった直感があった。

また、世界最古の木造建築群である法隆寺、宮大工の棟梁である西岡常一氏は、その著書「木に学べ」※2の中で

「人間はえらいものでっせ。カンでわかるんですな。コンピュータでわからんで、カンピューターならわかるんですからな」

と述べる。

 

 

論理やエビデンスを重視するのも良いが、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」ということなのだろうか。

 

 

 

※1

※2

 

 

【お知らせ】
Google検索にAI Overviewが表示され、ChatGPTやPerplexityで情報収集するユーザーも増えています。検索順位を上げるだけでは、企業の情報が見つけられなくなる時代に、何をすべきか——。Books&Appsの弊社ティネクト代表安達裕哉が「経営oneplusサミット2026 Summer」に登壇します。


<2026年7月30日 開催予定>

AI検索対策最前線:手法から効果測定まで

安達裕哉 登壇|経営oneplusサミット2026 Summer 内セミナー

講演概要
これから重要になるのは、AIに正しく理解され、引用され、推奨されるための情報発信です。SEOからAIOへと変わりつつある考え方から、具体的な対策手法、効果測定の考え方までをコンパクトに解説します。

登壇者
安達裕哉(ティネクト株式会社 代表取締役社長)
Deloitteで12年以上にわたり大企業から中小企業まで業務プロセス改善コンサルティングに従事。近年はAIによるコンテンツ作成を専門とする。著書に『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』『頭のいい人が話す前に考えていること』など。


開催日時:2026年7月30日(木)13:35-13:55
配信形式:オンライン(経営oneplusサミット2026 Summer 内)
参加費:無料
特典:事前申込でアーカイブ動画(2週間)を全員にプレゼント


お申込み・詳細
こちらのイベント詳細ページ をご覧ください。

(2026/6/26更新)

 

 

・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします))

・筆者Twitterアカウントhttps://twitter.com/Books_Apps

・大学・研究の楽しさを伝える、【大学探訪記】をはじめました。

【大学探訪記 Vol.23】恐竜「トリケラトプス」の本当の姿を追求する先生がいた。

【大学探訪記 Vol.22】コスプレの研究をする大学の先生がいた。

【大学探訪記 Vol.21】人間は、なぜ1種しか地球上に存在しないのか?という疑問に迫る。

・仕事の楽しさを伝える、【仕事のチカラ】をはじめました。

【仕事のチカラ Vol.7】月間170万PVのオウンドメディアを1年で作り上げた人はどんな人?

【仕事のチカラ Vol.6】27歳にして3社を渡り歩き、起業した人の話。

【仕事のチカラ Vol.5】データサイエンティストって、どんな人?どうやったらなれるの? という疑問に答えてもらいました。

・ブログが本になりました。

(Photo:Allan Ajifo