9930924333_6edace563c_z仕事のパフォーマンスは「個人の能力」に影響を受けるが、必ずしもそれだけではない。チームの文化、同僚や上司との相性、裁量の範囲など、様々な要因によって大きく変動する。

したがって「どんな職場でも高いパフォーマンスを発揮できる人」は、稀有な存在だ。

 

高い能力を持つ人を雇い入れても、今ひとつパッとしない、ということは、往々にしてあるし、前職のパフォーマンスが良いからといって、現職でパフォーマンスが高いとは限らない。

これは、経験的にはよく知られていることだ。

 

さて、「過去に有能だった人が、新しい環境でパフォーマンスを発揮できていない状態」のときの扱いはかなり難しい。本人には高いプライドがあるし、他の人の期待値も高いからだ。

他者の評価は期待値が高い分、辛口になり、本人はパフォーマンス低下を環境のせいにしてますます意固地になる。

「能力は高いが、職場を乱す人」は、こうして出来上がる。

 

 

さて、このような状況はどのようにして打開すればよいのだろうか。必要なのは本人の意識改革と、職場側の歩み寄りだ。

まず本人の責任としてやるべきことは3つある。

 

1.冷静さを保つ

新しい環境でパフォーマンスをすぐに出さなければ、と焦る気持ちはわかるが、焦って良い結果になることはまずない。感情にとらわれず、まわりの反応をよく見て、できる限りの謙虚さで臨むこと。

例えば、ある会社に副社長として迎えられた会計士出身のCさんは、早く結果を出そうとするあまり、無理なコストダウンを断行したが結果的に多くの社内の人の反発にあった。

Cさんは怒り「コストダウンにとりくまないやつは敵だ」と、社内をますます締め付けた結果、多くの離職者を出すことになってしまった。

 

2.前職でパフォーマンスをあげたやり方に固執しない

新しい環境では、新しいやり方が必要とされる。前の場所でパフォーマンスを上げたやり方に固執すればするほど、周りの人はあなたから離れていく。その場所にはその場所のやり方がある。

コンサル出身のTさんは、製造業におけるコンサルティング実績を買われ、ある会社のライン統括として招かれた。彼は自身の経験から職場の問題点を次々と指摘し、改善するための施策を打ち出したが、残念ながらそれらは全く実行されなかった。

なぜならば、彼の言うことを実行出来るだけの能力を持つ人が、職場に少なかったからだ。Tさんは「この会社はレベルが低い」と嘆いたが、それは反発を招くだけであり、結果的には彼は1年で更迭された。

 

3.アドバイスを貰う

信頼できる誰かにアドバイスを貰うことは重要だ。特に新しい環境では何がマズイのかを知ることが非常に難しい。アドバイスを貰うことは恥でもなんでもない。積極的に様々な人にアドバイスを貰うこと。

銀行出身のYさんは、ある融資先へ招かれ、転職をした。Yさんは張り切って仕事に臨んだが、今ひとつ職場の信頼を勝ち取ることができなかった。

理由がわからず、彼は非常に苦しい経験をしていたが、見かねた上司は彼にアドバイスをした。「君の堅苦しい話し方が問題だ。皆、君になにか言われると叱られているような気分になる。」

彼は全く自覚症状がなかったので非常に驚いたが、話し方を変え、職場に溶け込むことができた。

 

 

一方で、職場側も、知っておくべきことがある。

新しい環境において、人がパフォーマンスを発揮するには、本人の能力と職場の環境が噛みあった時だ。

だが、それを本人と、職場のメンバーの両者が学習するには一定の時間がかかる。新しい人に重要な仕事をいきなり任せてはならない。

また、ある人パフォーマンスを出せるようになるためには、社内の文化を学ぶことが前提だ。そのための時間を与えることは、長期的に見ればメリットのほうが大きい。

「出来る限り早く結果を出せ」

という言葉は、双方にとって不利益だ。

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
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(2025/6/2更新)

 

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